2021年11月30日、バルバドスの共和国化に伴う大統領就任式に出席した同国出身の歌手のリアーナ(中央)。
Jonathan Brady/Pool via REUTERS
- バルバドス政府は、国民にユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)を支給することを提案した。
- UBIがどの程度の規模になるかは不明だが、バルバドスでは現在「リバース・タックス・クレジット」として年間約644ドルを支給している。
- この2週間でバルバドスは、エリザベス女王を国家元首から外し、リアーナを国の英雄として称え、UBI計画を発表した。
まず最初に、2021年11月29日にイギリス王室との関係を絶った。翌30日には、歌手のリアーナ(Rihanna)を国民の英雄(national hero)として戴冠させた。そして今、バルバドス政府は国民全員にユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)を与えようとしている。
バルバドスにとって、あわただしい2週間だった。
バルバドスの首相特使(投資・金融サービス担当)、アビナッシュ・ペルソー(Avinash Persaud)は、フェイスブック(Facebook)に投稿した記事のコメント欄で、バルバドス政府は国が生み出した収入の一部を成人した国民に定期的に還元するつもりだと述べた。バルバドスではカリブ海やラテンアメリカの多くの国々と同様、新型コロナのパンデミックの影響で国民が経済的に苦しい状況にある。それを救おうと、バルバドス政府が動き始めた。
具体的には、政府が天然資源への投資で得た収益を、住民への配当金として定期的に分配することを提案している。例えばアメリカのアラスカ州では、石油収入を財源とする州所有のアラスカ恒久基金の収益を基に、毎年住民に配当金が支給されている。
ペルソーは、住民への配当金と住民がすでに受け取っている毎年のリバース・タックス・クレジット(給付型税額控除)を組み合わせて、UBIを形成することができると提案した。現在、年間所得が2万5000バルバドスドル(約140万円)以下の勤労者は、年間1300バルバドスドル(約7万3000円)のリバース・タックス・クレジットの対象となっている。
UBIプログラムとは、成人したすべての国民に対して政府が無条件で定期的に一定額を支給するもので、通常の福祉政策とは異なっている。
UBIプログラムは、世界中で急激に人気が高まっている。その理由として、新型コロナのパンデミックが、特に低所得者に経済的負担をもたらしたことが挙げられる。Insiderは、アメリカで30以上の最低限所得保障プログラムが実施されていることを確認したが、そのほとんどがここ1、2年の間に始まったものだった。
最低限所得保障プログラムは、都市や州の一部の住民を対象に試験的に実施されているが、バルバドスが提案しているような本当の意味でのUBIプログラムでは、全国民に給付金が支給される。
「国際機関からは『(支給する)ターゲットを絞るべきだ』とプレッシャーをかけられているが、我々は全国民への支給にこだわっている」とペルソーは書いている。
「だからこそ、我々はすべての国民に対する無料の高等教育を復活させた。これが社会的流動性とその機会を得るために必要不可欠であることが、国際的な研究によって示されているからだ。裕福でない人々は、自分の将来のために、多額の借金やリスク、不安を抱え込むことはできない」
国民を貧困から救うために
世界的スーパースターであるリアーナが、故郷のバルバドスでこれほどまでに愛されているのには、音楽以外にも理由がある。彼女はおそらく、この国で最も注目されている慈善家だ。
2020年3月に新型コロナウイルスが世界を席巻した際、リアーナは自身が設立したクララ・ライオネル財団を通じて、貧しい国々を支援するために500万ドル(約5億7000万円)を提供し、バルバドスには70万ドル(約8000万円)相当の人工呼吸器を送った。リアーナはこれまでに数百万ドルを同国の医療や教育のために寄付している。
バルバドスはこうした取り組みを歓迎している。しかし、パンデミックに加え、気候変動、労働力の減少、根強く残る植民地主義の影響などにより、近年、バルバドスの安定性は損なわれている。
パンデミックの影響は地域全体に及んでいる。2021年12月に発表された世界銀行の調査によると、カリブ海やラテンアメリカの国々では、少なくとも半数の世帯がパンデミック前の所得レベルに達することができず、教育水準や健康水準の低下を引き起こしていることが明らかになった。
世界銀行の最新レポートによると、バルバドスの貧困率は2017年に上昇しており、その後も新型コロナウイルスが観光産業に影響を与えたこともあって、さらに上昇している可能性が高いと専門家は述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)