なぜメタは「36億ユーザー・利益率40%」の超優良経営でも株式市場の期待を集められないのか?

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REUTERS/Dado Ruvic/Illustration

2021年10月下旬を境に、「メタバース」という言葉が一気に世界的なキーワードになりました。

このトレンドのきっかけは、フェイスブック(Facebook)が社名を「メタ(Meta)」に変更したこと。社名変更と同じタイミングで、同社は今後メタバースに対して100億ドル(約1.1兆円)を超える投資を行うことも明らかにしました(※1)。

図表1

Googleトレンドより。

フェイスブックといえば、言わずと知れた世界最大のユーザー基盤を誇るSNS企業です。日本でもおなじみのFacebookやMessengerはもちろん、InstagramやWhatsAppもメタの傘下です。

そのフェイスブックが、なぜ社名変更をしてまでメタバースに投資をするのか。そして、100億ドルもの資金源をどうやって確保するつもりなのか。今回は前後編の2回にわたり、メタの狙いを会計とファイナンスの視点から考察していくことにします。

利益率はGAFAM中トップ

手始めに、メタという企業をイメージするための代表的な数字をいくつか概観しておきましょう。

メタが運営するFacebook、Messenger、Instagram、WhatsAppをすべて足し合わせたユーザー数は、2021年第3四半期の平均値で月間アクティブユーザー(MAU)が35.8億人、デイリーアクティブユーザー(DAU)でも29億人超えです

メタの競合と言えるツイッター(Twitter)でさえ全世界の利用者数は2.11億人(2021年9月時点)(※2)、メタ全体の10分の1以下にすぎないというのですから、メタのユーザー数は圧巻の一言です。

図表2

(注)過去30日以内にFacebook、Instagram、Messenger、WhatsAppのうち1つ以上を1回以上利用しているユーザーの数。

(出所)FB Earnings Presentation Q3 2021をもとに編集部作成。

時価総額はどうでしょうか。

メタの時価総額は12月6日時点で8842億ドル(約100兆円)、世界の時価総額ランキングでは7位に位置しています。トップ10の中では創業が最も若いことから、いかに同社が急成長を遂げてきたかがよく分かります(図表3)。

図表3

(出所)companismarketcap.comより筆者作成。

メタの売上構成は、実にその98%を広告収入から挙げています(図表4)。ユーザーから直接課金するのではなく、広告主から収益を挙げる広告モデルの典型例ですね。

ユーザー1人あたりの収入のことを「ARPU(アープ、Average Revenue Per User)」と呼びますが、メタの2021年第3四半期におけるARPUは8.18ドルで、うち7.98ドルが広告からもたらされています。

図表4

(注)各四半期の売上高を同期間におけるFacebook、Instagram、Messenger、WhatsAppの月間アクティブユーザー数の平均値で割ったもの。

(出所)FB Earnings Presentation Q3 2021をもとに編集部作成。

ここからメタの売上は簡単に推定できます。例えば、同社の2021年第3四半期におけるMAUは35.8億人、ARPUが8.18ドルですから、全体の売上は単純計算で35.8億×8.18ドル=292億ドルと推定されます。

実際、同期におけるメタの売上高は図表5のように290億ドルと、推定値に近い数字になっています。

図表5

(出所)「FB Earnings Presentation Q3 2021」をもとに編集部作成。

次に利益はどうでしょうか。売上高に加え、営業利益と純利益の推移を示したものが図表6です。ご覧のように利益も順調に増えています。

図表6

(注)参考値として2021年の直近12カ月であるLTM(Last Twelve Months)を記載している。2021LTMは、2020年第4四半期から2021年第3四半期の金額を合計したもの。

(出所)Meta Annual Reportsより筆者作成。

ここで特筆すべきはメタの利益率の高さ。なんと40%近くもあります。

「SNSはみんなどこもそのくらいの利益率なのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

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