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いまどきのアメリカの労働者は、自分を評価してくれないと感じる仕事を辞めるのにためらうことをしない。
アメリカ労働省統計局(the Bureau of Labor Statistics)の最新レポートによると、10月の求人件数は1100万件だったが、420万人の人が離職している。退職した人の数が過去20年で最も高かった2021年9月(440万人)からは、わずかに減少しただけだ。
また、ソフトウェア企業のクアルトリクス(Qualtrics)がフルタイムやパートタイムで働くアメリカ人1000人以上を対象に行った調査では、管理職の53%と会社員の44%が2022年に転職活動を予定していると回答しており、2022年も退職者数は似たような数になりそうだ。
この2つの調査から、「大退職(Great Resignation)」は今後も続くと予想される。最高の人材を獲得したいと考える企業にとっては示唆に富む調査結果と言えるだろう。特にクアルトリクスのレポートは、転職活動中の人が新しく就職しようとする会社に求めるポイントを示している。「会社の期待値を明確に伝える」「社員の心と体の健康を重視する」「就業規則をはっきり伝える」の3点だ。
クアルトリクスのチーフ・ピープル・オフィサー(Chief People Officer)であるジュリア・アナス(Julia Anas)に、企業はこうした優先順位の高い項目をどう実現していけばいいかを聞いた。
会社の期待値を明確に伝える
コミュニケーションの第一歩は従業員と候補者の声を聞くことだとアナスは言う。
就職活動中の人は、選考過程でその企業に関する特定の情報を得られるだろうと期待しているが、それが得られない場合、「この会社に就職したらどのような感じになるのだろうか」と疑問を抱いたままになってしまうというのだ。
クアルトリクスでは、選考過程のさまざまな段階において、候補者のこれまでの経歴について質問をし、候補者の回答をもとに選考プロセスを調整しているという。
「例えば、エンジニア系の職種では、入社したら上長となるマネジャーが何を期待しているかを事前にもっと理解したいという候補者からの要望を受けました。求人を出しているチームのマネジャーは従来から候補者と接点を持ってはきましたが、要望を受けて、採用プロセスに2度関わってもらうように変えました」
社員の心と体の健康を重視する
Insiderではこれまで、バーンアウトが「大退職」を加速させていることや、往々にして心の健康に対する支援やリソースの不足によってバーンアウトが起こることを報じてきた。
「新しいプログラムをグローバル規模に展開し、社員に活用してもらうといった可能性がないかどうか考えるべきです。そういう取り組みはとても大事です」とアナスは言う。
ただし、会社は社員と約束をしたことは実現させないといけない。そうでないと社員は、解決策がそもそも約束されていない場合より気分を害してしまうとアナスは続けた。
「約束したが実行せず、会社の行動が見えなければ、社員は会社を信頼も信用もしなくなります。社員にしてみれば、会社に経験の機会を奪われたと感じるでしょう」
就業規則をはっきり示す
就職活動中の人は、入社して初めて組織の規則や習慣が判明するなどという事態は、もはや望んでいないとアナスは言う。そのため、会社も一次面接の段階からその期待に応えるべきだ。ワクチン接種を義務としている場合やその他の行政に関連する規則など、人によって受け止めが異なる内容のものについては特に注意が必要だ。
クアルトリクスでは、透明性を確保する取り組みのひとつとして、社員のクアルトリクスでの経験談を候補者が読めるようにしているという。クアルトリクスに入社した理由や、転職活動中の人にクアルトリクスを勧めたい理由を社員に聞いたインタビュー集があるのだ。
これらのストーリーは「QLife」と呼ばれ、採用されたらどのような会社生活になるのか、可能な限りクリアな情報を候補者に提供できるという価値がある、とアナスは言う。「会社ができることの中で最も大事なのは、一貫して候補者にはっきりした情報を提示することです」
[原文:There are 3 qualities nearly all job seekers want in a potential employer in 2022, survey finds]
(翻訳:カイザー真紀子、編集:大門小百合)