2021年5月26日、ワシントンDCにあるレストランの前で行われた「賃金ストライキ」のデモに参加する「One Fair Wage(公正な賃金)」の活動家たち。
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- 左派のシンクタンク、Economic Policy Instituteのレポートによると、2020年におけるアメリカ人の年収の増加率は、上位0.1%の層で最大の伸びを見せた。
- 上位0.1%の層では10%近く増加したのに対し、下位90%の層ではわずか1.7%の増加に止まった。
- これは、労働者の力が若干強くなったにもかかわらず、まだ格差が広がり続けていることを示している。
2020年、アメリカ人の給料が増えた。その増加率が最も大きかったのは、最も裕福な層だった。
左派のシンクタンク、Economic Policy Institute(経済政策研究所:EPI)のローレンス・ミシェル(Lawrence Mishel)とジョリ・カンドラ(Jori Kandra)がアメリカ社会保障局のデータを分析した最新レポートによると、年収が上位1%と上位0.1%の層は、2020年に「史上最も高い賃金水準と賃金全体に占める割合」を記録したという。
アメリカで2020年に支払われた賃金全体のうち、13.8%を上位1%の層が得た一方、下位90%の層が得たのは60.2%だった。これは賃金の伸びが、上位0.1%は9.9%だったのに対し、下位90%は1.7%だったことを反映している。
この傾向は、1979年から続いている。1979年から2020年にかけての年収の増加率は、上位1%が179.3%で、上位0.1%では389.1%に激増している。一方、残りの大多数にあたる90%の層では、28.2%に止まった。
アメリカの富裕層の賃金上昇を追跡したデータによると、2021年に入ってもその成長は堅調であることが示されている。左派の政策研究所(IPS)とアメリカンズ・フォー・タックス・フェアネス(ATF)の調査によると、2020年3月18日から2021年10月15日にかけて、ビリオネアの純資産が2兆1000億ドル(約240兆円)増加したことが分かった。
これらの数値により、最近のアメリカで低賃金労働者の賃金が増加していることや、経済全体で労働者不足が続いている理由を、ある程度説明することができる。
2021年に入ってから、アメリカ人は記録的な勢いで仕事を辞めている。労働統計局が発表した直近のデータによると、10月だけでも420万人が退職しており、これは労働人口の2.8%に相当する。
「最近の退職やストライキの急増は、過去40年間とは対照的に、労働者の力が強くなっていることを示している。しかし、これは魔法のような進歩ではない」と、EPIのレポート執筆者の1人であるミシェルはInsiderへのコメントで述べている。
「いわゆる『労働者不足』は、労働者が雇用主を容易に変えられるようにし、雇用主がストライキ中の労働者の代わりを雇えなくするといった政策によって作られた求人の急増に起因している」
この傾向は、アメリカの低賃金労働者に偏っている。例えば、レジャー・ホスピタリティ分野の労働者は、一貫して全米平均を上回る割合で退職している。また、労働統計局が発表した最新の雇用データによると、レジャー・ホスピタリティ分野の賃金は2021年11月時点で前年同期比12.3%増加しており、平均時給も4.8%増加している。
要するに、アメリカで最低水準の賃金は、数十年の停滞を経て上昇しているものの、所得格差は依然として大きいままとなっているのだ。
「労働者の力が強くなっている今の状態を継続させるための政策には、低い失業率の維持、団体交渉の再構築、最低賃金など労働基準の改善、競業避止義務の撤廃などが考えられる」とミシェルは述べている。
[原文:The top 0.1% got a nearly 10% percent raise in 2020 — that's five times more than the bottom 90%]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)