※この記事は、LinkedInのCEO、ライアン・ロスランスキー氏による寄稿です。
仕事観がこれまでにないほど大きく変化するなか、さまざまな職場で、かつてないほど多くの人が、どこで、どのように、何のために働くかを見直している。
LinkedInのロスランスキーCEOは、大改造時代には社内の流動性を高めて定着率を上げることが重要だと話す。
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この「大改造(Great Reshuffle)の時代」では、新しいタイプのリーダーが必要になる。
これからの10年で成功するリーダーとは、人の話に耳を傾けて周囲を鼓舞し、柔軟性と信頼を基本理念に持ち、企業文化や社員の幸せを優先する人だと私は考えている。
実際、私は求められるリーダー像が変わりつつある様をすでに目の当たりにしている。企業と社員の関係が変われば当然、リーダーのあり方も変わらなければならない。
リーダーに必要なのは「聞く力」
これまでリーダーは、指示を出すことでチームを率いてきた。しかしこれからは、「聞く」ことでチームを率いることが重要になる。
例えば今、多くのリーダーがオフィス復帰の方針について意思決定を迫られている。私たちLinkedInも社員の職場復帰計画を立てるため、まずは社員の意見を把握しようと聞き取りを行った。
しかし個人や部署によって仕事の進め方が異なるため、画一的な方針を決めるのは無理があると悟った。そこで私たちは、個々人や部署にとってベストな場所でベストな働き方をするという、お互いの信頼に根ざしたスタイルを採用することにした。
すべての企業がこうした働き方を採用するのは難しいかもしれないが、リーダーが社員の声に耳を傾け、そこで吸い上げた声を業務計画に生かすことはとても重要だ。そのためには、社員を意思決定のプロセスに直接巻き込み、参加してもらう必要がある。
顧客に対するバリュー・プロポジション(価値提案)を考えるように、今こそ社員に対するバリュー・プロポジション——なぜこの会社で働くべきなのか——を重視すべき時だ。最善の答えを導き出すためには、リーダーは社員とオープンに対話し、共通の価値観とミッションに基づいた関係を築かなければならない。
求職者の期待に応える
世界は絶え間なく変化しており、リーダーはそんな変化に適応しようとしている。しかし、2021年12月にLinkedInの登録者1200人以上を対象に行った調査によると、回答者の3分の1以上(34%)が、自分のリーダーシップスキルが今日のビジネス環境に適していないと感じている。
これは、リモートワークが広がり続けている状況ならなおさらだろう。LinkedInに掲載されているアメリカの求人情報で見ても、パンデミック前の2020年3月時点で「リモートワーク可」とする求人はわずか1%だったが、2021年11月時点では16%にまで増加している。
求職者がリモートワークを希望していることは間違いない。2021年11月の求人応募数のうち、出社勤務に対する応募と比較して在宅勤務が44%を占めており、これは2020年3月の3%から飛躍的に増えている。
また2021年には、求職者が求人をより厳選して応募するようになり、企業に対しても柔軟な働き方や満足のいく報酬、成長の機会を粘り強く交渉するようになった。このように、企業に求められる条件は変化している。リーダーは固定観念にとらわれず、柔軟に対応することが重要だ。
企業文化を戦略的な優先事項に
空前の売り手市場のなか、社員は美化されがちだった「仕事中毒」文化から抜け出そうとしている。
これを受けて、企業は社員の新たな希望に沿った、ワーク・ライフ・バランスがとりやすい働き方の優先させようとしている。メンタルヘルス不調者がカウンセリングを受けられるようにするなど、社員へのサポート体制を充実させ、長年見過ごされてきた社員の健康にもようやく策を講じ始めている。
優れたリーダーなら、企業文化を戦略的な優先事項と捉えるはずだ。
社員の定着が課題となるなか、今後は社内異動が再び注目を集めるだろう。これにスキルベースの採用アプローチを組み合わせることで、特定のスキルを備えた異動希望者を社内で見つけ、研修を施すことによって優秀人材の定着を図ることができる。
大改造時代にはこのように、社内でのキャリア転換を支援し、流動性を高めることで定着率を向上できる企業やリーダーがトップに立つだろう。
また、こうした人材の「大改造」の一環として見過ごせないのが出戻り社員の存在だ。自社の文化を理解したうえで戻ってくることの意味は大きい。
LinkedInのプラットフォームでは、退職した会社に再び戻ってくる「ブーメラン社員」がすべての企業で増加しており、新入社員に占める比率は2019年の3.9%から2021年には4.5%に増加している。
私たちはこの先も学び続け、適応していかなければならないが、こうしたあらゆる変化が仕事にプラスの影響を及ぼすだろう。より多くの人が、自分が望む仕事に就き、仕事を通して求めていたものを手に入れる。そして、社員と信頼関係を築き、思いやりを持って柔軟に対応できる企業こそが大きな成功を収めることになる。
もし、こうした変化があらゆる企業や社会——過去に締め出されてきたコミュニティや、コロナ禍で不平等が拡大したコミュニティも含め——で起こるなら、世界に大きな変化がもたらされるだろう。私たちはこれまで以上に大きく前進し、繁栄していく可能性をきっと見出せるはずだ。
(翻訳・西村敦子、編集・常盤亜由子)