フェイスブック(現Meta)はメタバースがインターネットの未来だと確信している。
- 暗号資産(仮想通貨)の熱狂的ファンとフェイスブック(現Meta)のような巨大テック企業の間で、メタバースの未来をめぐる戦いが起きている。
- ブロックチェーン技術を基盤とするアクシー・インフィニティやザ・サンドボックスなどのメタバースゲームは、2020年頃から人気が高まっている。
- しかし、暗号資産のファンは、巨大テック企業がいずれメタバース空間でも、より中央集権的な支配を始めるのではないかと懸念している。
フェイスブック(Facebook:現Meta)はメタバースに突き進んでいるが、それを快く思っていない人が多い。俳優のキアヌ・リーヴス(Keanu Reeves)もその1人だ。
「フェイスブックがメタバースを発明したという風に考えるのはやめよう」と、2021年12月初めに彼は The Verge に語っている。
「もう勘弁してくれ、という感じだ」
リーブスの見解は、ザ・サンドボックス(The Sandbox)のように独自のメタバースを急速に展開している暗号コミュニティで、広く共有されている。
実際に、暗号コミュニティとフェイスブックやマイクロソフト(Microsoft)といった巨大テック企業との間で戦いが起ころうとしている。暗号ファンは、ルールに縛られない創造やNFT(非代替性トークン)の取り引きができる「分散化」された世界が危機に瀕している、と心配している。
メタバースとはいったい何なのか?
メタバースとは何か、あるいはメタバースが実現するかどうかに関して、一致した意見はない。
現時点で、このあいまいな用語はユーザーのアバターがゲームをしたり、交流や仕事、イベントへの参加、アイテムの創造や販売などをしたりする仮想世界を意味しており、ヘッドセットを身に着けてアクセスすることが多い。
多くの信奉者にとって、メタバースは巨大テック企業によるインターネットの支配から逃れるチャンスであり、だからこそ「分散型」でなければならない。つまり、特定の組織にすべてをコントロールさせることなくネットワークを構築できるブロックチェーン技術を基盤として動くものでなければならないのだ。
ザ・サンドボックスやディセントラランド(Decentraland)などのメタバースでは、すでに暗号技術が使われている。所有権をブロックチェーン上に恒久的に保存できるNFTこそが、彼らが本当に楽しめるゲームを創造する際の中核となっている。
ベンチャーキャピタル、ヒロ・キャピタル(Hiro Capital)のブロックチェーン専門家ジョン・ジョーダン(Jon Jordan)は「オープンであることが必要だと思う」とInsiderに語っている。
「すでに(インターネットで)やっていることを、(メタバースで)行うために仮想現実用のメガネを追加しても、何も変わらない」
ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)のアナリストは最近公開したノートで、暗号技術がメタバースの基盤になるだろうと述べた。というのもそれによってユーザーは、中央にいる組織の許可を得ることなく、安全に資産を所有し、プラットフォーム間を移動できるようになるからだ。
フェイスブックは仮想世界に全力を注いでいる
フェイスブックも、メタ(Meta)とブランド名を変えるほどに、メタバースこそが未来だと信じている。マイクロソフトや他の大手企業もメタバースに参入しており、ロブロックス(Roblox)のようにまだ暗号化されていないメタバースゲームも、すでに巨大化している。
メタのメタバースは黎明期にある。マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOは2021年10月に長いビデオを公開し、ユーザーが独自のコンテンツを作り、販売できるようにすべきといった新たなアイデアを打ち出した。
しかし、1時間に及ぶビデオの中で、彼は暗号通貨について簡単に説明したものの、「分散型」については一度も触れなかった。
非中央集権的な仮想世界を望む多くの信奉者は、メタの強大な資金力によって、ソーシャルメディアが支配されたのと同じように、メタバースも支配されるのではないかと恐れている。Insiderはメタにコメントを求めたが、返答はなかった。
ザ・サンドボックスの共同設立者であるセバスチャン・ボルジェ(Sebastien Borget)は「私が最も恐れているのは、メタやフォートナイト(Fortnite)、ロブロックスといった『Web 2.0』、つまり中央集権型のプレーヤーが、自らをメタバースであると主張し、彼らが完全にコントロールできる閉じた環境を提供しようとしていることだ」と、Insiderに述べている。
暗号ファンは、巨大テック企業によるメタバースがアプリストアのようになり、創造物が厳格にコントロールされることを心配している。
これからの戦いは一進一退になりそうだ。何百万人もの若者が、すでにロブロックスやマインクラフト(Minecraft)といった暗号化されていない仮想世界で1日に何時間も過ごしている。
さらにメタの財政規模は驚異的で、バーチャルリアリティ部門へ多額の投資をしたことで、2021年の収益が100億ドル(約1兆1300億円)減少すると発表しているが、これは本格的に事業を開始する前の話だ。アップル(Apple)やアマゾン(Amazon)のような企業も参入すれことになれば、ゲームオーバーになるかもしれない。
[原文:The fight to control the metaverse: Crypto die-hards prepare for battle with Facebook and Big Tech]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)