新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ロンドンのレストランでは空席も目立つように(2021年12月18日、イギリス)。
REUTERS/Peter Nicholls
- 新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が急拡大するイギリスでは、12月下旬のレストランの予約キャンセルが相次いでいる。
- 予約は3分の1ほど減っていて、イギリス人は自主的に人付き合いを減らしているようだ。
- イギリスはロックダウン(都市封鎖)を実施していないが、保健大臣はさらなる規制強化も辞さない考えを示している。
イギリスでは、12月下旬のレストランやクリスマスパーティの予約キャンセルが相次いでいる。新型コロナウイルスの感染が急速に拡大する中でも、何とか家族と過ごすクリスマスを守ろうとしているようだ。
ガーディアンが引用したUK Hospitalityの推計によると、レストラン、パブ、カフェ、バーの12月の取引は3分の1ほど減っているという。
また、12月の予約はさらに22%減って、業界全体では40億ポンド(約6009億円)あまりの損失になる見込みだという。飲食業界が1年半に及ぶ混乱からの回復を図る中で、大きな被害をもたらしている。
オミクロン株の広がりによって、イギリスでは新型コロナウイルスの感染が急拡大している。1日あたりの新規陽性者数は非常に多い状態が続いていて、12月19日には8万2886人にのぼった。
イギリスでは"可能であれば在宅ワークを"と呼びかけられてはいるものの、ロックダウンは実施されていない。イングランド首席医務官のクリス・ウィッティー(Chris Whitty)教授は16日、12月中は自分たちにとって何が一番重要なのか、社交行事や人間関係に優先順位をつけるべきだと警鐘を鳴らした。
2020年のクリスマスには、感染者数の特に多い地域で政府がクリスマスの集まりを制限した。いわゆる"ティア4"と呼ばれた地域では、クリスマスの日に会えるのは同じ世帯もしくはバブルの中の人間に限られ、多くの人が集まる"家族のクリスマス"は認められなかった。
イギリスのジョンソン首相に対する、クリスマスの直前もしくは直後に規制を強化すべきとのプレッシャーは高まっている。政府の科学者たちは17日、「より厳しい措置」を取らなければ、1日あたりの新規陽性者数は60万~200万人に、1日あたりの死者数は600~6000人にのぼる恐れがあると警告したと、ガーディアンは報じた。
そして、イギリス政府は現在、屋内での集まりの禁止(2週間)、結婚式や葬式の参列者数の制限、レストランやバーの営業を屋外のみに戻すことを検討していると、タイムズ紙は18日に報じた。新たな規制は12月27日から実施される可能性があるという。
イギリスのサジド・ジャヴィド(Sajid Javid)保健大臣は、19日に放送されたテレビ番組でのインタビューで、さらなる規制強化も辞さない考えを繰り返し示した。「データを見て、他の要素も考慮に入れて、さらなる措置が必要かどうか決める」とジャヴィド大臣はBBCに語った。
その上で、「データがきちんと揃うまで待っていたら、手遅れになるかもしれないポイントというものがある… このパンデミックに確かなことなどない。あらゆることを見直し続けなければならない」と付け加えた。
イギリス人が自主的に外での飲食を減らす中、企業側は政府に経済的な支援を呼び掛けている。
パンデミックの当初は、イギリス政府もロックダウンで影響を受けた事業者を助けるために、免税や一時帰休となった従業員の賃金補助、付加価値税(VAT)の据え置きなどを実施した。ただ、こうした支援はイギリスが夏に経済を再開させてから段階的に縮小されている。
イギリスの企業団体、イギリス産業連盟(CBI)のチーフエコノミスト、レイン・ニュートン・スミス(Rain Newton-Smith)氏は「オミクロン株の到来は、立ち直ろうとする多くの事業者が2年連続でクリスマスに再び、ウイルスで揺らいでいることを意味する」とコメントしている。
「さらなる規制が必要になる状況を避けるために、政府は迅速に行動しなければならない」
その上で、在宅ワークの要請が消費意欲を「低下させ」、公的な支援を受けられずにいる事業者に損害を与えているとニュートン・スミス氏は付け加えた。
(翻訳、編集:山口佳美)