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「売り上げ95%減」から復活。レジャー予約・アソビューが30億円資金調達で攻勢へ

アソビューCEOの山野智久氏

オフィスで取材に応じるアソビューCEOの山野智久氏。資金調達の累計額は55億円になった。

撮影:横山耕太郎

レジャー予約サイトを運営するアソビューが12月24日、シリーズEラウンドで30億円の資金調達を発表した。これまでの累計の調達額は計55億円になった。

アソビューの収益源だったレジャー業界は、コロナ禍による外出自粛の影響を真正面から受けた。アソビューの2020年4・5月の流通金額(サービスでの取引の総額)は、前年同期比で95%減と、壊滅的な状況に落ち込んだ。

しかし、すぐに来場者数を管理するためのオンライン予約システムや、オンラインチケットなど観光施設向けシステムの開発・販売に方向転換しV字回復。CEOの山野智久氏によると、「2020年8月には、流通総額は前年同期比2.3倍になった」と言う。

アソビューはこの資金調達を経て、今後はどんな成長戦略を描くのか? 山野氏を直撃した。

収益の柱だった予約サイト「アソビュー!」

ウェブサイトの画面

予約サイト「アソビュー!」に掲載されている施設数は8000以上、登録ユーザー数は約500万人いる(2021年10月時点)。

アソビュー!のウェブサイトを編集部キャプチャ

2011年創業のアソビューが運営する、アウトドア予約サイト「アソビュー!」は、全国のアウトドアスポーツの体験予約や、遊園地や水族館などレジャー施設のチケットを予約・購入できるサービスだ。

しかし、コロナによって状況は一変。2020年4月、初めての緊急事態宣言が出されてからは、サイトの利用者は激減した。

「レジャー関連の市場は閉鎖状態。売り上げはほぼゼロになりました」(山野氏)

転機となったのは、ビジネスモデルの転換だった。

営業網を駆使しSaaSを販売

ターゲットを消費者からレジャー施設側に変更。来場者の「密」を避ける解決策となる、電子チケットサービス「ウラカタチケット」や、ネット予約・顧客管理システム「ウラカタ予約」など、自社開発のSaaSの提供に注力した。

多くのレジャー施設が『もしクラスターが発生して名前が表に出たらどうしよう』という風評リスクを恐れていました。

予約システムのSaaSはコロナ前からすでに販売していましたが、時間ごとの入場者を制限するために、日時指定の電子チケットシステムを急いで開発しました」

どん底からの快進撃を支えたのは、全国のレジャー施設への営業網だった。

「『アソビュー!』をすでに使ってもらっているアドバンテージがありました。大手のレジャー施設であれば、オンライン予約システムを自前で作ることもできますが、特に地方ではITを苦手とするレジャー施設も多い。日時指定の電子チケットサービスは、これまでのパイプを使ってすぐに提案できました」

レジャー施設側のニーズに対応したサービス展開が奏功し、顧客数は増加。三重県のナガシマスパーランド、大阪府の遊園地・ひらかたパーク、沖縄の美ら(ちゅら)海水族館など、全国の有名施設に導入が広がった。

日時指定電子チケットなど事業者向けSaaSの契約数は、コロナ直後の2020年4月には約890施設だったのが、直近の2021年11月には約3倍の約2500施設に急増している。

レジャー施設のDXが追い風に

売り上げのグラフ

アソビューの流通総額を見ると、まさにV時回復していることが分かる。

提供:アソビュー

当初はコロナ対策の必要に駆られ、レジャー施設の日時指定電子チケットの導入が進んだ。しかし、これらSaaS導入をきっかけに、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させるレジャー施設も増えている。

オンラインチケットによって、来場者の年齢や性別、居住地のデータが把握できるため、マーケティングに役立てる施設も出てきた。

「例えば電車の中吊り広告を出している場合、来場者の情報から、どの沿線での広告が効果的なのかが分かります。また家族向けのイベントを実施したのに、実はカップルの来場が多かったことが分かれば、データに基づいたイベント企画に役立てられる。業務効率化や、データ利用など、レジャー施設のDX需要はこれからも伸びると思っています」(山野氏)

三井不動産とは業務提携も

東京ドームの写真

資金調達先の一つは、三井不動産が運営する投資事業。三井不動産は東京ドームを子会社化している。

shutterstock

今回発表した資金調達について山野氏は、「念願の資金調達」と笑顔を見せる。

アソビューは、コロナ前までは順調に資金調達を重ねてきた。2017年にはシリーズCラウンドとして約6億5000万円を調達。しかし、2020年前半に予定していた資金調達はコロナで白紙になった。

2020年11月にはファンド運用会社などから、約13億円を調達したものの「事業拡大ではなく、生き残るための運転資金を確保する“レスキューラウンド”の位置付け」だったと山野氏は内情を打ち明ける。

満を持して発表した今回の30億円。資金調達先は以下の2つ。

  • 大手運用会社のフィデリティ・インターナショナル
  • 不動産大手・三井不動産とVC・グローバル・ブレインが共同運営するベンチャー投資事業

調達先について、山野氏はこう説明する。

今後の上場を見据えて、フィデリティからの調達は安定した評価を受けていることの証になると思っています。また三井不動産とは業務提携を結んでおり、イベント企画やR&D(研究開発)の面で協力していく」

三井不動産は2021年10月に東京ドームの全株式を取得し、完全子会社化している(その後、株式の2割を読売新聞グループ本社に譲渡)。

「三井不動産からはレジャーにおけるDXの実績を評価してもらえました。今後は、東京ドームでのイベントや興行にもノウハウを生かしていきたい

AIによる新システム開発目指す

アソビューCEOの山野智久氏

山野氏は「調達した資金で新サービスへの投資を進める」と話す。

撮影:横山耕太郎

また調達した資金の使い道については、「新規プロダクトの開発と人材採用」と話す。

山野氏が注目するのが、AIを使ったダイナミックプライシング機能の開発だ。ホテルなどの予約では、時期によって値段が大きく変動するダイナミックプライシングが浸透しているが、宿泊以外でもこの仕組みに興味をもつレジャー施設は多いという。

「現状のダイナミックプライシングは、『この日はこの予定があるからこのくらいの値段かな』と手動でやっていることのがほとんど。そこをAIを使って蓋然性のあるシステムを作りたいと思っています。

値段を上げた場合と下げた場合で、稼働率や顧客満足がどう変わるのか。そしてそのバランスを、AIが自動で調整できるようなシステムを開発したい」

また顔認証など、レジャー施設への入場時に生体認証を使ったオペレーションなど新領域への投資を進めるという。

エンジニア採用については、「業界で慢性的な人手不足が続いている。ビッグデータを扱える専門家や、フロントエンドエンジニアも採用したい」という。

コロナのピンチをチャンスに

2021年9月に緊急事態宣言が解除されたものの、オミクロン株の流行など、レジャー産業を取り巻く状況は見通せない。だが山野氏は「観光業では固定費を減らす方向に動いており、そのカギになるのがデータ活用とDX。まだ伸びしろがある」と強気だ。

「もともと予約サイトは、時期によるボラティリティ(価格変動)が大きいという課題がありました。それがSaaS事業での収益で、変動リスクを吸収できる企業になりました。コロナというピンチをチャンスに変えて進み続けます

(文・横山耕太郎

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