コロナのパンデミックをきっかけに、多くの企業が遠隔地の従業員を受け入れるようになっている。
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不動産の基本ルールである「場所」という概念は、かつて就職活動にも同じように当てはまっていた。大がかりな引っ越しがない限り、仕事を探している人は自宅から一定範囲内の求人への応募に限定していたからだ。
しかし、コロナの大流行が在宅勤務のきっかけとなってから2年近く経った今、ますます多くの企業が遠隔地の従業員を受け入れるようになった。実際にリモートワークの求人は増加傾向にあり、しかも、その求人の給与レベルは高いということが、転職サイトLaddersの最新の調査により明らかになった。
この調査によると、リモートワークの求人は、パンデミック以前は給与が年収10万ドル以上(約1000万円以上)の求人全体の4%未満にすぎなかったのが、2020年末には約9%に上昇し、現在では15%以上になっているのだ。Laddersのデータを分析している担当者は、2022年には高収入の仕事の25%がリモートで行うことが可能になると予測する。
つまり、国内だけでなく海外からも次の仕事を探すことができるようになり、求職者にとっては「新しい可能性が開ける」とニューヨーク在住の心理学者でエグゼクティブ・コーチのスンニ・ランパッソ(Sunni Lampasso)は語る。「それはとても素晴らしいことですが、検索範囲を広げてしまうとその選択肢の多さに圧倒されることもあります」
では、何から始めればいいのだろう。どのようによいチャンスを探すのか。自分が採用担当者の目に留まるためにはどうすればよいのか。そして、その職務が自分に合っているかどうか、どうやって見分けるのか。Insiderは、5人のキャリアコーチや専門家に、自分に合ったリモートでの仕事を獲得する方法について話を聞いた。
1. 仕事の機会を広く捉える
新しい将来が有望なリモートワークの機会を見つけるためには、まず、あなた自身を知ることから始めるべきだとランパッソは言う。自分のモチベーションと価値観について深く見つめ、自分はどんな時にエネルギーややりがいを感じるのか考える。そして、表計算ソフトで数字を調べたり、原稿を編集したり、製品をデザインするなど、自分はどんな仕事をする時が楽しいのかを考えてみる。
「自宅で一人で仕事をするのですから、自分が楽しめることかどうかが重要です」と彼女は言う。
特定の地域に縛られないということで、業種や職種の垣根を越えて仕事を探すことができるのは、魅力的なことだと彼女は言う。例えば、製薬会社のPRでキャリアを積んできた人は、そのスキルと経験、そしてモチベーションや価値観が、グローバルヘルス系の非営利団体でのマーケティング職にマッチするかもしれない。
2. 採用担当者の目に留まるよう十分な下調べをする
組織と職種を絞り込んだら、次は採用担当マネジャーを特定する必要がある。ヘッドハンターで『Next Job, Best Job』(未訳:次の仕事、ベストな仕事)の著者であるロブ・バーネット(Rob Barnett)は、これはなかなか容易ではないが、「Six Degrees of Kevin Bacon」(未訳:6次のケビン・ベーコン・ゲーム)(訳注:どんな俳優も共演者6階層以内でケビン・ベーコンとつながるという仮説で、共演俳優の「距離」を測って遊ぶゲーム)のように考えればよいという。ただし、6階層ではなく1階層でつながる人を見つけるのを目的にすべきだとバーネットは言う。
「あなたの調査力を駆使し、人事部やリクルーターではなく、採用担当マネジャーと直接つながるように、できる限りの努力をしましょう」とバーネットは言う。
そして次の課題は、採用担当マネジャーの注意を引くことだ。決まり文句を並べただけの一般的なカバーレターでは意味がない。「会社で何がうまくいっているのか、何が改善できるのかなど、特に自分が応募している職務に関して、他のどの候補者よりもよく調べてきたことを具体的かつ詳細に証明することです」と彼は言う。
3. 早合点して自分を除外しない
多くの企業が募集要項や職務記述書にリモートワークの選択肢を明記しているが、まだ追いついていない企業もある。キャリアコーチであり、『Next Move, Best Move: Transitioning Into a Career You'll Love』(未訳:次の一手、最善の一手——好きな仕事に転職するために)の著者でもあるキンバリー・カミングス(Kimberly Cummings)は、次のように述べる。
「あなたの理想の仕事がナッシュビルにあるからといって、ボストンに住んでいる自分を除外してはいけません」と彼女は言う。「たとえ会社にリモートワーカーに関する正式な方針があったとしても、多くの決定はマネジャーの裁量に委ねられるのです」
カミングスは、会社の本社が地元にある場合と同じように面接を受けることを勧める。会話の中で勤務地の話題が出たら、自分の出張意欲に応じて、採用担当者がリモートワークや部分的なリモートワークを受け入れてくれるかどうか尋ねてみるべきだという。
しかし、それも必要ないかもしれない。「優秀な人材には必ず例外がある」からだ。
4. 専門性を生かす
面接はストーリーテリング。自分の価値を明確に伝えよう。
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家庭生活が円滑になる、趣味や副業の時間が増えるなど、リモートワークを好む個人的な理由はたくさんあるかもしれないが、将来の雇用主がそれを聞く必要はない。「その代わり、リモートワークがあなたの生産性や能力をどのように向上させるかを強調してください」とカミングスは言う。
彼女は面接で「COVID pivot(コロナでの転換)」について話すことを提案している。パンデミックの最中にあなたがいかに創造力を高め、コラボレーション能力を強化し、新しいテクノロジーに適応する能力を身につけたことを説明すべきだと言う。そして、その目的は、自分の価値の提案を明確にすることだ。
「面接はストーリーテリングです。あなたのストーリーは、あなたの成功の実績を示すものでなければなりません」
5. 自分のいる場所と視点を武器とする
シリコンバレーでキャリアコーチと人事コンサルタントを務めるシュエリアン・チー(Xuelian Chi)は、リモート社員として応募することは、恥ずべきことでも、隠すべきことでもないと言う。実際に「あなたの地理的な位置と文化的な背景は、資産になり得ます」と彼女は言う。
あなたの地元の専門知識とネットワークが、会社の優先順位にいかに合致しているかを説明する。例えば、新しい市場に参入する手助けをしたり、その地域特有の販売傾向を把握したり、地域の顧客の嗜好をより深く理解することができるかもしれない。
あなたが、企業が求めている多様性に合致する人材である場合も同様だ。 「新しい視点をもたらすという点で、あなたが組織のために何ができるかを強調してください」
6. 信頼できる社風かどうかを見極める
あなたの目的は、採用担当者に自分を売り込むことだが、あなた自身もその仕事を売り込む必要があることを忘れてはならない。面接の過程で、その組織、役割、チームが自分に合っているかどうかを判断する手がかりに注意を払うべきだという。
『Flux: Eight Superpowers for Thriving in Constant Change』(未訳:絶え間ない変化で成功するための8つのスーパーパワー)の著者であるエイプリル・リネ(April Rinne)は、リモートワークには、雇用者と従業員の間に高いレベルの信頼関係が必要であり、「信頼できる社風があるか」に注目するようにと述べる。
この会社は変化や不確実性にどのように対応しているか、会社が行う試験的なことや改善に関する会話に従業員が加わっているか、などと自問してみるとよい。
「謙虚さを示す兆しを探すこと」と彼女は言う。「すべての答えを持っているわけではないと認めている企業は、信頼に足る企業である可能性が高いのです」
(翻訳、編集:大門小百合)