マーケターにとって、インフルエンサーは重要な存在だ。
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2021年12月、インフルエンサーマーケティング会社であるマーベリック(Mavrck)は、40億ドル(約4600億円)以上とも言われるアメリカのインフルエンサーマーケティング業界でより多くのシェアを獲得するために、投資会社のサミット・パートナーズ(Summit Partners)から1億2000万ドル(約140億円)を調達した。
同社はこの資金で会社を成長させたいと考えている。そして、消費者をターゲットにしたインフルエンサーキャンペーンを展開したいマーケターのために、データツールを構築する予定だ。マーケターがさまざまなプラットフォームを使いインフルエンサーを探すのが一般的になるなか、マーべリックにとって、データサイエンティストやエンジニアの採用を増やすことが急務だ。
インフルエンサーマーケティング会社、マーベリックのライル・スティーブンス共同創業者兼CEO。
Liam Noonan
資金調達が行われた今回のタイミングは、クリエイターエコノミーにとっては重要な時期だ。いまや何千万人もの人々が、自分自身はコンテンツクリエイターだと考えているし、インフルエンサーのスタートアップは数十億ドルを調達しているのだ。
しかも、SnapやFacebook(現在はメタのSNSプラットフォーム)といったSNSの老舗は、AR(拡張現実)とメタバースに軸足を移しつつある。また、バイトダンス(ByteDance)が所有するTikTokは、Instagramに代わって若いユーザーの間で人気のアプリとなっている。
Insiderは、マーベリックのライル・スティーブンス(Lyle Stevens)CEOに、今後数年間でクリエイターエコノミーはどのようなトレンドをたどり、どれが衰退していくと考えているのかを聞いた。彼が語った4つの重要なポイントを紹介する。
1. TikTokは今後5年、インフルエンサーマーケティング業界を独占する
2021年は、TikTokにとって飛躍の年となったことは間違いない。
TikTokの全世界の月間アクティブユーザー数は10億人を超え、Instagram、Snapchat、YouTubeが似たようなサービスをリリースしようとしても、TikTokの人気を抑えることはほとんどできなかった。マーベリックによれば、TikTokアプリのアクティベーション数は2020年から2021年にかけて390%増加したという。
「今、お金の流れは、InstagramからTikTokへと劇的にシフトしています」とスティーブンスは言う。「我々の知る限り、TikTokのフィードは現在、Instagramよりも優れたアルゴリズムで抽出されています。そして、TikTokへのお金の流れは加速する一方です」
スティーブンスは、TikTokは勢いがあるとはいえ、もしARやまだはっきり確立されていないメタバースが成功すれば、他のプラットフォームに取って代わられる可能性はあると言う。
「今後5年間はTikTokの独壇場になるでしょう。しかし今から5年後には、振り子がメタ(旧フェイスブック)に戻る可能性があります」
2. インフルエンサーキャンペーンはよりデータ主導型に
インフルエンサーマーケティングの黎明期は、SNSの投稿から店頭での販売に至るまでを追跡するのは難しかった。しかし、電子商取引が急増し、販売アトリビューション技術(売り上げに貢献したルートやマーケティングキャンペーンの貢献度を測定する技術)が発達するにつれ、今ではインフルエンサーがどのように販売につなげたかをマーケターが把握できる能力はかなり高まった。
「アフィリエイトマーケティングとインフルエンサーマーケティングの境界線が曖昧になりつつあります」とスティーブンスは言う。「消費者行動の変化とともに、より多くの成果を狙うマーケターがこの分野に参入してきています。その結果インフルエンサーマーケティングには、昔からあるブランド構築やブランド認知のアプローチと比べ、計測可能なデータ主導型のアプローチが取り入れられています」
3. ライブオーディオアプリの需要は長く続かないかもしれない
2021年は、Clubhouseが中心となり、Twitter、Facebook、LinkedInなどのプラットフォームが似たようなアプリのテストを開始するなど、ライブオーディオアプリが賑わった年だった。
しかし、これらのオーディオアプリは今後数年で消えてしまう可能性がある。例えば、データ分析会社アプトピア(Apptopia)のデータによると、Clubhouseは2021年後半にユーザー数が急減し、一部のクリエイターはアプリで収益を上げるのに苦労しているという。
スティーブンスは、インフルエンサーマーケターの立場から見ると、ライブ音声のみで活動しているクリエイターは過大評価されていると指摘する。
「そこにリターンや価値を見出すのは難しいです」とスティーブンス氏は言う。「私たちは皆、ロックダウンで家に閉じこもって仕事をしていたため、新しいコミュニケーションの手法を心から望んでいたのです。しかし実際には、ただの電話会議と変わらない旧式のコミュニケーション手段だったというわけです」
4. 従来型の仕事を辞め、クリエイターになる人が増える
アメリカでは2021年、さまざまな業界のプロフェッショナルが離職し、いわゆる「大退職(Great Resignation)」と呼ばれる現象が起きた。その中にはSubstack、OnlyFans、Patreonなどのプラットフォームを通じてコンテンツクリエイターとしてお金を稼ぐことを選んだ人もいる。
スティーブンス氏は、数字が「野心的」であることは認めつつも、コンテンツクリエイターを自称する人の数は、今後5年間で10億人に急増すると考えているという。
「多くの人々は、従来型の知的労働者として働くのではなく、コンテンツクリエイターになることを選択しています。いまブログやTikTokやYouTube上でコンテンツを生み出しているのは、こういう人たちなのです」
(翻訳、編集・大門小百合)