Surface Duo 2。マイクロソフトの2画面スマホとしては、日本市場には初投入となる。
撮影:西田宗千佳
マイクロソフトの2画面スマートフォン「Surface Duo 2」の実機レビューをお届けする。
Surface Duo 2は2021年秋に発表され、アメリカなどでは発売済み。日本では2022年1月11日から発売になる。ストレージ容量と価格(すべて税込)は以下の通り。
- 128GB版……18万4580円
- 256GB版……19万6680円
- 512GB版(直販サイト限定)……22万880円
サムスンなどから「Galaxy Z Fold3 5G」などの、2つ折り式のディスプレイを使ったスマートフォンが登場しているが、実際には「Surface Duo 2」とは似て非なる部分がある。
Surface Duoシリーズは、海外でのレビュー記事などの評判があまり良くないようだ。だが、今回しっかりと実機をテストしてみると、非常に良い印象を受けた。
どういう点が快適だったか、Galaxy Z Fold3 5Gと比較しながらチェックしていこう。
2つのディスプレイをヒンジで接続
折り畳みスマホとして先行するサムスンの「Galaxy Z Fold3 5G」は、大きな1枚の画面を折り畳んで使うスマホだ。
一方、Surface Duo 2は「折り畳みスマホ」ではない。「2画面」スマホだ。1つの大きな画面として使う場合、折り畳みスマホとは違い、中央に「つなぎ目」がでる。
折り畳みスマホの代表選手と言える、サムスンの「Galaxy Z Fold3 5G」。日本ではNTTドコモとKDDIから販売されており、実売価格は約24万円。
撮影:西田宗千佳
Surface Duo 2はヒンジで2つのディスプレイをつなぐ構造で、本体が薄くつくられている。
撮影:西田宗千佳
その代わり、本体は開いた場合で5.5mm、閉じた場合でも11mmと、かなり薄い。
片方の画面だけを表に出して使うこともできるし、動画を見るために「テント状」に立てて使うこともできる。この辺は、前掲の動画を見ていただくのが近道かとも思う。色々な形で使える汎用性の高さがSurface Duo 2の特徴だ。
折りたたんでも厚みは11mmで、比較的薄く、持ちやすい。中央の光沢がある細いボタンは電源で、指紋センサーを兼ねている。
撮影:西田宗千佳
参考までに、Galaxy Z Fold 3 5Gをたたんだ場合。閉じた場合、最厚部は16mmある。
撮影:西田宗千佳
もちろん欠点もある。
Galaxy Z Fold3 5Gには、閉じたまま使う細長いディスプレイがある。開いて使う正方形に近いディスプレイ(縦横比が22.5:18、解像度は2208×1768ドット)に加え、折りたたみ時には縦横比で24.5:9、解像度は2268×832ドットという、2つのディスプレイを表裏に搭載しているわけだ。
そのため、電話がかかってきたりメールが届いたりしても、本体を開かずサッと使える。
Galaxy Z Fold3 5Gは、折りたたむと細くなり、ポケットなどへの収まりがいい。ディスプレイもあるのでこのまま使うこともできる。
撮影:西田宗千佳
一方、Surface Duo 2は外側にはディスプレイがない。縦横比13:9、1344×1892ドットのディスプレイが2つ、ヒンジでつながった形だ。
だから電話に出る時はまず、画面を開く必要がある。要はフィーチャーフォン時代と同じように「開いて電話に出る」のだ。この点を面倒と思う人はいるだろう。
電話の着信時や充電時には、ヒンジから見えるディスプレイ部分がインジケーターになる。
撮影:西田宗千佳
なお、ヒンジ部には充電状態や電話の着信を知らせる「Glance Bar」という仕組みがある。
これは独立したディスプレイではなく、画面の端がヒンジを通して「ちょっと見える」のを活かしたもの。コストを上げずにうまく工夫したものだな、と感心する。
2アプリ同時利用を想定した「縦横比」、操作性も良好
筆者は日常的にGalaxy Z Fold3 5Gを使っている。画面を広く使えるのは便利だし、折りたためるギミックは所有感をそそるものがあり、満足度は高い。
一方、数カ月使い続けると「ちょっとここは違うんじゃないか」と思う部分も出てきている。
結局、最大の不満は「縦横比」なのだ。
Galaxy Z Fold3 5Gで2つのアプリを同時表示。アプリが縦長になりすぎて使いにくい。
撮影:西田宗千佳
すでに述べたとおり、Galaxy Z Fold3 5Gは閉じたままでも持ちやすいよう、細長い画面を折りたたむような構造になっている。開いて「大きな1画面」として使う分には便利だ。
だが、左右に分割して「2画面」として使うと、どうにも狭い。また、画面上にアプリを同時に出す操作も意外と面倒だったりする。
結果として、Galaxy Z Fold3 5Gは「大きな一画面を持ち運びやすくしたもの」として使うのがベスト、という結論になった。
一方、Surface Duo 2はずいぶん感覚が違う。
1画面の横幅が広がり、それが2つ並んでいる感じなので、それぞれの画面で別々にアプリを使うのがかんたんだ。
Surface Duo 2でそれぞれの画面にアプリを表示。この広さならかなり使いやすい。
撮影:西田宗千佳
2つアプリを表示する操作もシンプル。アプリを起動し、使いたい画面の方に指で移動させるだけだ。アプリを全画面で使う場合には、ちょうど真ん中で指を止めればいい。この操作は少し慣れがいるかもしれない。
どちらにしろ覚えることが増えるため、いままでのスマホに比べると操作は複雑にはなるが、Galaxy Z Fold3 5GとSurface Duo 2を比べると、Duo 2の方が覚えやすく、シンプルで好ましい。
本のように「見開きで電子書籍を読める」
もう1つ、縦横比の違いが効いてくるのが「電子書籍の利用」だ
広い画面は電子書籍、特にコミックを読むのに向いている。だが意外なことに、Galaxy Z Fold3 5Gの場合、本体を縦に持つと電子書籍を「見開きで表示する」のが難しい。
どの電子書籍アプリを使っても、1ページを大きく表示する形になる。見開き表示をするには画面を横にして持つ必要があるが、そうすると、見開きの中央とディスプレイの「折り目」の位置がずれてしまう。
コミック表示サンプルとして、鈴木みそ氏著「銭」(Kindle版)を使用。Galaxy Z Fold3 5Gでコミックを読む場合、縦持ちだと「1ページずつ」になってしまう。見開きで見るには横に持たねばならない(著者の許諾を得て掲載)。
撮影:西田宗千佳
この問題はSurface Duo 2にはない。ディスプレイの「つなぎ目」がちょうど見開きの中央に来る感じになる。非常に本に近いイメージになり、心地よい。
同じく「銭」(Kindle版)をSurface Duo 2で。持った感触も紙の本により近いイメージになる。
撮影:西田宗千佳
ただ、小説などテキストベースの場合、Kindleなどではそもそも「見開きの中央」という概念がないため、若干文字が読みづらくなることがある。
Kindleの文字ものの書籍の場合、中央部分が読みにくくなることも。
撮影:西田宗千佳
コミックの場合、見開きでの大ゴマがあると「中央のつなぎ目で画像が切れる」わけだが、紙のコミックに近いイメージだからか、そこまで気にならなかった。
とはいえ、今の電子書籍では、見開き大ゴマでも絵が切れずにつながっているのが当然になっている。逆に「中央で切れ目がない」メリットは、Surface Duo 2でなくタブレットやGalaxy Z Fold3 5Gで享受できるメリットである。
旧モデルからカメラなどを改善、課題は残るが十分な完成度
Duo 2は良いスマホだという感触の一方、まだ課題もある。
Duo 2になってカメラは大幅に改善したようだ。「iPhone 13 Pro Max」に比べれば劣るし、苦手なシーンはあるようだ。だが、なんとか及第点ではあると思う。
気になったのは画質よりボディーのデザインだ。
カメラ部の出っ張りが大きくなった結果、ディスプレイ双方が表になるように畳んだ場合、カメラ部が邪魔になって完全に閉じられない。
また、畳むときに勢いよくカメラ部が本体に「カツン」とぶつかるので、傷などがつかないか、ちょっと心配にもなる。
ディスプレイが両方表になるようたたむと、カメラの出っ張りが大きくなった結果、完全に閉じることができなくなった。
撮影:西田宗千佳
そして、防水やおサイフケータイに対応していないのも、ライバル機と比較した場合はマイナスだ。日本市場で特に要望の大きな部分だ。
自分がスマホを1台しか持たない前提なら、欠点の少ないGalaxy Z Fold3 5Gの方が良いと思う。
だが、Surface Duo 2にはライバルにない美点が多数ある。特に「実用的な画面の広さ」を活かした生産性の高さは、非常に重要な要素だ。
「どこでも素早く仕事ができる」機器をマイクロソフトは狙っているはず。だとすれば、2アプリ併用の使いやすさを追求するSurface Duo 2の方向性は、間違いではないように思う。