新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける女性(2021年12月15日、ロンドン)。
REUTERS/Hannah McKay
- 新型コロナウイルスのオミクロン株の重症化リスクについて、これまでに分かっている初期のデータから判断することはできないと、専門家たちは警鐘を鳴らしている。
- 4つの新たな初期研究で、オミクロン株の感染者が入院に至る確率はデルタ株よりも低いとされている。
- 「(オミクロン株を)風邪として扱う段階にはない」とインペリアル・カレッジ・ロンドンの論文の共同著者アズラ・ガーニ(Azra Ghani)氏はニューヨーク・タイムズに語っている。
4つの新たな初期研究で、オミクロン株の重症化リスクはデルタ株よりも低いだろうと示唆されたものの、科学者たちは慎重な姿勢を崩しておらず、この新しい変異株を"風邪のような感染症"としてまだ片付けるべきではないと警鐘を鳴らしている。
イングランド、スコットランド、デンマーク、南アフリカの研究は、オミクロン株の感染者が入院に至る確率はデルタ株と比べて40~80%低いと見積もった。
これらの初期研究は、人口が比較的若く、ワクチン接種または以前の感染によって免疫を獲得している人の割合が多い地域では、オミクロン株に感染した場合の症状がデルタ株に比べて軽い傾向にあると示唆している。ただ、これらのデータからオミクロン株が本質的にデルタ株よりも危険でないと言うことはできないと専門家たちは指摘していて、オミクロン株の感染力の強さが大きな脅威になるだろうと警鐘を鳴らす専門家もいる。4つの研究は査読を受けておらず、医学誌に掲載はされていない。
「(オミクロン株を)風邪として扱う段階にはない」とインペリアル・カレッジ・ロンドンの論文の共同著者アズラ・ガーニ氏はニューヨーク・タイムズに語っている。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究は、オミクロン株の感染者が入院に至る確率はデルタ株と比べて40~45%低いと見積もっている。
オミクロン株が"比較的軽症"と見なされている大きな理由の1つは、ある程度の免疫を獲得している感染者の症状がデルタ株に比れば軽いように見えるからだと専門家は言う。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究を率いたニール・ファーガソン(Neil Ferguson)氏は、ウイルスがコミュニティーの中を移動するにつれ、月々、そして最終的には年々、全体としては「症状の軽いものになっていくだろう」と話している。
「これは、ウイルスが必ずしも根本的に毒性が弱いということを意味しません。わたしたちが免疫を獲得してきたというだけのことです」とファーガソン氏はウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
スコットランド公衆衛生庁の新型ウイルス感染症COVID-19担当で論文の共同著者でもあるジム・マクメナミン(Jim McMenamin)氏は12月22日の会見で、スコットランドの調査から分かったこと —— オミクロン株の入院リスクはデルタ株の約3分の2 —— は「条件付きの良いニュース」だと話した。
ただ、マクメナミン氏は「先走りしないことが大切だ」とくぎを刺した。例えば、オミクロン株に感染した人がデルタ株に感染した人よりも長期にわたる入院治療を必要とするようなら、今回の結果は「過小評価」になると同氏は語った。
いずれの研究も、いま分かっている感染者しか考慮に入れていない —— 前に感染したことがあったものの症状が出なかったまたは検査を受けたことがない人がオミクロン株に感染して「軽症」なのかもしれない。
ワクチン未接種者は「特にリスクが高い」
デルタ株よりも重症化リスクが低いかどうかにかかわらず、オミクロン株はその感染スピードの速さで、より被害をもたらす可能性もある。
アメリカ、バイデン政権のファウチ首席医療顧問は22日の会見で、重症化リスクが低かったとしても「感染者数が大きく増加すれば、重症化リスクが低くてもその影響はなくなる可能性がある」と話した。
オックスフォード大学の構造生物学教授で、今回の研究には関与していないジェームズ・ネイスミス(James Naismith)氏は、 わたしたちは「科学が発展するにつれ、異なる結果」を期待すべきだとサイエンス・メディア・センターにコメントしている。
ワクチン接種を完了していたとしても、オミクロン株に感染し、重症化するリスクはあるとネイスミス氏は言う。そして、オミクロン株の感染者数が数日ごとに倍増し続けるなら、この新しい変異株はワクチン接種を完了した人々の間でデルタ株よりも多くの人を入院させる可能性があると同氏は付け加えた。
ハーバード公衆衛生大学院の疫学者ウィリアム・ハナゲ(William Hanage)氏は、今回の新たな研究結果は、新型コロナウイルスにまだ感染したことのないワクチン未接種者が「特にリスクが高い」ことを示しているとニューヨーク・タイムズに語った。
「ワクチンを接種しておらず、感染したこともない人にとって、(オミクロン株の)重症化リスクはデルタ株よりもわずかに低い」とハナゲ氏は話した。
「しかし、それは2つのハンマーでなく、1つのハンマーで頭を殴られると言っているようなものだ。そして、そのハンマーは今、あなたを殴る可能性が高い」と同氏は付け加えた。
(翻訳、編集:山口佳美)