太陽光発電。
撮影:三ツ村崇志
1月12日、気象予報や気象アプリを提供するウェザーニューズは、電気事業者向けに「太陽光発電量予測データ」のAPIを提供することを発表した。気象データをビジネスに活用する、「ウェザーテック(WxTech)」の一例だ。
気象データから発電量を推測
太陽光発電量予測の予測値と実績値との比較 (青色は発電量実績、橙色は発電量予測。誤差がないほど精度が高いことを示す)。
提供:ウェザーニューズ
ウェザーニューズでは、2020年12月から、電気事業者向けに1キロメートルメッシュという高解像度化された「日射量」などの気象データについてリアルタイムの実況データの販売を進めてきた。
今回、日射量を含む15種類の気象データについて、72時間先までの1キロメートルメッシュの情報を30分刻みで提供。この気象予測データと電力会社から提供を受けた太陽光発電パネルの向きや角度などの設置環境のデータを組み合わせることで、1kmメッシュ、30分刻みでの太陽光発電による発電量を、最大72時間先まで予測できるAPIを開発した。導入時には試験的に無料で利用が可能なケースもあるというが、基本的にサービスは有償だという。
ウェザーニューズの広報は、今回のAPIの提供について次のように語る。
「電気事業者から日射量データについてニーズが継続して高い状態で、これから新設するところ(電気事業者)については、太陽光発電量予測のデータが欲しいというニーズがあることから、今回、太陽光発電量予測データのAPI提供を開始することになりました」
日本では現在、太陽光発電などの再生可能エネルギーを用いて発電された電力は、基本的に「固定価格買取制度(FIT)」にもとづいて一定の価格で買取られている。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁説明会資料「FIP制度について」より引用
ただし、今後再エネを主力電源化していく上で、再エネで発電された電力を固定価格で買い取るための原資となる「再エネ発電賦課金」の負担増への対策や、再エネの割合が増えても電力需要に対応できるような電力システムの構築が不可欠だとされていた。
そこで、新たな制度設計のために2020年6月に改正再エネ特措法が成立。
2022年4月から、新たにFIP制度(Feed in Premium)が開始されることとなった。実は、このFIP制度の開始にともない、再エネを活用した発電事業者の間で、発電量を正確に予測する需要が高まっているという。
FIT制度からFIP制度へ。何が変わるのか?
需要ピークに電力を供給するインセンティブを高くすることで、再エネの割合が増えても安定して電力を維持できるようにしようという考えだ。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁説明会資料「FIP制度について」より引用
FIP制度では、発電事業者は再エネによって発電された電気をこれまでのような「固定価格」で販売するのではなく、卸電力市場の市場価格に連動した形で販売。その時の売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を得ることができる。
ただし、FIP制度の適用となった場合、太陽光発電によって発電された電力の「計画値」と「実績値」に誤差(不足)があった場合、再エネ発電事業者は電力会社から補填された分の電気料金(インバランス料金)を支払う必要が出てくる。発電した電力を全て固定価格で買い取られていたFIT制度では、インバランス料金の支払いが特例的に免除されていたため、発電量を正確に予想する必要がなかった。
「これまで、電気事業者は太陽光発電所を所有していたとしても、ほぼ全ての事業者がFIT特例制度を利用していたことから、そもそも太陽光発電量予測を行う必要がなく、そもそも発電量予測のノウハウを持つ電力会社は少ない状況です。(APIの提供によって)電気事業者が自前で発電量予測の技術を高める必要なく、発電量予測を手に入れられることができます」(ウェザーニューズ広報)
ウェザーニューズが今回提供したAPIでは、まずは各地域の緯度や過去の気象データ、太陽光発電パネルの設置条件(角度など)をもとに、物理モデルを用いて発電量を予測。1年後には、発電量の実績データや気象データを機械学習させることで、さらなる精度向上が期待できるとしている。
今回ウェザーニューズが開発したAPIと同様に、日本気象協会も2020年8月から、太陽の日射量や太陽光発電出力予測APIの提供を開始。2021年10月には機能拡充を図るなど、各社2022年4月に向けて、準備を進めている状況だ。
(文・三ツ村崇志)