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ウーバー配達員「おそらく死んでも無視される」。労働組合が訴える4つの問題点

ウーバーイーツの看板。

ユニオン側は、配達員の保護の必要性を訴える。

shutterstock

有名人を起用したテレビCMなど、華やかなマーケティング戦略を続けるウーバーイーツ。2021年12月には、宇宙に飛んだZOZO創業者の前澤友作氏が、ウーバーイーツの配達員に扮(ふん)して、「ヘイ!ウーバーイーツ」と叫び、宇宙飛行士に地球から持ち込んだ食料を手渡すシーンが大きな話題になった。

一方、地上の東京都庁第一本庁舎の38階では同じウーバーイーツの配達員の佐藤さん(仮名)が配送の実態をこう訴えた。

飲食店に到着し、声をかけたらいきなり『うるせぇ! 黙って待っていろ』と一喝され、さらに『お前客じゃないだろ、ウーバーだろ』と言われた。そんな言い方はないだろうと思って(ウーバーイーツの)サポートセンターに連絡したら『上に報告する』と言っていたがが、その後何の連絡もない。たぶん飲食店の暴言にも注意していないだろう。

逆にこちらが何か言うとウーバーから『加盟店に暴言を吐きましたね』と言われてアカウントを停止される。これでは店と配達員は対等な契約当事者ではありません

ウーバー vs. 労働組合

東京都労働員会の様子。

東京都労働委員会での証人尋問。冒頭だけ写真撮影が許可された。

撮影:溝上憲文

これは2021年11月22日に開催された東京都労働委員会の証人尋問の一場面だ。

ウーバーイーツの配達員で構成された労働組合・ウーバーイーツユニオンはこれまで、ウーバーイーツに対して配達員の処遇改善を話し合う団体交渉を求めてきた。

しかしウーバーイーツ側は、「配達員は個人事業主であって自分たちが雇った労働者ではない」という理由で拒否。そこでユニオンは、労働組合と使用者(会社)の紛争解決をお手伝いする東京都労働委員会に、不当労働行為救済申し立てを行った。11月からは両者の証人尋問が始まり、12月27日にも年内最後の証人尋問が行われている。

そして、この一連の証人尋問では、配達員の厳しい労働環境が次々と明らかになっている。

労働組合はウーバー側に何を訴えているのか? それに対してウーバーはどう答えているのか?

ウーバーvs.配達員ユニオンの最前線の議論を紹介する。

訴え1…配達員を保護して。「捨て駒にされている」

ユニオンがまず訴えるのが、冒頭に紹介したように「注文者、飲食店、配達員は対等な関係ではなく、ウーバーは配達員を保護してくれない」というものだ。

前出の配達員・佐藤さんは多くのウーバーの配達員と連絡を取り合っているが、こんな事例を披露した。

「仲間の配達員が飲食店で料理を待っている間に2件の配達リクエストを受けたところ、飲食店の人から『どっちかをキャンセルしろ』と言われた。それはできないと言うと、相手が急に怒り始めて配達員に迫ってきて「殺すぞ」と脅され、身の危険を感じ警察を呼んだケースもあります」

また、2021年10月にウーバーの配達員男性が注文者の女性のポストに食事に誘う手紙を投函したことがSNSで明かされる出来事があった。これに対しウーバー側が女性に謝罪。配達員全員に注文者に不必要な連絡や接触を控えるよう注意を促すメールを送った。消費者への対応としては当然の措置だが、佐藤さんは配達員が受けた類似の被害についてウーバーは何も対応してくれないと言う。

「料理を届けると『LINEのIDを教えてくれ』としつこく言われ、無理矢理、手を握られた女性の配達員もいる。怖くなってサポートセンターに連絡しても『報告しておきます』と言うだけで何も対応してくれない」

その上で佐藤さん、こう訴える。

「セクハラ行為を受けても対応しないし、特定の注文者・飲食店から注文を受けたくないと言ってもウーバーは配慮してくれない。

暴言・暴行を受けても何も保護されないのは、配達員の命を軽く見ているからだと感じる。おそらく死んでも無視されるし、結局私たちは捨て駒にされている

本来はこうした声にもプラットフォーマーは耳を傾けるべきだと思うが、前述したように話し合いの場がない。

訴え2…ケガした時の休業補償

ウーバーイーツの配達員。

ウーバーイーツの配達員の中には、何度も事故に見舞われる配達員もいる(写真はイメージです)。

REUTERS/Issei Kato

2番目が配達員の事故リスクの高さと、ケガをしたときの休業補償だ。

家族を抱える専業配達員の高橋さん(仮名)は2018年にウーバーで働き始めてから毎年のように車からの追突など、事故に遭っている遭遇している。

2018年5月にバイクで走行中にタクシーに追突され、全治1カ月の重傷を負った。ウーバーに連絡したが、ケガの状態と事故の経緯を聞かれただけで何の補償もなかった。

2019年6月には後続の車に追突されて転倒。腕と足の骨折と裂傷を負い全治2ヵ月と診断されたが、右側頭部と内耳に後遺症が残った。これを機に自転車に切り替えたが、翌2020年9月に雨天の配達中に転倒し手と足に裂傷を負い、前歯を折る事故を起こしている。

高橋さんが事故当日にウーバーに連絡したら「今度事故を起こしたらアカウントが永久停止になる可能性がある」と示唆されたという。アカウントの停止は失職を意味する。一時停止されたが幸い3~4日で解除されたという。

アカウント停止の根拠の明示求める

高橋さんは2018年9月以降、朝の10時から夜の9時まで1日11時間、1週間フルで70~80時間働いていた。収入は月に30~40万円。事故で1日でも仕事ができなくなると家族を支える収入が減ってしまうので、事故の補償は重要だ。

事故の補償に関してウーバーイーツは、事業開始3年が経った2019年10月にようやく民間の損害保険会社と提携し、傷害見舞金制度を設けた。

その後、拡充し、医療費用の上限を50万円、1日7500円の見舞金を上限60日支給するなどの補償がある。しかし2カ月以上の休業は補償されない。

ユニオンは見舞金などの金額や期間の改善以外に、「配達中」(on-trip)に限定している補償の対象範囲をアプリをオンラインにしている状態(off-trip)にも拡大すること、事故報告後に行われることがあるアカウント停止になる根拠・条件・期間などを明示することなどを求めている。

訴え3…注文減の根拠示して。「3回拒否で干される」

ウーバーイーツアプリの画面

ユニオン側はペナルティの存在を明らかにするように求めるが…。

shutterstock

そして3つ目の訴えが、アカウント停止や配達員の間で“干される”と呼んでいる一定期間配達を制限するペナルティの存在とその根拠の開示だ。

実は前述した配達員が注文者や飲食店からセクハラなどカスタマーハラスメントを受けても結局、泣き寝入りせざるをえない背景にはアカウント停止などのペナルティが存在するからだという。

前出の佐藤さんは、配達員の現状をこう説明する。

「サポートセンターから(飲食店に)暴言を吐きましたねと言われてアカウントを停止された人もいる。配達リクエストを3回拒否したら干される、あるいはより条件が悪い配達先が入りやすくなるので、リクエストを受けるようにしている

2020年9月に事故を起こした高橋さんも「アカウントが復活しても事故前は10時間で23件の配達リクエストがあったが、事故後に15件程度に減り、10月まで続いた」と証言している。

同様に新宿・池袋エリアで配達しているユニオンの土屋俊明委員長も,

「2019年冬に続けて2件のリクエストを拒否したら1時間程度リクエストが入らなくなった。昼時の忙しい時期なのにおかしいなと感じたが、今でもリクエストを拒んだら干される状態が起きている」

と証言する。

配達員がアプリをオンラインにしているとウーバーから配達リクエストが入り、承諾する場合は30秒以内に画面をタップする必要がある。拒否して干されるのが事実だとすると、収入にも影響するので受けざるをえない。「ウーバーに支配・管理されている」(佐藤さん)感覚は否めないだろう。

ウーバーは否定「応答率は関係ない」

配達員のリュック

REUTERS/Valentyn Ogirenko

しかし証人尋問の場で、ウーバー側はこれを真っ向から否定した。12月6日に証言したウーバーのシステム担当者は次のように語った。

「配達員の応答率良いとか、拒否する確率が高い、低いに関係なくエリア内にいればリクエストが送信される。グローバルなプロダクト設定になっており、どの配達員であってもリクエストが送信され、条件が良い、悪いリクエストというものはなく、配達員が自分で受けるかどうかを決めるだけだ」

また、応答率が悪いと干されるというのは噂なのかという質問に対しては、

「何かと理由をつけたがるのが人間の性質。応答率の低い配達員がリクエストが入ってこないと、プラットフォームの割り当てに対してSNSでネガティブなことを書いたりする。人というのはSNSにネガティブなことを書き込む傾向があり、こうした噂が立ってしまったのではないか

と一蹴した。

両者の証言は食い違うが、しかしこの問題は実際に配達を想定した検証をすればはっきりする話だろう。ウーバーが噂だと言うなら、むしろ配達員の疑念や噂を打ち消すためにも立証する必要があるのではないかと思う。

訴え4…報酬の計算方法示して。「精神的に不安」

ウーバーイーツ配達員の写真。

配達員の報酬はブラックボックス化されている。

REUTERS/Issei Kato

アプリに関してもう1つ、4番目にユニオンが問題視するのは配達の報酬がどうやって決まっているのかという内訳と計算方法の明確化だ。

配達員の報酬は、「基本配送料」と「インセンティブ」で構成される。「基本配送料」は、店舗で配達員が商品を預かった時に発生する(1)「受け取り料金」、利用者に商品を届けたときの(2)「受け渡し料金」、店舗から利用者宅までの(3)「距離料金」の3つの合計金額から、ウーバーの取り分であるサービス手数料を引いたものが報酬になる。

実は2021年5月以降に報酬体系が変更され、事前に予想配達料金が提示されるだけで、実際の報酬金額は事後でしかわからなくなるなどブラックボックス化してしまった。また以前に比べて報酬が下がる人も発生したが、前出の高橋さんもその一人だ。

高橋さんは報酬の変化について、こう訴えた。

「距離料金は(報酬体験の変更前の)2021年5月以前は5.3キロの距離で850円以上あったが、10月には6.2キロの距離でも300円になった。収入も下がり、以前に比べて月収は2~3割減りました。(料金がわからないので)先の見通しが立たず、精神的にも不安です

これに対してウーバー側の証人は報酬体系の変更は認めた上で、次のように述べるにとどめた。

「5月以降は配達の移動距離、飲食店での待ち時間、交通の状況、需要と供給のバランスなど関係要素を反映した料金にしている。計算式、アルゴリズムは非常に複雑なものになっているために現在は開示をしていない。それでも合計の(予想)配達料、飲食店や注文者の住所を表示しているので、事前に承諾するかを決めることは可能だ

ウーバー側が複雑だという理由で計算式(アルゴリズム)を開示できないという説明は妥当だろうか。

配達員にとっては、どれだけ配達すればどれだけ稼げるのかが分からなければ、たとえ配達前に予測の配達料が分かると言っても、月々の収入を予測することは難しくなる。特に高橋さんのようにウーバーで生活を支えているひとにとっては、不安定な働き方を強いられることになる。

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