シャネルの新CEOは業界に新風を吹き込むか…「私のすべての行動の中核には、包括性の理念がある」

ユニリーバの最高人事責任者(CHRO)を務めていたリーナ・ナイールは、シャネルの新CEOとしてファッション業界に足を踏み入れる。

ユニリーバの最高人事責任者(CHRO)を務めていたリーナ・ナイールは、シャネルの新CEOとしてファッション業界に足を踏み入れる。

Shriya Patil/The The India Today Group via Getty Images

  • シャネルは2021年12月、同社の新しいCEOにリーナ・ナイールが就任すると発表した。
  • ユニリーバで人事部門のトップを務めていたナイールは、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)を支持し、積極的に発言してきたことで知られる。
  • ナイールは自らのリーダーシップのスタイルについて、共感とインクルージョンという2つのキーワードを挙げている。

リトル・ブラックドレス(シンプルな黒のワンピース)をすべての女性の定番ワードローブに押し上げたブランド、シャネル(Chanel)が新たなトップを迎えることになった。

高級ブランドのシャネルは2021年12月14日、ユニリーバの最高人事責任者(CHRO)を務めていたリーナ・ナイール(Leena Nair)が2022年1月に同社のCEOに就任すると発表した。

ナイールは、シャネルの現CEOで共同オーナーでもあるアラン・ヴェルテメール(Alain Wertheimer)から、CEO職を引き継ぐことになる。ナイールは、ファッション業界全体を見ても非常に少ない、有色人種の企業幹部の1人になる。

インド生まれでイギリスの市民権を持つナイールが新たに足を踏み入れるファッション業界は、この2年間、コロナ禍に大いに揺れ、実店舗が休業に追い込まれ、消費者はeコマースに向かうなどの影響を受けた。そんな中でシャネルは、グッチ(Gucci)やプラダ(Prada)、ヴェルサーチェ(Versace)などの競合ブランドとは異なり、看板商品のバッグ類をオンラインで販売しない方針を貫いている。そのためナイールは、CEOとしてよりいっそう難しい舵取りを強いられるだろう。

ナイールはまた、シャネルのブランドビジョンの確立についても大きな課題に直面する可能性がある。長年シャネルのアーティスティック・ディレクターを務めてきたカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は2019年にこの世を去っており、それ以来、このブランドは確固たるビジョンの構築に至っていないと指摘する厳しい声も出ている

それでも、ナイールは大胆なビジョンをシャネルに持ち込むだろう。52歳のナイールは、最近のインタビューでも、世界のリーダーを前にひるむことなく、よりインクルーシブな企業文化の確立が必要だと訴えていた。

ナイールは、2019年に行われたKRISIN(クラウドサービス提供企業)とのインタビューで、「すべての声が重要、というのが私の信念だ」と述べている。

「私のすべての行動の中核には、インクルージョンの理念がある」

新CEOのナイールは、シャネルのビジョンとブランドをさらに大きく成長させる可能性がある。

新CEOのナイールは、シャネルのビジョンとブランドをさらに大きく成長させる可能性がある。

Mike Kemp/In Pictures via Getty Images

ナイールの原動力は、「後に続く人たちへの思い」

世界経済フォーラムのポッドキャストで、ナイールがインタビュアーのリンダ・ラシーナ(Linda Lacina)に明かしたところによると、彼女はこれまでも、多くの役職で「史上初」と呼ばれてきた経験があるという。ナイールにとってそのことは、「名誉であると同時に重荷でもある」という。

ナイールはこのインタビューで、「以前は不可能だったことに取り組める一方で、後に続く人たちが活躍しやすい状況を作らなくてはという重荷がある。また、成功しなければ、という重圧もある」と述べている。

「とにかく絶対に失敗したくないので、自分に与えられたあらゆる職務について、成功しなければという巨大なプレッシャーと責任を感じている」

企業幹部として、いわゆる「ガラスの天井」を打ち破り、自らの役職で成功するだけでは十分ではない。他の人々も、企業内で出世の階段を昇ることができるような環境を作りたいというのがナイールの考えだ。

「私は、自分の後ろに続く人たちのことを考えている。より活躍しやすい環境を作りたい」

ナイール自身が企業の経営幹部に登りつめた過程も、型破りな道のりだった。当初はエンジニアとして働いていたナイールが、出世の階段を昇り始めたのは1992年のこと。2016年には、当時「女性およびアジア系として初めて、なおかつ最年少で」ユニリーバの最高人事責任者(CHRO)に就任した。

ナイールは同社の多様性とインクルージョンに関する取り組みも統括し、自身の任期中に、管理職の男女比率を50対50にするという目標を達成した。それ以前には、イギリス政府の事業・エネルギー・産業戦略を策定する部門で、業務執行権を持たないディレクターを務めていた。

ナイールはそのキャリアを通じて、女性は自分1人だけという環境で働くことが多かった。実際、自身が働いている建物に女性トイレが設置されていないことも幾度となくあったと、ナイールは振り返る。当時は「トイレを借りてもいいですか?」と同僚の男性たちの許可を得てから、男性トイレを使っていたという。

当時、ナイールは「トイレに私の名前をつけるべきだ」と冗談交じりに言っていたと、世界経済フォーラムのポッドキャストで語っている。だが、それ以外の場面では、ナイールは意志が強く真剣だった。それは、自分の立場にかかっているものの大きさを知っていたからだ。

「史上初の役割を引き受ける人は、すべての女性、すべての肌が浅黒い人々、あるいはすべてのアジア系の人々を代表していると思われがちだ。だが、それだけではない」と、ナイールは世界経済フォーラムのポッドキャストで語っている。

「成功が大きく伝えられる一方で、失敗も大きく伝えられる。こうした立場の人が失敗すると、『だから言っただろう、女性をあの役職につけるべきではなかったんだ』と言われる」

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