2021年通年のデータがまとまった今、ベンチャーキャピタル(VC)の投資額はまさに驚きの水準だったことが明らかになった。そして2022年も、引き続き投資活動が活発となる兆候がすでにある。
米ビジネス情報サービス会社のクランチベースによると、世界のVC企業は2021年、スタートアップ企業に合計で6430億ドル(約73兆円)を投じた。3350億ドル(約38兆円)だった2020年と比較すれば、実に92%増となる。
こうした数字は、調査企業ピッチブックの報告書とも一致している。同社によるとベンチャー企業への投資は世界全体で、2020年の3467億ドル(約40兆円)から2021年は6710億ドル(約77兆円)に達したという。
なお、アメリカのベンチャー投資額は2021年、世界合計の50%弱となる3299億ドル(約38兆円)となり、2020年の合計1666億ドル(約19兆円)からほぼ倍増したことになる。
さらに、アメリカのVCは2021年、ファンド向けに1280億ドル(約15兆円)以上を調達しており、その財源にはまだキャッシュが潤沢に残っている。
上位の投資先やステージは?
ビノッド・コースラが率いるVC、コースラ・ベンチャーズは2021年、シードステージのスタートアップ企業向けのファンドで4億ドル(約460億円)を調達した。
Khosla Ventures
クランチベースによると、全セクターの中で最も多くの資金を調達したジャンルは「フィンテック」だった。続いて「ヘルスケア」「Eコマース」「輸送」が並ぶ。
また、ファンドの投資先として最も多くの割合を占めたのは、当然ながらレイターステージのスタートアップ企業だ。シリーズC以降のステージでは投資件数3735件、4130億ドル(約47兆円)を調達した。
これほどの投資があったということは、ユニコーン企業が急増したということでもある。10億ドル(約115億円)以上の評価額が付いた企業は2021年、586社にのぼった。うち340社はアメリカに拠点を置く企業だ。
上場したユニコーン企業の数もまた記録的となったため、新規ファンドの資金調達に加えて、VCは財源の補充もできた。VCの支援を受けて2021年に上場を果たし、新規株式公開(IPO)時点で10億ドル以上の評価額が付いた企業の数は、クランチベースによると238社に達した。
とはいえ、2020年と比べ最大の伸び幅を記録したのは、アーリーステージ市場だった。
クランチベースによると、アーリーステージのスタートアップ企業は投資件数9030件で2010億ドル(約23兆円)を調達。特に第4四半期は611億ドル(約7兆円)に達した。2020年の合計1010億ドル(約11.5兆円)から1000億ドル(約11兆円)以上増加し、1年間で倍増したことになる。
創業間もないスタートアップも2021年、シードラウンド1万9291件で調達額が2020年から100億ドル(約1兆円)増、56%増となる294億ドル(約3兆円)に達した。クランチベースによると、2021年のシードファンドのデータはまだ確定していないため、情報が更新されればこの合計額はさらに増える可能性もある。
また、大手VCのアンドリーセン・ホロウィッツやグレイロック・パートナーズ、コースラ・ベンチャーズはどこも2021年、大規模なシード特化ファンドを発表しており、シードステージへの投資は2022年も盛り上がりを見せる可能性がある。
こうした多額の資金の流入は減速すると見る向きもあるが、アンドリーセン・ホロウィッツなど大手が資金調達を発表しており、VC市場はまだ強気であることがうかがえる。2022年もまた、活発な1年になりそうだ。
(翻訳・松丸さとみ、編集・野田翔)