ロイヤルホスト新社長に聞く“愛される店づくり”の極意「従業員の働きやすさこそ、顧客満足につながる」

50周年を迎えたロイヤルホスト。運営会社ロイヤルフードサービスの新社長に就任した生田直己氏にコロナ禍での新たな取組や「これからの50年」について聞いた。

50周年を迎えたロイヤルホスト。運営会社ロイヤルフードサービスの新社長に就任した生田直己氏にコロナ禍での新たな取組や「これからの50年」について聞いた。

Business Insider Japan

2022年が幕を開けた。2020年から続くコロナ禍で日本経済は大きな打撃を受けているが、とくに飲食業界のダメージは計り知れない。

昨年末の2021年12月28日、あるファミリーレストランが大きな節目を迎えた。ファミレスの先駆けの一つ「ロイヤルホスト」。1号店のオープンから50周年だ。

創業から半世紀。一貫して質の高い料理とサービスを重んじ、地域に愛される店づくりを目指してきた。そんな老舗にとっても、新型コロナ禍は未曾有の試練となった。

それでもロイヤルホストの業績は回復基調の中にあるという。コロナ禍でどんな取り組みを進めたのか。そして「これからの50年」をどう歩んでいくのか。ロイヤルホストを運営するロイヤルフードサービスの新社長に就任した生田直己氏に話を聞いた。

「50年の歴史の中でも初めて…」コロナ禍で問われた地域とのつながり

ロイヤルホスト桜新町店

ロイヤルホスト桜新町店

撮影:吉川慧

ーー50周年の歴史の中で、コロナ禍の直近2年間はどんな年でしたか。

もちろん、パンデミックは初めての経験です。2020年の3月に緊急事態宣言があったときは従業員の健康と安全を守りきれるか不安がありました。

接客業ですから、お客様と触れ合う機会はどうしても多く、感染リスクも高まります。はじめは分からないことが多く、恐怖感のほうが強かったですね。

今後の営業をどうやっていくかと会社全体でも協議して、2020年4〜5月のゴールデンウィークにはテイクアウトだけの営業に切り替える決断をしました。これは半世紀の歴史の中でも、初めてのことでした。

ーー実際、顧客からの反応は。

当初はテイクアウトだけでもお客様にご来店いただけるか、通常営業ができなくなるので従業員が不安に思わないか……と心配しました。

それでも感染対策をしつつ一生懸命にできることをやろうと従業員は前向きに頑張ってくれました。

実際、各店舗では常連のお客様を中心にお越しいただけました。テイクアウトの機会に従業員がお客様とお手紙を介してコミュニケーションをとらせていただいたり、それが後々にお客様からお褒めに預かったりもしました。

お身体が不自由なご家族がいらっしゃるお客様からは「普段はあまりお店に来られないけれど、テイクアウトがあるならぜひ食べたい」というお声もいただけて……。

そこで「お店では食べられないけど、お家でロイヤルホストを食べたい」といったテイクアウトの需要が根強くあることがわかったんです。

ご自宅など、実際の店舗とは別の場所……いわば「もう一つのロイヤルホスト」を楽しんでいただけるようになった。新しい販路が見えてきたなと思っています。

グループ内でも回復顕著なロイヤルホスト。「冷凍ミール」の需要も後押し

新たに展開した冷凍ミール「ロイヤルデリ」

新たに展開した冷凍ミール「ロイヤルデリ」

撮影:小林優多郎

ーーコロナ禍で客層に変化はありましたか。

コロナ禍の当初や緊急事態宣言中は、通りすがりにご来店いただくような「衝動来店」によるドリンク需要は減りましたね。

ビジネス需要の高い都心の店舗でも、リモートワークの影響もあってお客様の数が激減しました。

時短営業もあって、お客様のご来店の機会と同時に従業員の働く機会を確保できなかった。そういったマイナス面の影響はやはり大きかったです。

ただ、ロイヤルホストの店舗は地域の拠点としても重要です。短期的に不採算になったからといって閉店を大きく進める方向性はありません。

幸いなことに現状(2021年11月段階)、コロナ禍が落ち着いていることで商業地域での店舗も回復傾向です。

2021年の途中まで銀座のような都心の店舗でさえ非常に厳しい業績でしたが、緊急事態宣言の解除とともにお客様に戻ってきていただけています。

緊急事態宣言の解除後は、ロイヤルホストで食事をしたいという「目的来店」のお客様が増えたことが大きなポイントです。2021年上半期の来客数は既存店前年比96.6%でしたが、お客様一人あたりの単価は106.5%。売上高も102.9%に回復してきました。

ーー来客数と客単価決算を見るとロイヤルグループ全体としては厳しい状況ですが、ロイヤルホスト事業は回復が顕著で経常利益も上がっていますね。

幸いにして、来客数が減ってもお客様の単価が上がったことで売上を回復できました。利益率が上がったことで結果につながっていると思います。

例えば、ディナータイムの営業時間が短縮することも多かったですが、モーニング、ランチ、ティータイムの来客数は2019年の実績に近づいています。

アイドルタイムだったティータイムの需要の掘り起こしを考え、季節のスイーツなどメニューの充実も功を奏したと思います。

また、アルコールのメニューでも一部店舗では、クラフトビールの提供をはじめました。ビールの種類は減らさずクラフトビールの種類を増やした。それもご好評いただいています。

もう一つはグループ全体で家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ」の展開に力を入れたことです。ほとんどの店舗に冷凍のショーケースを設置し、カレーなどを中心に販売を促進できました。

ただ、これもコロナ禍だから伸びたという面もあるかと思います。パンデミックが収束し、世の中が正常化したとしても、全てがコロナ禍前の「元通り」となるのは難しいと思っています。

コロナ禍以降で培ってきたテイクアウトやロイヤルデリの商品を、お客様に引き続き購入いただけるような模索もしていきたいです。

撮影:小林優多郎

――家庭用フローズンミールではカレーなどがありますね。顧客は自宅で手軽に「ロイヤルの味」を楽しめる。お店にとっても、地域の顧客と新たに繋がるチャンネルになるかもしれない。

お店とテイクアウト・家庭用フローズンミールの「差別化」が大事だと思っています。

最近では飲食チェーンのメニューが冷凍食品としてスーパーでも販売されていますよね。

ただ、実際は冷凍でお店と「同じメニュー」があったとしても、お店と「全く同じ味」ではないわけです。同じメニューなら、やっぱりお店でできたてを食べたほうがおいしいんですよね。

なので、テイクアウトも家庭用フローズンミールも「自宅で食べておいしい」という工夫やアレンジができないかと研究も進めています。

「従業員の働きやすさ」こそ「お客様の満足」につながる

1971年にオープンしたロイヤルホスト1号店(福岡・北九州市黒崎)

1971年にオープンしたロイヤルホスト1号店(福岡・北九州市黒崎)

資料提供:ロイヤルフードサービス

――内装や店舗のかたちだけではなく、従業員の働きやすさ改善もこの50年の歩みの一つでした。

従業員が働きやすくなればなるほど、それだけお客様へのお料理やサービスにより集中できるようになります。

たとえば、飲食店では1日の最後に「レジ締め」という作業がありますよね。営業が終わったら、レジの現金を数えて日報を作り、明日へ引き継ぐ業務です。

ーー「レジ締め」はお金の収支がきちんと合っているかを計算する大事な仕事ですが、1円たりともズレてはいけない。ストレスもありますよね。

従来では周辺業務を含めて30分~40分はかかっていましたが、これがもっと早く終われば従業員もラクですし、仕事の効率も上がって働き方も変わるんじゃないかと。

そこでシステム会社と共同でレジ締めのシステムを開発し、キャッシュレスもイメージした自動キャッシャーをレジに導入しました。

お会計は従業員がレジでご案内しつつ、現金やカードなどはお客様に御自身にキャッシャーに入れていただきます。

ーーなるほど。レジ打ちは店側がするが、支払のお金は店員に渡さず客が自分でキャッシャーに入れる。コロナ禍をきっかけにコンビニでも増えていますね。

はい。ロイヤルホストの場合は割引のクーポンの対応などもあり、レジ打ちではどうしても従業員が必要です。そこは無理には自動化はしまん。

でも、レジでのお支払い自体はお客様にお金を入れていただくことで自動化する。釣り銭を間違えることもないですし、レジ締めは短時間で終わるようになりました。

コロナ禍前から導入していたのですが、非接触が求められる時代にもお客様に安心感をご提供する上でも、従業員の安全の面でも功を奏しました。

撮影:吉川慧

――各店舗が創意工夫をしたり地域の顧客とのつながりをつくれるようになったりといった「現場の強さ」は、どこから生まれてくるのでしょうか。

ロイヤルホストの社風かもしれませんが、従業員は「楽しく、やりがいを持って仕事をしたい」「おいしい料理をつくりたい」「良いサービスを提供したい」という気持ちが強いんですね。

だからこそ経営としては、働く人たちを支えて、無理をさせずに効率的に働ける環境を整えることが大切です。

例えば、ロイヤルホストではファミリーレストランでもいち早く「書き入れ時」とされていた年末年始の休業を決めました。

また、24時間営業の廃止を決め、2017年には最も遅い店舗でも24時(午前0時)閉店になりました。

ただ、この午前0時というのも従業員によっては終電を逃しかねない時間だったんですね。深夜早朝帯は働き手を確保することも難しい。

それなら……と、今ではほぼ全ての店で「23時(午後11時)閉店」になりました。

多くの店舗で営業時間を短縮し、24時間営業を廃止した2017年当時は減収も予想していましたが、結果としては7億円の増収になりました。働き方が変わったことで、料理やサービスの提供に集中できるようになったんですね。

ーー「働き方改革」で従業員をサポートすることが、顧客の満足にもつながっている。

キッチンでも従業員が働きやすい環境の整備も進めています。昨年は店舗キッチン内の各セクションにオーダーが確認できるディスプレイを設置しました。

これによって、誰かがオーダーを大声で読み上げなくても、自分の判断で調理を進められるようになり、オーダーの抜け漏れ防止にもつながりました。

また、飲食店では避けられない洗い物の効率化も図っています。飲食店にとって洗い物はかなり大変。調理やサービスの合間でやるのはなかなか苦しいんですよね。

雑に行えば食器が傷つきますし、透明なグラスなどは特に汚れが目立ち、クレームにもつながります。そこでグラス専用の食洗機の導入なども進めています。

女性管理職の登用も進めており、女性店長の割合も約30%に。2011年には地域ごとにあった運営会社を統一し、人材育成も統一してサービスの質の向上を進めてきました。

少しずつの積み重ねで従業員の働き方は改善できますし、それが結果としてお客様に還元でき、従業員の満足度にもつながると考えています。

次の50年に向けて「守っていくべきもの」と「変えるべきもの」

撮影:小林優多郎

ーー100周年に向けて、次の50年が2022年から始まります。どんな年になりそうですか。

コロナ禍だからといって後ろ向きになるのではなく、だからこそ私たちが何をご提供できるかを問われてくる年になると思っています

ご自宅で楽しんでいただけるテイクアウトや家庭用フローズンミールの発信はもちろん、事前オーダーや事前決済なども含めて「ロイヤルホストができることはなにか」を模索していきたいと思います。

特に今の時代は「いい素材」がなかなか手に入りにくい。だからこそ、自分たちの得意な素材や料理をもとに新しい価値をご提供できないか考えています。

50周年の記念メニュー「洋食小皿」。オムライスや人気の黒×黒ハンバーグ、伝統のオニオングラタンスープなどを一度に味わえる。

50周年の記念メニュー「洋食小皿」。オムライスや人気の黒×黒ハンバーグ、伝統のオニオングラタンスープなどを一度に味わえる。

撮影:小林優多郎

50周年記念の厚切りアンガスサーロインステーキや洋食小皿なども、従来のメニューをもとに、さらにアレンジしたものです。お客様に「こういう食べ方もあるのか」「こういうメニューも楽しいね」と少しでも届けば……と考えています。

より満足感を感じていただき、美味しかったと思っていただけるよう工夫することが一番の仕事ですね。

一緒に働いてくださるパート、アルバイトの方の採用にも、2022年は力を入れたいと思っています。ここで働いてくださった方が正社員として入社し、活躍されている例も多いんです。

ーーロイヤルホールディングスの黒須康宏社長も学生時代からロイヤルホストでアルバイトとして働いていた経歴をお持ちですね。

募集は店舗ごとに実施していますが、営業時間に応募や問い合わせの電話がかかってくると、電話がとれなかったりする問題がありました。

せっかくロイヤルホストで働きたいと応募してくださったのに、その機会を失っていた。これを解消するために、応募の受付業務を外部に委託するようにしました。

店舗の負担は減りますし、応募した方にも安心していただける。応募率や採用率も上がりました。

お店の雰囲気がよくなれば、ここで働きたいと思っていただける機会につながるので、働き方改革とも密接に関わっていると考えています。

――「守っていくべきもの」と「変えるべきもの」があると思いますが、今後ロイヤルホストはどう発展していきますか。

お客様の満足と従業員の満足。この原理・原則を守っていくことが大事だと考えています。来てくださったお客様にロイヤルホストならでは体験や価値を味わっていただき、従業員がそのことにやりがいと喜びを感じられるようにする。

ただ、お客様に来ていただくためには、これから様々なチャレンジができるのかなと思います。

昔のように、待っているだけでお客様が来てくださる時代ではありません。来てくださったお客様に満足していただくことはもちろん、これから来ていただくために何かチャレンジしないといけない。

ロイヤルホストでも2019年の後半からアプリをリリースしました。お誕生月には最大20%の割引クーポンをプレゼントや、お得なクーポンなどをお届けしております。

もちろん割引だけではなく、お店と顧客がつながるシステムを構築していきたいなと思っています。小さいことですが、店舗を改装したり新しい季節のメニューが出るときには店舗の近隣地域にプッシュ配信したり……。

こうした小さな積み重ねでもお店にお越しいただけるきっかけをご用意することが大切です。次の50年も、地域の皆さまに愛されるお店づくりを進めてまいります。

(取材・文:吉川慧、撮影:小林優多郎

<▼前編はこちら▼>


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