リビアンのビジネス計画とアプローチには期待できると業界専門家は言う。
Rivian
電気自動車(EV)業界が活況を呈している。追い風の要因は、国際的な排出ガス規制、ベンチャーキャピタリストによる巨額の投資、そしてEVシフトを可能にする新技術の登場だ。
既存自動車メーカーからスタートアップ企業まで、数十社がEVシフトにおける次のメジャープレイヤーになろうとしのぎを削っている。しかし、全ての企業がそうなれるわけではない。自動車業界は新興企業にとって厳しい業界だ。一方、既存メーカーは必ずしもEVシフトを推進する手段を揃えてはいない。
つまり、エンジニアやデザイナーをはじめ、この革新的な産業でキャリアを築き、報酬を得ようとする人材は、どこで働くかを真剣に検討しなければならない。
検討すべき要素は多い。既存自動車メーカーが提供する安定性、スタートアップ企業で働くことで期待できる報酬とそれに伴うリスク、企業が持つ技術の可能性、将来の成長に対する投資家の信頼、企業の製品ポートフォリオなどだ。
そこで、順調なキャリアを築くためにはどのEV企業で働くべきなのかを業界アナリストに訊いた。
リビアン(Rivian)
リビアンの魅力のひとつは、アマゾン向けの配送用電動バンを10万台生産することだとアナリストは言う。
Amazon
本社:カリフォルニア州アーバイン
注目ポイント:創業者兼CEO のR. J. スカーリンジ(R.J. Scaringe)が率いるリビアン・オートモーティブは、2019年の創業以来、80億ドル(約9000億円)の資金を調達した。
EV業界では最も新しい企業のひとつであるリビアンは、アマゾンやコックス・オートモーティブ(Cox Automotive)をはじめとする投資家や企業の関心を惹き続けている。2021年秋のIPOで、リビアンの時価総額は770億ドル(約8兆9000億円)に達した。
リビアンは、R1SというピックアップトラックとSUVモデルの販売を2021年秋に開始した。さらに、テスラの競合と見られているリビアンは、アマゾンのラストマイル配送用に10万台のEVバンの生産を始めるなど、ここ数年で発表した野心的な目標を着実に達成しようとしている。
リビアンは今、カリフォルニア、ミシガン、イリノイなど各州で人材採用を進めている。元テスラのエンジニアも採用し、そのうちのひとりニック・カレイジアン(Nick Kalayjian)はリビアンの副社長に登用されている。
選定理由: 「テスラやリビアンといった企業は非常に魅力的です。従来の働き方に囚われていない。リスクに対する報酬がとても大きく、また自分自身が認められる機会も多いです」と、自動車コンサルティング会社ベリルス・ストラテジー・アドバイザーズのマネージングディレクター、マーティン・フレンチ(Martin French)は言う。
ゼネラル・モーターズ(GM)
フェデックスとの提携など、EVシフトに対するGM分散型アプローチは有効だ。
GM
本社:ミシガン州デトロイト
注目ポイント:GMは、EVシフト(自動運転技術を含む)に350億ドル(約4兆円)を投資しており、2025年末までに30のEVモデルを世界でリリースすると発表している。さらに、EVのための充電インフラ充実やバッテリー国内生産も推進している。
GMが2019年にLGエナジーソリューションズ(LG Energy Solutions)と設立した合弁会社アルティウムセルズ(Ultium Cells)は、テネシー州スプリングハイとオハイオ州ローズタウンにおいて、バッテリーの大量生産を開始する計画だ。
GMがEVシフトを成功させるうえで鍵となるのは、公共高速充電ネットワークを提供するEVゴー(EVgo)など、他社との提携だ。また、GMは人材強化を図っている。2021年4月に従業員のフレックスタイム勤務導入を発表し、数千人単位でのエンジニア採用を計画している。
2021年秋には、価格7万9995ドル(約900万円)のピックアップトラック、GMCハマー(GMC Hummer)が発売され、EVに関心の高い顧客の注目を集めた。さらに、シボレーシルバラード(Chevrolet Silverado)とフルサイズ電気ピックアップトラックも間もなくリリースされるとGMが発表している。
選定理由:EVシフトへの分散的アプローチによって、GMは長期的にメジャープレイヤーであり続けるだろう。「GMは職場としても魅力的な企業です。EVシフトを全面的に推進すると宣言した最初の自動車メーカーですから。また、GMには多様で魅力的な車事業があります。それは、彼らがフェデックス(FedEx)やブライトドロップ(BrightDrop)と共にやろうとしていることや、特定のブランドを強化していることからも分かります」とフレンチは述べる。
ルーシッド・モーターズ(Lucid Motors)
ルーシッド ・モーターズは、ニコラやローズタウン・モーターズといった競合が直面した問題を回避した。職場としてもいい選択肢かもしれない。
Lucid
本社:カリフォルニア州ニューアーク
注目ポイント:ここ数カ月、いくつかのEVスタートアップ企業は苦境に立たされたが、ルーシッドは強さを見せている。ニコラ(Nikola)やローズタウン・モーターズ(Lordstown Motors)といった競合になり得る企業が直面したような問題は、ルーシッドでは起きていない。
パンデミックによる2020年末の生産遅延、さらに2021年春にも生産遅延が生じたものの、2021年後半には顧客が待ち望んでいた7万7000ドル(約880万円)のEVセダン、ルーシッド・エア(Lucid Air)の販売をついに開始した。
元テスラのピーター・ローリンソン(Peter Rawlinson)CEO率いるルーシッドは、2021年、特別目的買収会社 (SPAC)チャーチル・キャピタル・コーポレーション IV(Churchill Capital Corp. IV)との合併を通じて上場した。
選定理由: 「(ルーシッド・エア)は、ハイエンド市場において競争力を持つとても良い製品です。ルーシッドの技術力は高く、成長のための計画的なアプローチを実行しています」と調査会社のガイドハウス・インサイツ(Guidehouse Insights)のプリンシパルリサーチアナリスト、サム・アブエルサミド(Sam Abuelsamid)は言い、次のように続けた。
「資金の使い方も賢明です。設備投資を急ぎ過ぎることがありません。市場の性質や規模をよく理解しており、長期的な成長と製品開発を可能にする投資を進めています」
REEオートモーティブ(REE Automotive)
REEの成功の秘訣はそのモデュラー式EVプラットフォームだ。ニッチな市場を獲得できるだろうと専門家は言う。
REE Automotive
本社:イスラエル、テルアビブ
注目ポイント:イスラエルに拠点を置くREEオートモーティブ(REE Automotive)は、フラットなモジュラー式EVプラットフォームのメーカーだ。ダニエル・バレル(Daniel Barel)共同創業者兼CEOが率いるREEは、EVの規模拡大を目指す自動車メーカーの注目を集めている。
REEは、EVメーカーのフィスカー(Fisker)とも提携関係にある国際的な自動車関連サプライヤーであるマグナ・インターナショナル(Magna International)をはじめ、多くのEV関連企業と提携している。
REEは、中距離やラストマイルの輸送車、ロボタクシー、シャトルバスなど、多様な分野に向けたモデュラー式EVをリリースしていきたいとしている。
REEは、SPACの10Xキャピタル・ベンチャー・アクイジション・コーポレーション(10X Capital Venture Acquisition Corp.)との合併により、時価総額36億ドル(約4000億円)の上場企業となった。
選定理由: REEのシステム設計はさまざまな応用がきくとアブエルサミドは言う。「REEのアプローチは必ずしも主流とは言えないかもしれません。しかし、活躍できるニッチな市場を獲得できるでしょう」
クアンタムスケープ(QuantumScape)
クアンタムスケープが持つ技術の事業化を疑問視する投資家もいるが、事業化が成功すればその報酬は大きいとアナリストは言う。
QuantumScape
本社:カリフォルニア州サンノゼ
注目ポイント:EVにとってバッテリーが最も重要な要素だとすれば、自動車メーカーは、バッテリー分野において最も信頼性が高く革新的な企業と協働することで、競合との差別化を図るだろう。
クアンタムスケープは、全固体リチウムメタル電池を開発するスタートアップ企業だ。2020年11月、SPACのケンジントン・キャピタル・アクイジション・コーポレーション(Kensington Capital Acquisition Corp.)との合併を通じて上場した。上場に際しては、自動車メーカーのフォルクスワーゲンとビル・ゲイツ率いるブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)が支援した。
人材面でもクアンタムスケープは最近、元テスラのエンジニアリング部門を率いていた業界専門家のセリーナ・マイコライチャック(Celina Mikolajczak)を獲得した。
投資家の中には、クアンタムスケープが持つ技術の事業化を疑問視する向きもある。しかし、事業化が成功すればその報酬は大きいとアナリストは言う。
選定理由: クアンタムスケープは目標を引き続き高く持つ。パナソニックでの勤務経験もあるマイコライチャックはInsiderの取材に対し、クアンタムスケープの生産を拡大させ、EV分野のトッププレイヤーにすることが自身の目標だと答えた。
[原文:The top 5 electric car companies to bet your career on, according to industry experts]
(翻訳・住本時久、編集・大門小百合)