ヤフーのクリエイティブ集団を直撃。「#ようせいです」プロジェクトは広告の何を変えたのか

平野さんと若林さん。

2021年1⽉、都市圏を中心に発令された2度目の緊急事態宣⾔。世間の「コロナ慣れ」が顕著になっていた中、ある広告が話題を集めた。2021年2⽉24日〜28⽇にYahoo! JAPANトップページに掲載されたバナー広告「#ようせいですだ。

コロナ対策への意識啓発を目的として、当時のコロナウイルス累計感染者数の割合と同じ0.3%のユーザーだけにバナー広告を掲出した本企画。仕掛けたのは、ヤフーのクリエイティブ企画チームだ。メディアや広告⼿法が多様化するいま、同チームはどんなミッションのもとどんな活動を⾏っているのか。プロデューサーの若林慧⽒とアートディレクターの平野彩花⽒に話を聞いた。

「0.3%の人だけ」が見た広告

0.3%の人にしか出ない広告

「これは0.3%の人にしかでない広告です」

2021年2⽉24日〜28⽇にYahoo! JAPANに掲載されたバナー広告だ。クリックすると特設サイトに飛ぶ。そこにはこう記されている。

日本の新型コロナウイルスの累計感染者数の割合は0.3%
この広告も0.3%の人が見られるように配信されています
感染予防についてもう一度、考えてみませんか

『グッドデザイン賞2021』受賞や『第61回 ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS』のメディアクリエイティブ部門ファイナリストなど、世間でも高い評価を受けたこの広告。手掛けたのは、ヤフーのマーケティングソリューションズ統括本部内 クリエイティブ企画チームだ。プロデューサーの若林慧氏は、「Yahoo! JAPANにご出稿中の広告主様や広告代理店様が抱える課題を、クリエイティブの力によってあらゆる方面から解決する集団です」と説明する。

「チームの合い言葉は、『ユーザーに好かれクライアントに信頼される世界を実現しよう!』。効果的な広告表現や企画に悩むクライアントの課題解決はもちろん、ユーザーにとっても有益であることにこだわっています。

Yahoo! JAPAN における広告の最適解を目指して、バナーや動画広告、カスタム広告のプランニングから実制作まで、一気通貫で手掛けるのがクリエイティブ企画チームです」(若林氏)

ヤフー クリエイティブ企画チーム プロデューサーの若林慧氏

ヤフー クリエイティブ企画チーム プロデューサーの若林慧(わかばやし・けい)氏。2011年にヤフー入社後、一貫してマーケティング領域に従事。直近2年ではクリエイティブ手法を切り口としたマーケティング課題の解決に注力している。

『#ようせいです』はこうして生まれた

『#ようせいです』は、クリエイティブ企画チームが通常のクライアント業務とは別の取り組みとして行っているクリエイティブプロジェクトの一貫で、広告による社会課題の解決に取り組んだものだ。社内コンペでさまざまなアイデアを募り、デザイナー平野氏のアイデアが採用された。一体、どこから生まれた発想だったのだろうか。

「念頭にあったのは、2017年3月にヤフーが手掛けた防災啓発プロジェクト『ちょうどこの高さ。』の広告です。

津波の恐ろしさを自分事化する見事な仕掛けでした。2度目の緊急事態宣⾔が発令された時期に、もし『ちょうどこの高さ。』のコロナ版をつくったらどうなるかを考えて『#ようせいです』へとつながりました」(平野氏)

ソニービル広告

2017年3月、今はなき銀座ソニービルにて2011年の東日本大震災発生時に岩手県大船渡市で観測された津波の高さ、16.7mがひと目で分かるように掲示された。

提供:Yahoo Japan Corporation

キーワードは「自分事」。平野氏は「人は体感したことに対する記憶が強く残る。どうすれば自分に関係のあることだと思ってもらえるかが重要」と語る。その一つの解が、0.3%のユーザーに掲出するバナー広告だった。これは、日本の総人口に対する当時の新型コロナウイルスの累計感染者数の割合と同じ数字だ。

「『0.3%しか感染しないなら、たいしたことはない』と考える方は一定数いました。しかし、事実として感染された方は存在しているのです。それは0.3%という広告リーチでも同じです。このバナーが出た当人はもちろん、バナーが出た人が周囲にいると知ることでも、新型コロナウイルスをリアルに感じてもらい、正しい情報を知って感染予防に努めて欲しいと考えました」(平野氏)

ヤフー クリエイティブ企画チーム デザイナーの平野彩花氏

ヤフー クリエイティブ企画チーム デザイナーの平野彩花(ひらの・あやか)氏。2012年ヤフー入社。Yahoo! JAPAN アプリをフルリニューアルする際のAndroid版デザインなどを担当。2016年にはヤフー社内のオープンコラボレーションスペース「LODGE」を立ち上げた。クリエイティブ企画チームでは、提灯型の広告として夏祭り会場に掲出する「デジタル提灯」や「Yahoo! JAPAN SDGs」内の企画「2100JAPAN」などのリリースに携わる。

単に「バズればいい」わけではない

「当初は、より強く啓発するような刺激的なデザインも考えました。例えば、コロナウイルスの写真を使ったりとか、ウイルスに侵されるおどろおどろしい画面にしたりなど。

しかし、ショッキングさだけを打ち出すようなユーザー配慮に欠けた表現は、Yahoo! JAPANの広告として適切ではないし、ただバズれば良いというわけでもない。そう考えて、正しい情報を正しく伝えるために、あえてシンプルなデザインを採用しました」(平野氏)

もちろん、シンプルながらも細部への高いクリエイティビティが見てとれる。横書きの日本語は左寄せが一般的だが、敢えての右寄せ。「#ようせいです」のフォントにもこだわることで、違和感を生み出して目が留まるようにした。

特に攻めたのは、『ようせいです』のコピーだ。平野氏はその狙いを、「『ようせいです』は、自粛要請と陽性のダブルミーニング。2つの意味を持たせるために、ひらがなにしました」と語る。

「『ようせいです』は強い言葉。また、コロナウイルスの累計感染者数の割合に合わせて掲出される仕組みなので、この広告が表示された人は もしかしたら不愉快に感じるかもしれない。正直、ネガティブな反応も想定していたのですが、蓋を開けてみるとほとんどが好意的な意見でした。Twitter上では、<広告が表示された、自分も気をつけないと>や<予防についてもう一度考えよう>といった意見もありました」(平野氏)


「変に恐怖を煽るのではなく、正しい情報を知って感染予防に努めて欲しいという我々の気持ちがダイレクトに伝わった結果だと思っています」(若林氏)

平野さんと若林さん。

その真摯な思いは、数字上にも表れた。通常の広告に比べて、3〜4倍のCTR(Click Through Rate:クリック回数を表示回数で割った割合)を実現。また、Yahoo! JAPANの公式Twitterアカウントで本施策の内容を投稿したところ、通常投稿と比較して5倍相当の「いいね」などのリアクションがついた。

「お客様からの要望で多いのは、バナーや動画の制作です。が、我々のチームはイシューの洞察や訴求軸の整理といったプランニング段階から提案可能です。そのショーケースとしての役割も『#ようせいです』にはあります。実際にお客様からの相談内容の幅も広がっています」(若林氏)

ユーザーの心を動かし、広告を好かれモノに

広告のコンサルや制作受託、ひいては広告クリエイティブ研究まで、広告×クリエイティブにまつわる川上から川下まで対応しているクリエイティブ企画チーム。

強みは、Yahoo! JAPANが保有するデータだ。検索データは言うに及ばず、さまざまなサービスが使われる中で蓄積される情報をデータポリシーに基づいて活用することで、ユーザーの心理状態まで考慮した広告を提案できるという。「社内にアナリストがいるので、深い分析ができることも特徴です」と若林氏。

「クリエイティブ企画チームのデザイナーは自らデータを確認し、お客様のイシューを見つけ出して効果的な手法やデザインなどを提案します。また、ヤフーのバナー広告は当社内で受託制作しているものも多く、膨大な知見が蓄積されていることも強みです。効果の出やすい画像やキャッチコピーなどをこれまでの実績から理解しているのです」(平野氏)

平野さんと若林さん。

またウェブ広告は、閲覧者の属性や興味の度合い、購買意欲など詳細なデータを取ることができる反面、クライアントも制作側も、数字を重視してしまう傾向は否めないだろう。若林氏は「だからこそ制作側は、どうやったらユーザーの心を動かせるか。そして広告とその先にある商品やサービス、企業を好きになってもらえるかにこだわり、手法やデザイン表現を考えなくてはいけません」と語る。

「マーケティングとクリエイティブ(制作物)はワンセット。数字だけを見てクリエイティブを作っていたら、我々は代替可能な存在になってしまいます。僕たちは、上流から一緒に課題を解決する存在を目指しています。将来的には、ユーザーの感情データや体調データなども使って、気持ちに寄り添うだけでなく、ユーザーと広告主に相互関係が生まれるようなクリエイティブにも挑戦したい。

ウェブ広告って、邪魔や煩わしいと思われることも多いですよね。そうではなくユーザーから『楽しい』や『見たい』と思ってもらえる広告を提案していきたいですね」(若林氏)


「デザイナーの進路で人気なのは、広告代理店。華やかで認知が大きい広告やキャンペーンを手掛けることに憧れる人も多い。そんな中、ウェブ広告のデザイナーってカッコイイ、とも思ってもらえるような広告を作ることが私の目標の一つです。

これからも新たな施策を進め、『広告を好かれモノに』していく取り組みを続けていきたいです」(平野氏)


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