Josef Friedhuber:「Silverbach Chimanuka(シルバーバック・チマヌカ)」
Josef Friedhuber/NPOTY 2021
- 「ネイチャー・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」の2021年度受賞作品が発表された。
- 「哺乳類」、「水中」、「風景」などの部門ごとに受賞者が選出されている。
- 総合優勝者は、寒さから逃れるために移動するコザクラバシガンの群れを捉えた。
ユース部門:Levi Fitze「Beautiful World(美しい世界)」。はしゃぐアルプスアイベックス
Levi Fitze:「Beautiful World(美しい世界)」
Levi Fitze/NPOTY 2021
Fitzeのコメント:「若いアルプスアイベックスが高山の草原を夢見心地で散歩している。前景の花と、背景のもやから差し込む太陽の光が、独特の雰囲気を生み出している。自然の美しさと、この若いアイベックスが暖かい夏の間にのびのびと暮らしている様子を捉えることができた」
動物ポートレート部門:William Burrard-Lucas「Black Leopard(黒ヒョウ)」。希少な野生の黒ヒョウ
William Burrard-Lucas:「Black Leopard(黒ヒョウ)」
William Burrard-Lucas/NPOTY 2021
Burrard-Lucasのコメント:「私は子どもの頃から黒ヒョウに魅了されていた。アフリカで撮影することをずっと夢見ていたが、彼らは非常に希少で捉えにくいため、実現できるとは思っていなかった。そして、ケニアのライキピアでメラニズム(黒色素過多症)のヒョウが目撃されたという話を聞き、これは私が待ち望んでいた一生に一度のチャンスかもしれないと思った」
風景部門:Denis Budkov「Dragon's Lair(ドラゴンのねぐら)」。噴火する火山
Denis Budkov:「Dragon's Lair(ドラゴンのねぐら)」
Denis Budkov/NPOTY 2021
Budkovのコメント:「カムチャツカ半島にある自然公園で、最も高く最も活発なクリュチェフスコイ火山の噴火を捉えた。この公園はApakhonchichの地震観測所近くにある。噴火口の上にある雲が熱い溶岩に照らされ、火を噴くドラゴンが山頂に座っているように見える」
フレッド・ヘイゼルホフ賞部門:Lea Lee Inoue「Emotional Range(さまざまな感情)」シリーズ。このシリーズではジリスのさまざまな感情を捉えている
Lea Lee Inoue:「Emotional Range(さまざまな感情)」
Lea Lee Inoue/NPOTY 2021
Inoueのコメント:「数年前、アリゾナ州のスーパースティション山脈の麓に引っ越した時、マルオジリスの家族がいることに気が付いた。彼らも考え、感じ、感情を持っていることを示したいと思い、撮影することにした」
この「Emotional Range」シリーズのすべての写真は、ネイチャー・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤーのウェブサイトで見ることができる。この作品は、オランダの自然写真家フレッド・ヘイゼルホフ(Fred Hazelhoff)の名を冠した賞で優勝した。
デ・ラーヘ・ランデン賞部門:Andius Teijgeler「Fox Crossing the Bridge(橋を渡るキツネ)」
Andius Teijgeler:「Fox Crossing the Bridge(橋を渡るキツネ)」
Andius Teijgeler/NPOTY 2021
Teijgelerのコメント:「春の間、私は何度も夕方からアムステルダム水道砂丘に行き、キツネや子ギツネを探した。頻繁に通ったので、何匹かのキツネの行動が少しずつ分かってきた。このキツネは、春になると定期的にこの橋を渡っている」
植物・菌類部門:Rupert Kogler「Heat of Hoar(樹氷の熱)」。霜に覆われた木々の間から差し込む太陽の光
Rupert Kogler:「Heat of Hoar(樹氷の熱)」
Rupert Kogler/NPOTY 2021
Koglerのコメント:「私の故郷であるオーストリアのリンツに近いところに、一部が美しい森に覆われた丘がある。晩秋のリンツは濃い霧に覆われることが多い。雲の層から太陽の光が差し込むのを見たくて、私はよくこの丘に登った。特に森の中で太陽の光と霧が混ざり合う風景が見たかったのだ。気温が0度以下になると、霧が木の枝に魅惑的なパターンを作り出す」
ネイチャーアート部門:Gheorghe Popa「Ice Cell(氷の細胞)」。凍った湖を空から撮影すると、「氷の細胞」のように見える
Gheorghe Popa:「Ice Cell(氷の細胞)」
Gheorghe Popa/NPOTY 2021
Popaのコメント:「2021年のIce Anatomy(氷の構造)プロジェクトで撮影した一連の写真のうちの1枚が『Ice Cell』だ。このプロジェクトは、冬の間、完全に凍結したルーマニアのクエジュデル湖を、空から撮影したシリーズとなっている。新雪と氷の亀裂によって、神経細胞や細胞に似た形が作り出されている」
水中部門:Georg Nies「Red In Red(赤の中の赤)」。赤いピグミーシーホース
Georg Nies:「Red In Red(赤の中の赤)」
Georg Nies/NPOTY 2021
Niesのコメント:「ピグミーシーホースの撮影は非常に難しい。彼らはとても小さく、2センチを超えることはほとんどない。そして何より、カモフラージュが非常にうまく、住みかであるゴルゴニアン(サンゴの一種)の中で見つけるのは困難だ。そこにいると分かっていても、必ず見つけられるとは限らない。長年の経験と、彼らの居場所を知っている地元のガイドダイバーのおかげで撮影ができている」
人と自然部門:Francisco Javier Murcia Requena「The King of the Ocean(海の王者)」。海を泳ぐメカジキ
Francisco Javier Murcia Requena:「The King of the Ocean(海の王者)」
Francisco Javier Murcia Requena/NPOTY 2021
Requenaコメント:「若いメカジキ(Xiphias gladius)がラビリンスのような『アルマドラバ(定置網の一種)』に入り込んだ姿を捉えた。これはローマ人やフェニキア人の時代から行われている古代の漁法で、現在でもマグロなど大型の遠洋魚を捕らえるために行われている」
白黒写真部門:Roie Galitz「White Wedding(ホワイト・ウェディング)」。求愛するホッキョクグマ
Roie Galitz:「White Wedding(ホワイト・ウェディング)」
Roie Galitz/NPOTY 2021
Galitzのコメント:「風がとても強く、吹雪いていたので、クマをフレームに入れるためにカメラを安定させることがほとんどできなかった。我々はこのホワイトアウトの中、周りに何の目印もなく、何時間もさまよった。白いホッキョクグマは、周囲の白に完璧に溶け込んでいた。私はこの白い世界に包まれながら、ビリー・アイドルの歌『ホワイト・ウェディング』のことを思い浮かべていた」
その他の動物部門:Ruben Perez Novo「Walking Among Fennels(フェンネルの枝を歩く)」。枝の上を歩くイモムシ
Ruben Perez Novo:「Walking Among Fennels(フェンネルの枝を歩く)」
Ruben Perez Novo/NPOTY 2021
Novoコメント:「キアゲハはヨーロッパで最も美しい昼行性の蝶の1種だ。ヨーロッパに生息する他の蝶と比べても、羽が大きい。残念なことに、その美しさのため、この蝶は非常に人気があり、コレクターの人気が高い。写真に写っている幼虫は、緑と黄色に黒のストライプとオレンジのポイントが入り、とても人目を引く。フェンネル(Foeniculum vulgare)を好んで食べ、その枝にいる様子がよく見られる」
哺乳類部門:Josef Friedhuber「Silverbach Chimanuka(シルバーバック・チマヌカ)」。森を駆け抜けるゴリラ
Josef Friedhuber:「Silverbach Chimanuka(シルバーバック・チマヌカ)」
Josef Friedhuber/NPOTY 2021
Friedhuberのコメント:「この写真はコンゴ民主共和国のカフジ・ビエガ国立公園のキヴ湖近くで撮影された。この公園には、ヒガシローランドゴリラの2つのグループが生息している。そのうちの1つのグループにいるシルバーバック(成熟したオスのゴリラ)がチマヌカだ。このグループは約20頭の群れで、メスたちはチマヌカから見えない茂みの中で食事をしていた。突然、チマヌカが私の目の前、5メートル先の茂みから出てきた。彼は胸を叩く印象的な行動を見せ、驚いた私は茂みにひっくり返ってしまった。ブレているのは倒れながら撮ったからだ」
鳥類部門・総合優勝:Terje Kolaas「Winter Migration(冬の大移動)」。寒さから逃れるために移動するコザクラバシガンの群れ
Terje Kolaas:「Winter Migration(冬の大移動)」
Terje Kolaas/NPOTY 2021
Kolaasのコメント:「ガンが餌を食べに来る場所を知っていたので、そこで彼らが来るのを待った。ほとんどの写真はいつもと同じように、遠すぎたり、バランスが悪かったり、あるいは羽や頭が切れていたり、ガンが変な具合に重なっていたりと何か(不完全なところ)があった。だが、この作品にはとても満足している。そして『ネイチャー・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー』の審査員も気に入ってくれたのは、とてもうれしい」
[原文:13 stunning winning photos from the Nature Photographer of the Year Awards]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)