2021年10月、ロシアのソチで開催されたイベントに出席するプーチン大統領。
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- ロシアは、ウクライナとジョージアのNATO(北大西洋条約機構)への加盟を絶対に認めないよう求め続けている。
- NATOもアメリカも、それは"話にならない"と明言している。
- ウクライナ危機について話し合うため、外交官らは今週、ヨーロッパに集まっている。
ウクライナ危機について話し合うため、外交官らがヨーロッパに集まる中、ロシアはウクライナを侵攻すると脅しながら、アメリカやNATOが絶対に合意できない要求をし続けている。
ロシアはウクライナとジョージアのNATOへの加盟を絶対に認めないよう繰り返し求めているが、アメリカやその同盟国は"話にならない"とこれを退けている。
ウクライナ侵攻を回避しようと、1月10日(現地時間)にスイスのジュネーブで開催されたアメリカとロシアによる「戦略安保対話」の後、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、ロシア政府はウクライナやジョージアがNATO加盟国になることはないという「鉄壁の、法的拘束力のある保証」が欲しいと語ったと、NPRが報じた。
「詰めの甘い議論、生半可な約束や閉ざされたドアの向こう側での交渉で起きたことのあいまいな解釈にうんざりしている。わたしたちはあちら側を信用していない」とリャブコフ外務次官は話した。
アメリカのウェンディ・シャーマン国務副長官は別の会見で、NATOは「門戸開放の方針を常に同盟の中心に据えてきた。その門戸を閉ざそうとすることは許されない」と報道陣に語った。
シャーマン国務副長官のコメントは、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が繰り返し述べてきたコメントに同調するものだ。
「どんな安全保障体制に自身が加わりたいかなど、それぞれの国が自身の進む道を決める権利を持つといった基本方針についてわたしたちが妥協することはない」とストルテンベルグ事務総長は7日、報道陣に語っていた。
アメリカとNATOは、ウクライナに侵攻すれば深刻な経済的影響が出るとロシアに警告してきた。ロシアは侵攻の意図はないと繰り返しているが、ウクライナ国境に数万人規模の兵士を終結させることで地域に緊張をもたらしている。
リャブコフ外務次官は10日、「ウクライナを攻撃する計画も意図もない」とした上で、「エスカレートするシナリオのようなものを恐れる理由はない」と語ったとNPRは報じた。
一方、シャーマン国務副長官はロシアに対し、「兵を兵舎に戻すか、何の演習をどのような目的でやっているのかわたしたちに教える」よう求めた。
ウクライナとジョージアはいずれも旧ソ連を構成していた共和国で、ここ15年以内にロシアによる侵攻に直面してきた。
2014年にはロシアがウクライナに侵攻し、クリミア半島を併合。2014年以降はウクライナ東部のドンバス地方でウクライナ軍と戦う分離独立派を支援するなど、ロシアはウクライナに対して攻撃的な姿勢を取り続けてきた。専門家は、ロシアのプーチン大統領がウクライナを「やり残した仕事」と見なしていると指摘する。
また、2008年にはジョージアに侵攻している。2009年のEU(欧州連合)の調査は、グルジア(2015年に日本政府は国名表記を「ジョージア」に変更)が北部の南オセチアの分離独立派を攻撃したことが紛争のきっかけではなるものの、5日間の戦争の責任は双方にあり、「ロシアの軍事行動は防衛の合理的な限度を大幅に超えていた」と指摘した。2021年1月には、欧州人権裁判所がロシアはジョージアで民間人を殺害するなどの人権侵害を犯したとの判決を下している。
ロシア軍はジョージアの国際的に認められた領土(南オセチアおよびアブハジア)の約20%を占領し続けていて、静かにその領土を奪い続けている。
ウクライナもジョージアもNATOに加盟したいとの意向を示していて、NATOはそれぞれの国と強固なパートナーシップを維持している。プーチン大統領にとって、これは受け入れられるものではなく、いずれの国のNATOへの加盟も認めないとけん制し続けている。
プーチン大統領は、ウクライナとジョージアをめぐる緊張はアメリカとその同盟国のせいだと主張しているが、こうした地域でのロシアの攻撃的な行動がウクライナとジョージアをさらにNATOと西側諸国に近付けている。
ヨーロッパでのウクライナをめぐる外交的な話し合いまだ続いている。12日にはベルギーの首都ブリュッセルでNATO加盟国とロシアの代表の会合が、13日にはオーストリアの首都ウィーンで欧州安全保障協力機構(OSCE)の会合が予定されている。10日の協議では明確な進展はなく、緊張状態が続いている。
「(今回の協議は)話し合いであり、お互いの考えや優先事項への理解を深めるものだった」とシャーマン国務副長官は語ったとニューヨーク・タイムズは報じた。
「交渉と呼ぶようなものではない」
[原文:Russia continues to make demands the US will never agree to over Ukraine]
(翻訳、編集:山口佳美)