ロボティック・リサーチ(Robotic Research)の自動運転キット「AutoDrive」搭載の商用車ラインナップ。
Business Wire
ソフトバンクグループはじめ数社が、自動運転技術開発を手がけるロボティック・リサーチ(Robotic Research)に2億2800万ドル(約250億円)を出資する。
ロボティックは、グーグルの兄弟会社ウェイモ(Waymo)やゼネラル・モーターズ傘下のクルーズ(Cruise)、アマゾン出資のオーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)など有名どころが手を出してこなかった車載アプリケーションを主戦場とする。
自動運転分野ではここ数年で最大規模の資金調達案件となりそうだ。
同社は2002年、現最高経営責任者(CEO)のアルベルト・ラカーズと現バイスプレジデントのカール・マーフィーが共同設立。商用部門のRR.AI(アールアールドットエーアイ)を通じて、軍事・防衛産業向けの技術をバスやトラック、物流など商用車に展開している。
ラカーズの説明によれば、エヌビディア出資のトゥーシンプル(TuSimple)、ウォルマートやロブロウなど小売り大手と提携するガーティック(Gatik)、中国で大規模な実証実験を進めるプラス(Plus)など、公道走行を想定した自動運転トラックを開発する企業との差別化ポイントは、規制のより厳しくない分野にフォーカスしていることだという。
具体的には、オフロードあるいはダートロード用トラック、シャトルバス、軍用車や農業用車両がそれにあたる。
「規制当局との摩擦を経ずして車載アプリケーションを導入できる余地はまだまだあります。当社がそうした分野に特化して事業を進めているのは、要するにいますぐ参入できる市場だからです」(ラカーズ)
投資家向けのプレゼンに際して、ラカーズはいつも三つのポイントを強調してきた。
第一に、ロボティックがターゲットとする市場はあまり開拓されていないこと。第二に、それらの市場が右肩上がりで成長を続けていること。第三に、技術の普及に躍起になっている他社と違って、ロボティックは過去20年間にわたって黒字を出し続けてきたこと。
米国防総省は同社にとって長いこと最大の顧客であり、すでにロボティックのテクノロジーを搭載した車両を150台納品している。
詳細を明らかにしていないが、2022年にはペンタゴン以外にも顧客層が広がり、納品台数も増える予定だ。
ラカーズは、同じ自動運転技術でもより困難な状況での実現に取り組むことで、顧客や納品台数の増加を実現していくという。
「例えば、当社が展開しているエリアでは、軍用車が埃(ほこり)を巻き上げて走っています。道路に車線が引かれていない場所ではそれが日常で、そのような状況のなかで自動運転を可能にしなくてはなりません。
一方、アリゾナ州のハイウェーにはきちんと車線があるし、GPS(全地球測位システム)も機能するので、自動運転に大した問題はありません。ただし、砂嵐さえ来なければ。
実は、以上の二つのケース(で向き合うべき問題)は大して変わらないのです。だから、当社はより困難な、極端なケースを想定してアプリケーションを設計しています。他社のアプリケーションでは足りないあらゆる状況に対応できる必要があるからです」
ロボティック・リサーチが出資を受けるのは、40億ドル規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)。
直近だと、リオ五輪体操競技4冠のシモーヌ・バイルズが出資するメンタルヘルスサービスのセレブラル(Cerebral)や、AI駆動HRプラットフォームのセンス(Sense)、環境インパクト測定ツールのクラリティ(Clarity)AIなどに出資している。
ロボティックの今回のシリーズA資金調達ラウンドには、ライダー(LiDAR)開発で世界トップを走るルミナー(Luminar)も参画している。
同社は調達する資金を活用し、商用部門RR.AIのスケールアップをはかる計画。
「当社が目指すのは、少なくとも当社が取り組んでいる事業分野で競合する他の企業を駆逐することです。当社は将来競合他社を凌駕(りょうが)する存在になるための、ありとあらゆる情報を収集していると自負しています」
(翻訳・編集:川村力)