東アフリカ大地溝帯にある、エチオピア南西部のオモ・キビッシュ層で調査する研究者たち。
Al Deino
- 東アフリカで発見された最古の人類の化石は、科学者が考えていたよりもさらに古いものである可能性がある。
- 新しい研究によると、この化石は約23万3000年前の火山の噴火で埋没したことが分かった。
- この化石は20万年以内のものと考えられていた。人類の起源は時代を遡り続けている。
東アフリカ最古の人類の化石は、研究者が考えていたよりもさらに古いものであることが、新しい研究で示された。
オモ1号化石は、1960年代後半にエチオピアのオモ・キビッシュ地層の奥深くで発掘されたホモ・サピエンスの骨だ。この地はエチオピア・リフト(地溝帯)の渓谷の中にあり、火山活動による堆積物によって人類の化石や遺物が豊富に保存されている。これまで何十年もの間、科学者たちはオモ1号の骨は20万年以内のものだと信じていた。
しかし、今回、国際的な科学者のチームは、このオモ1号の化石が埋まっていた火山灰が約23万3000年前の噴火によるものであることを突き止めた。つまり、この骨は少なくともその噴火よりも古い時代のものだということだ。
古代の火山噴火の年代測定が行われているオモ・キビッシュ地層。
Céline Vidal
これらは、エチオピア・リフトの主要な火山噴火の年代を測定する大規模な研究の一環として、2022年1月12日に学術誌の「ネイチャー(Nature)」に発表されたものだ。噴火の年代を特定することで、化石の年代もより正確に測定できるようになり、人類史の年表作成にも役立つのだが、オモ1号の骨は研究者チームが考えていた以上に古いものだったようだ。
何十年もの間にわたって、オモの骨は最古のホモ・サピエンスの化石だと考えられており、現生人類が約20万年前に東アフリカで初めて出現したことを示すものだった。しかし、この説は2017年に北西アフリカのモロッコで31万5000年前の骨が発見されたことで揺らいだ。モロッコで発見されたのはホモ・サピエンスのものだと考えられ、人の誕生は、研究者たちが考えていたよりもはるかに早く、おそらくアフリカの複数の地域で起こったということが示されたのだ(モロッコの化石はホモ・サピエンスのものではないと主張する古生物学者もいる)。
モロッコで発見された人類の化石を合成し復元した画像。
Thomson Reuters
今回のオモ1号についての新たな発見は、東アフリカでも、人間はかつて科学者たちが考えていたよりはるか以前に、地上を歩いていたことを示唆している。
「新しい発見や新しい研究によって人類の歴史はさらに遡るかもしれない」とこの研究の共著者であり、ケンブリッジ・テフラ研究所を率いるクリスティン・レーン(Christine Lane)はプレスリリースで述べている。
軽石を砕き、重要な火山噴火の年代測定に成功
オモ・キビッシュ層にあった他の化石の年代を正確に判定するために、科学者たちはその化石の上下の火山灰の層の放射年代測定を行った。しかし、この研究を主導したケンブリッジ大学(University of Cambridge)の地理学者、セリーヌ・ヴィダル(Céline Vidal)によると、オモ1号の上にある火山灰は細かすぎたためにそれができなかったという。
ヴィダルのチームは、その火山灰に含まれる化学物質を分析し、火山灰を近くにあるシャラ火山と関連付けた。火山灰そのものの年代を特定することはできなかったが、同じ噴火でこの地域に降った軽石の年代を測定したのだ。
「それぞれの噴火には独自の特徴があり、地表下でマグマがたどった道筋によって、独自の進化のストーリーが展開する」とヴィダルはプレスリリースで述べている。
「岩を砕けば、中の鉱物の年代測定を行うことや、鉱物を結合させている火山ガラスの化学的な特徴を特定することもできる」
スコットランドのグラスゴー大学の研究者たちは、ヴィダルのチームが送ってきた軽石を粉砕して年代測定を行い、この噴火が約23万3000年(±2万2000)前に起きたことを突き止めた。
「人類の年代は化石に基づいてしか決められず、これが人類の生じた決定的な年代だと断言することはできない」とヴィダルは話す。
「人類の進化に関する研究は常に動いている。我々の理解が深まるにつれ、境界線や時間軸は変化していく。しかし、これらの化石は、自然災害に見舞われやすい地域でも生き残り、繁栄し、移動してきた人間の回復力を示している」
[原文:Oldest human fossils from eastern Africa are about 30,000 years older than scientists thought]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)