メタバースおよびサイバーセキュリティ関連の有望企業が、アップルやアマゾンのように莫大な値上がり益をもたらす日がそのうちやってくると予測する上場投資信託(ETF)トップがいる。
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メタ(旧フェイスブック)、アマゾン、アップル、ネットフリックス、アルファベット。いわゆる「FAANG」は世界を代表する著名な巨大企業だ。
2009年以降、アメリカの大型株動向を示す株価指数S&P500は663%値上がり。その間、アルファベットは1400%、アップルは5310%、アマゾンは5500%、ネットフリックスは10390%という驚異的な値上がり率を記録している。
メタは遅れて2012年5月に上場したものの、そこから801%の値上がりをみせている。
上場投資信託(ETF)商品の組成を手がけるトゥルーマーク・インベストメンツ(TrueMark Investments)のマイケル・ルーカス最高経営責任者(CEO)はこう語る。
「FAANG銘柄はこの15年間、超高成長を続ける長期トレンドであり続け、いずれもいまや地球最大規模の企業として君臨しています。どれもこれも20年前に買っておけばよかったと、誰もが思っていることでしょう」
FAANGに投資して莫大な利益を得るにはもはや手遅れだろう。
それでもルーカスは以下で紹介するメタバースおよびサイバーセキュリティ関連の4銘柄が「カテゴリーキラー(Category Killer)」として、FAANGのような莫大な値上がり益をもたらす日がそのうちやってくるとみている。
カテゴリーキラーとは、ルーカスの定義によれば、超高成長フェーズを迎えて「繁栄を謳歌(おうか)」し、それぞれのセグメントで支配的なプレーヤーになる可能性を秘めた企業を指す。
なお、ソフトウェア開発企業の売上高は「基本的に顧客の獲得に応じて積み上がっていく」ものであり、アーリーステージのスタートアップとして頭角を現すことの多いカテゴリーキラー(候補)を見きわめるには、収益よりむしろ顧客のプロダクト導入率などより「基礎的な」指標をみるのがいいとルーカスは指摘する。
メタバース分野の2銘柄は…
ルーカスはメタバース分野の「カテゴリーキラー」有力候補として、ビデオゲーム開発のユニティ・ソフトウェア(Unity Software)とゲームプラットフォームのロブロックス(Roblox)を挙げる。
その理由は、コアビジネスの安定感、ゲーム市場における支配的な優位性、両社のテクノロジーおよびバリュープロポジション(=顧客に提供する価値・利益)とメタバースの相性の良さだ。
「デジタルインフラの構築と、ビデオゲーム向けのインタラクティブなリアルタイム3Dコンテンツの制作について、ユニティは業界随一の技術力を誇ります。
最先端のテクノロジーは、メタバースのインフラ構築や超現実的なデジタル環境の構築においてきわめて有用であり、その意味でユニティは競合他社に比べて圧倒的に優位なポジションにいると言えるでしょう」
そうしたテクノロジーに加え、建築・建設、医療など特定分野に関する知見と実績があるので、ユニティはNFT(非代替性トークン)開発のような急成長分野への参入も十分可能とルーカスは太鼓判を押す。
「拡張現実(AR)や仮想現実(VR)、リアルタイム3Dが役立つ分野ならどこであれ、ユニティはモンスターのごとき活躍をみせるでしょう。ぜひ応用先に思いを巡らせてみてください」(ルーカス)
一方、ロブロックスは既存のテクノロジーを自社プラットフォームにうまく役立てているとルーカスは評価する。
1日5000万人近くもの比較的若いユーザーが、同社のプラットフォームを使ってそれぞれのインタラクティブでイマーシブな(=没入感を得られる)世界を構築できる、その意味でロブロックスのテクノロジーは先進的ではないが「積み重ね可能」なものと言える。
「ある世代の人たちはみなロブロックスのテクノロジーに慣れ親しみ、快適に使いこなせる。そう考えると、ロブロックスの優位性がはっきりみえてくると思います」(ルーカス)
以前から猛烈な勢いで成長を遂げ、本業とは異なる特定の狭い分野に進出して実績を築きつつあったユニティとロブロックスにとって、メタバースはさらなる成長と事業拡大のチャンスを生み出した、というのがルーカスの現状分析だ。
そして、アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)や(バトルロイヤルゲーム『フォートナイト(Fortnite)』の開発元)エピック・ゲームズ(Epic Games)を筆頭に、今後さまざまな企業がメタバースを触媒にして利益を得ることになるという。
「私たちの言うところの『カテゴリーキラー』は、メタバースで利益を得るにとどまらず、メタバースの外にコアビジネスをつくり出すのです。
ユニティは(建築や医療など)特定の分野や業界で圧倒的優位に立つことにより差別化を図り、ロブロックスは子ども(低年齢)のユーザー層を独占することで一歩先を行っています。
両社はこれからも新たに進出したセグメントでの優位性・支配力を高めようとするでしょうし、メタバースはその市場やポテンシャルの拡大をあと押しすることになるでしょう」
サイバーセキュリティ分野の2銘柄は…
サイバーセキュリティ関連銘柄について、ルーカスはクラウドストライク(CrowdStrike)とゼットスケーラー(Zscaler)をカテゴリーキラーの有力候補に挙げる。
「(前節でとり上げた)ユニティ・ソフトウェアやロブロックスと同じように、クラウドストライクとゼットスケーラーも本業で成長し、順調に顧客基盤の拡大を続けていましたが、そこで新型コロナの世界的大流行が起こりました」(ルーカス)
ところが、直後の2020年3月に在宅勤務シフトが急加速すると、同時にサイバーセキュリティ業界にも注目が集まり出す。
「それ以前からサイバーセキュリティは日々重要性を増していたわけですが、パンデミックによって、既存の長期的なトレンドがあらためて脚光を浴びることになりました。
(パンデミックのあるなしにかかわらず)サイバーセキュリティの強化は、グローバル規模で進むデジタルシフトは二度と逆行することはないという認識に裏打ちされた、揺らぐことのないトレンドで、もはやあと戻りする未来はあり得ないのです」(ルーカス)
クラウドストライクとゼットスケーラーはいずれもきわめて有効に機能しているが、それぞれの見ている視野は異なる。
言ってみれば、前者が「クラウドの周辺」で機能するのに対し、クラウドベースの後者は「コア(内部)」で機能するのが特徴だという。
(翻訳・編集:川村力)