NTTドコモは2022年3月から電力事業を開始する。
出典:NTTドコモ
NTTドコモが電力事業に参入して「ドコモでんき」の提供をはじめる。
12月23日に報道関係者向けの説明会が開かれ、3月1日の提供開始と、料金などの詳細が明かされた。
NTTドコモでは、実質100%の再生可能エネルギー利用と10%のポイント還元を武器に、開始1年で150万契約を目指し、早期に新電力事業者として1位を目指す考えだ。
プランは2種類、1つはCO2排出実質ゼロプラン
GreenとBasic、2つのプランを用意する。
出典:NTTドコモ
ドコモでんきは、NTTグループ内の小売電気事業者であるNTTアノードエナジーが電力を供給し、それをNTTドコモが取り次ぐ形でユーザーに提供される。
プランは2種類で「ドコモでんき Green」と「ドコモでんき Basic」を用意する。
特徴的なのは「ドコモでんき Green」で、二酸化炭素排出量が「実質ゼロ」という再生エネルギー由来の電力を用いる。
LNG(液化天然ガス)火力などの電源に非化石証書を使用する形なので、あくまで「実質ゼロ」だが、他社でも同様のプランがあり、サービスとしては同じだ。
一方、「ドコモでんき Basic」では通常の電源を利用した電力を供給する。
電気料金は、現在契約している地域電力の従量電灯の料金がそのまま継続するが、Greenのみ、基本料金または最低料金に500円がプラスされる。
dカード GOLDユーザーはポイント最大10%還元
ドコモでんき Basicの料金プラン
出典:NTTドコモ
使用量に応じた料金ははこれまでと変わらず、既存の契約の解約や工事も不要。それでもドコモでんきを選ぶ理由としては「dポイントによる還元」がある。
dポイントは、利用料金100円ごとにポイントが付与される。Basicの場合、ドコモ携帯電話のギガホ、ギガライト契約、または低価格プラン「ahamo」の契約者であれば3%、他社回線を含むほかの利用者は2%の還元。つまりそれぞれ100円で3ポイント、2ポイントの還元となる。
例えば、1カ月約5000円の電気料金を支払うひとり暮らしのahamoユーザーの場合、Basicに切り替えるとdポイントは毎月約150ポイント付与される。
ドコモでんき Greenの料金プラン。
出典:NTTドコモ
Greenでは、同じくギガホ・ギガライト・ahamoユーザーで、加えてNTTドコモの年会費1万1000円のクレジットカード「dカード GOLD」の契約者であれば、10%のdポイントを還元する。
dカード GOLDがない場合は還元は5%になる。それ以外のユーザーへの還元は3%となる。
例えば、4人家族で1カ月約8300円の家庭があった場合、ahamoかつdカード GOLDユーザーなら、Greenへの切り替えで電気料金は500円がプラスされた約8800円となり、dポイント還元は毎月約830ポイント。
500円を余計に支払い、830ポイントが還元されるため、毎月330円、年間だと約4000円相当のポイントが還元されることになる。
後発の参入、環境意識とdポイント還元を強調
KDDIとソフトバンクは既に電力事業をスタートしている。
撮影:小林優多郎
携帯キャリアの電力事業参入としては、KDDI、ソフトバンクに続いて後発となるドコモ。
すでにKDDIの「auでんき」は300万、「ソフトバンクでんき」は200万の契約を突破しており、これをいかに追撃するかが課題だ。
そこでドコモでは、「グリーン」と「dポイント」を強く打ち出す。カーボンニュートラルなど地球環境に対する意識の高まりの中、ドコモとして環境に貢献できる事業として、ドコモでんき Greenを開発した。
先行予約キャンペーンを発表するNTTドコモのビジネスクリエーション部担当部長の小島慶太氏。
出典:NTTドコモ
NTTドコモのビジネスクリエーション部担当部長の小島慶太氏は「環境に優しいだけでなく、お財布にも優しいサービスを出したい」と話す。
auにもソフトバンクにも、二酸化炭素排出量実質ゼロをうたう同様のプランはある(auの「ecoプラン」など)。他社に対するメリットとして、dポイントによる還元を小島氏は強調する。dポイントでの還元が最大10%と高いため、「ポイント還元で(他社サービスに)負けていない」(小島氏)という。
また、1月12日から2月28日の間に予約をしてドコモでんきを契約をすると、もれなく5000ポイントのdポイントをプレゼントするキャンペーンも実施。こうした点を訴求することで、当初1年間で150万契約を目指す。
ドコモでんきに携帯料金とのセット割はないが、dポイントの還元額に差を付けることでドコモ回線利用者にメリットを感じてもらいたい、と小島氏。
さらに、dカード GOLDユーザーであれば、携帯、光回線、電気のいずれも10%還元されることで「わかりやすいプラン」(同)という点もアピールする。セット割に関しては、今後検討を続けるという。
法人向けサービスも検討中
さまざまな領域に拡大し、囲い込みをするドコモ経済圏。
出典:NTTドコモ
ドコモでんきの登場で、同社は携帯、固定、電気というインフラサービスをワンストップで提供できるようになる。加えて、dカード GOLDとの併用を促すことで、金融サービスとも組み合わせる。それによって「スマートライフ領域の1つの大きな軸となる」(ドコモ執行役員・ビジネスクリエーション部長三ケ尻哲也氏)という認識だ。
dポイントを軸に、携帯も固定も電気もクレジットカードもといったように、それぞれのサービス利用者の拡大と各サービスの解約防止にもつなげたい考えで、dポイントの経済圏による新たな囲い込み施策の一環と言える。
まずは、1年で150万契約が目標だが、2023年度にはさらに契約を積み増して1000億円の売上高を目標とする。その後は、売上高を3000億円規模に拡大し、いわゆる一般家庭向けの新電力サービスでは「契約数でナンバー1」(小島氏)を目指していく。
また、当面は一般家庭向けサービスだが、今後は法人向けのサービスも検討する。ただ、ドコモでんきに電力を供給するNTTアノードエナジーは、傘下の法人にも電力サービスを提供する「エネット」があり、こうしたサービスとのすみ分けも検討する必要がある。
三ケ尻氏は、「将来的にはNTT全体でエネルギー事業を盛り上げていきたい」と話し、一般家庭から法人までを幅広くカバーしていきたい考えだ。
(文・小山安博)