アメンホテプ1世のミイラ。2006年4月、エジプト考古学博物館にて撮影。
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- 3500年前のアメンホテプ1世のミイラが、初めて「デジタル開封」された。
- その分析によると、彼が35歳頃に亡くなったとき、健康上の問題はなかったようだ。死因は特定されていない。
- このミイラは非常に繊細で豪華な飾りで覆われていたため、科学者たちはそれを乱すことを躊躇していた。
エジプトの科学者たちは、3500年前のミイラを「デジタル開封」し、何世紀にもわたって知られていなかった秘密が明らかになった。
カイロ大学の専門家は、衣服や皮膚の下にあるものまで画像化する3DのCTスキャナーを使用した。
このスキャンによって、アメンホテプ1世の身体を「前例のないほど詳細に」見ることができたと、放射線学教授でこのミイラに関する研究論文の筆頭著者であるサハール・サリーム(Sahar Saleem)は、2021年12月28日のニュースリリースで述べている。
ファラオのミイラのスキャン画像。包帯の下に頭蓋骨と骨格が見える。
S. Saleem and Z. Hawass
アメンホテプ1世は、エジプト第18王朝の2代目のファラオだ。紀元前1525年頃から約21年間統治した。彼のミイラは、1888年にナイル川沿いの遺跡、デイル・エル・バハリ(Deir el-Bahari)で発見されて以来、手つかずのまま放置されていた。
リリースによると、19世紀から20世紀にかけて発見された王族のミイラは、そのほとんどがずっと前に開封されていたという。
しかし、アメンホテプ1世のミイラは、包帯で完璧に包まれ、花冠で飾りつけがなされ、色鮮やかな石をはめ込み繊細に作られたマスクが被せられていたことから、科学者はそれを乱さないことにしたのだ。
1888年に描かれた版画。
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スキャンの結果、アメンホテプ1世は35歳くらいで亡くなったことが分かった。
論文によると、彼の身長は約169センチ、割礼をしており、あごは細く、鼻も小さく細く、髪は巻き毛で、上の歯は軽く突き出ていて、左耳にピアスをしていたという。
彼は父親に驚くほど似ていたに違いない、とサリームは述べている。
アメンホテプ1世の頭蓋骨を、3DのCTスキャナーを用いて、正面と側面から包帯越しにスキャンした画像。
S. Saleem and Z. Hawass
また、包帯の下で、彼は「30個のお守りと、金のビーズがついた珍しい黄金のガードル」を身につけていたという。
背中の3Dスキャンでは、「金と思われる」ビーズのガードルが見えると研究著者は述べている。矢印は、カタツムリの殻の形をしたお守りを指している。
S. Saleem and Z. Hawass
アメンホテプ1世は、亡くなったときに健康上の問題はなく、怪我らしい怪我もなかったと見られている。以下に示すように、彼の歯は良好な状態だった。
アメンホテプの歯並びを見ると、死んだときに良い状態であったことがわかる。
S. Saleem and Z. Hawass
「最初に埋葬された後の墓荒らしによるものと思われる多数の傷や欠損はあるが、死因として納得のいくケガや病痕は見つけられなかった」と、サリームはリリースで述べている。
盗掘の被害は、下の遺骨の写真で見ることができる。長い矢印は、アメンホテプの左手から折られ、腹部に入れられた2本の指を指している。
アメンホテプの胴体下部には、盗掘者による死後の傷が見られる。短い矢印は、左腕を所定の位置に保持するために使用されたはずのピンを指している。
S. Saleem and Z. Hawass
アメンホテプの腕はもともと、胴体の上で交差していた可能性が高い。これは彼のミイラで初めて見られた形式で、後に登場した王たちもそれに倣っていたと、サリームは電子メールでInsiderに語った。
3Dスキャンによって、アメンホテプの脳は、他の多くの王の遺体とは異なり、頭蓋骨の中にそのまま残されていることも分かったという。
アメンホテプの遺骨は、貴重なお守りや宝石を剥ぎ取るためではなく、王を守るための「高貴な」プロジェクトの一環として、何年も後に神官によって修復・再埋葬された可能性があるとサリームは述べている。
アメンホテプ1世がどのように亡くなったのかは、謎のままだ。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)