労働時間の適正化を求める運動は1866年に始まった。
Salvatore Laporta/KONTROLAB
- 人材を確保するために週4日勤務制を導入する企業が増えている。
- このような傾向は、「燃え尽き症候群」を理由に仕事を辞める労働者が増えるとともに表れた。
- ここでは、アメリカが週5日40時間労働制を採用するまでの経緯を時系列で紹介する。
新型コロナウイルスのパンデミックによって、働き方が世界的に一変した。この2年間で、多くのアメリカ人が、より長く働き、休憩を少なくし、昼夜を問わず職務に当たっているという。実際、毎日3時間も余計に働いていると報告した人が多いと、2020年にブルームバーグが報じている。それが今、すべて変わろうとしている。
多くの労働者が、「燃え尽き症候群」や、(仕事に)価値を感じられないことを理由に、記録的なスピードで仕事をやめている。そして、人材を惹きつけ、維持するために週4日勤務制を導入する企業が増えている。Nikkei Asiaによると、パナソニック(Panasonic)は2022年1月6日、週4日勤務制を導入すると発表した。また、サンフランシスコを拠点とするeコマースの新興企業、ボルト(Bolt)は週4日勤務制を試験導入したところ、生産性とワークライフバランスの向上が見られたことから、恒久的に週4日勤務制に移行すると1月6日に発表した。他の多くの企業や非営利団体も、ここ数カ月で週5日勤務制を廃止している。
このような変化によって、週40時間労働制(週5日勤務制)が労働者にとってまだ意味のあるものなのかどうかをめぐり、議論が盛り上がっている。ここでは、労働者が週40時間労働制を勝ち取るまでの経緯を振り返ってみよう。
週40時間労働制の歴史
1866年8月20日:「National Labor Union」という新たに結成された全国的な労働組合が、1日8時間労働を義務付ける法律を可決するよう議会に要請した。彼らの努力は失敗に終わったが、その後数十年にわたって全米のアメリカ人が労働改革を支持するきっかけになった。
1867年5月1日:イリノイ州議会は1日8時間労働を義務付ける法律を可決したが、多くの雇用主が協力を拒否したため、シカゴで大規模なストライキが発生した。後にこの日は「メーデー」として知られるようになった。
1869年5月19日:当時のユリシーズ・S・グラント(Ulysses S. Grant)大統領は、安定した賃金と1日8時間労働を保証すると宣言した。ただし、その対象となるのは政府職員に限られていた。グラントのこの決断により、民間部門の労働者が同じ権利を求める気運が高まった。
1870年代・1880年代:National Labor Unionは解散したが、労働騎士団(Knights of Labor)やアメリカ合衆国・カナダ職能労働組合連盟(FOTLU)など他の組織も8時間労働制を要求し続けた。毎年メーデーにはストライキやデモが組織され、この問題への関心が高まった。
1886年5月1日:労働団体が勤務時間短縮を掲げて呼びかけたストライキに、全米で30万人以上の労働者が参加した。シカゴでは、デモ隊が数日間にわたって警察と争い、双方の多くが負傷または死亡した。この事件は「ヘイマーケット事件」として知られている。
1890年:アメリカ政府が労働者の労働時間の追跡調査を始めた。製造業のフルタイム従業員の平均労働時間は、なんと週100時間だった。
1906年:印刷業界の大手2社で、1日8時間労働制が導入された。
1916年9月3日:連邦議会は、州間鉄道の労働者の8時間労働を定めたアダムソン法案を可決した。最高裁は1917年にこの法律を合憲と判断した。
1926年9月25日:自動車メーカーのフォード(Ford)が週5日勤務・40時間労働制を導入。
1938年6月25日:連邦議会が、週労働時間を44時間に制限する公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)を可決した。
1940年6月26日:連邦議会は公正労働基準法を改正し、週労働時間を40時間に制限した。
1940年10月24日:公正労働基準法が施行された。
週40時間労働制はどのように進化してきたか
週40時間労働制の実現には長い時間を要したが、調査によると、人々はますます長く働くようになっている。
税務・プロフェッショナルサービス企業のアーンスト・アンド・ヤング(EY)が行った調査によると、世界的には管理職の半数が週40時間以上勤務していると回答しており、アメリカの場合はその比率が58%にも上るという。おそらく、その時間の一部は、オフィスではなく、自宅で電子メールに返信することなどに費やされているのだろう。
一方、アメリカ人の中には、24時間働くことを一種のステータスシンボルとして捉えている人もいる。多くの人が週60時間や80時間働いているというが、その時間の多くはあまり生産的ではない。金融やコンサルティングなどの分野では、週80時間働いているように見せかけている人もいることが、最近の研究で明らかになっている。
一般的に、週60時間労働をこなせるのは3週間までで、それ以降は生産性が低下することが研究によって示されている。
[原文:More leaders are scrapping the 40-hour workweek. Here's how it became so popular in the first place.]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)