2021年は、誰が見ても仮想通貨相場が乱高下した1年だった。その時価総額は年初の8000億ドル(約91兆円)弱から、最終的に287%増の2兆3000億ドル(約262兆円)まで急増した。
果たして2022年も仮想通貨は上昇を続けるのか。中でもビットコインの価格見通しや、イーサリアムやソラナなどの台頭するアルトコインの有望株については気になるところだ。
Insiderは業界幹部、投資家、アナリストなど6人の専門家に話を聞き、予測を以下にまとめた。
ホン・ファン(OKコインCEO)
暗号資産取引所、OKコインのホン・ファンCEO
OkCoin
OKコインのホン・ファン(Hong Fang)CEOは、2021年は仮想通貨業界の開発が進んだ年であり、それは2022年における強気相場を示唆すると考えている。
開発者がスマート・コントラクト・プラットフォームの上に分散型アプリケーションを開発したり、アーティストがNFTを利用したりすることで、この1年間、仮想通貨業界は活気あるクリエイターエコノミーを構築してきた。
ファンは、以前検討した一定のシナリオ下では、ビットコイン価格が2021年末までに10万ドル(約1140万円)に達する可能性があるとしていたが、2021年後半においては、それが達成しそうにないと見方を変えていた。
ファンはInsiderの取材に対し、「(仮想通貨市場は)自由な市場ですが、人の行動によって動く市場です。そして、人の行動は全く合理的なものではありません。人は焦って先走り、欲を出し、うまくいかないと怖くなるのです」と述べる。
とはいえ、ファンは中長期的には引き続き「非常に強気」な見方をしている。業界には資金と優れた人材が流入しているからだ。
「2022年には、さらに多くの人材がこの業界に参画し、多様な仮想通貨分野において開発を続ける年になるでしょう」とファンは言う。
一方、異なる種類の仮想通貨が互いに分離されていくだろう、とファンは予想する。機関投資家や個人投資家が、それぞれの技術的特徴を理解するようになるからだ。
「ビットコインは、そのユニークな価値によって、これからも仮想通貨のキングであり続けると思います。しかし同時に、異なる種類の仮想通貨がビットコインから分離されていくでしょう。投資家が、それぞれの仮想通貨に異なった価値を見出し始めるからです」
ジェシー・パウエル(クラーケンCEO)
暗号資産取引所クラーケン(Kraken)のジェシー・パウエル 創業者兼CEO
Kraken
クラーケン(Kraken)のジェシー・パウエル(Jesse Powell)創業者兼CEOは、2021年中にビットコインの価格が10万ドル(約1140万円)に達すると予想していた。
それは実現しなかったものの、主流の投資対象としての認知度は高まり、規制が明確になってきたことで、2022年はビットコインにとって先行きの明るい年となる、とパウエルは考えている。
長期的な下落を懸念する声も多いが、パウエルは冬の時代がすぐに訪れるとは考えていない。ビットコイン価格が4万ドル(約456万円)を下回れば買い時だと、パウエルは言う。
Insiderの取材に対しパウエルは、「過去10年間の値動きを見れば明らかです。ビットコインは、世界中の他のあらゆる資産のパフォーマンスを上回っています」と語った。
パウエルは、2022年にNFTが「より重要な存在」になると予測している。その理由は、単に特定のNFTを所有することに伴う審美的価値や威信だけでなく、来歴追跡や借入れ、貸出しなどのユースケースにもあるという。
「2022年はNFTの年になると思います。投資家として考えるならば、NFTの恩恵を受ける対象は何か。それは分散化されたプラットフォームや仮想通貨でしょう」とパウエルは言う。
カイル・サマーニ(マルチコイン・キャピタル 創業者)
仮想通貨ヘッジファンド、マルチコイン・キャピタル 創業者兼マネージング・ディレクターのカイル・サマーニ
Multicoin Capital
仮想通貨市場の弱含みにもかかわらず、マルチコイン・キャピタル(Multicoin Capital)創業者兼マネージング・ディレクターのカイル・サマーニ(Kyle Samani)は、「ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)の高値更新はまだこれからです」と強気だ。
サマーニは、ここ1年ほどの間に起きた技術的ブレークスルーを見て、仮想通貨市場の変動についてこれまでとは根本的な違いがあると考えている。
次に市場が下落したとしても、それは2017年のビットコイン価格高騰後の下落とは本質的に異なる。当時は、ホワイトペーパー(概要書)以外に何ら裏付けのないイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に対し過熱した投資が行われたが、今は仮想通貨に実用的な技術が組み込まれている。
Insiderの取材に対しサマーニは、「2017年の高騰は、裏付けのないものでした。しかし今はそうではありません。実用性があり、その価値を見出すことができます」と述べた。
そのため、ビットコインと他の仮想通貨の値動きは連動しないとサマーニは考えている。
「従来の見方では、他の仮想通貨はビットコインの動きをより大きく反映する、高い市場感応度を持つだけのものでした。しかし、今の仮想通貨はそれぞれ異なった機能・実用性を持っています」
サマーニが運用する仮想通貨ヘッジファンドは、強力な技術に裏付けられたポートフォリオの構築を目指し、レイヤー1・プロトコールのソラナ(SOL)、分散型ブロックチェーンのヘリウム(HNT)、インデクシング・プロトコールのザ・グラフ(GRT)に投資している。
アーマンド・アギュイラー(ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズ)
Fundstrat Global Advisors
ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズ(Fundstrat Global Advisors)デジタルアセット・ストラテジー担当バイスプレジデントのアーマンド・アギュイラー(Armando Aguilar)は以前、ビットコインの価格が7万ドル(約798万円)に達すると予測していたが、さまざまなマクロ要素の影響を鑑み、2022年についてはより慎重な見方をしている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、テーパリングのペースを倍増すると決定し、利上げも2022年中に3回行うかもしれないと発表した。オミクロン株の感染拡大、サプライチェーン問題、インフレの進行、中間選挙といった要素を合わせて考えると、市場は不安定なものになるだろう、とアギュイラーは言う。
それでもアギュイラーは、ビットコインは2022年前半に10万ドル(約1140万円)に達すると予測する。機関投資家による投資対象としての採用やインフレ懸念の継続がその理由だ。
さらに、イーサリアムは9000ドル(約102万円)を超えると見ている。イーサリアムのプラットフォーム上で、分散型金融、NFT、メタバース関連の動きが成長を続けているからだ。
具体的には、分散型金融に対する機関投資家や個人投資家の需要がこれまで以上に高まり、イーサリアムはビットコインの値動きを上回るだろう。2021年における全てのベンチャーキャピタルによる投資のうち25%、計428件19億ドル(約2166億円)が分散型金融分野に投資された、とアギュイラーは言う。
Insiderの取材に対してアギュイラーは、「2021年の後半には、規制の影響で分散型金融への投資が減速しましたが、分散型金融を採用する動きや法制度の明確化は継続しており、それによってこの分野の成長は促進されるでしょう」と述べる。
これらの動きを受けて、2022年にアギュイラーが注目するのは次の6種類のアルトコインだ。
- 分散型金融トークン:ボバ・ネットワーク(BOBA)、ヤーン・ファイナンス(YFI)、アーベ(Aave)、1インチ(1INCH)
- レイヤー1・プロトコール:アバランチ(AVAX)、ポルカドット(DOT)、カディーナ(KDA)、テラ(LUNA)、コスモス(ATOM)、ソラナ(SOL)、アルゴランド(ALGO)
- レイヤー2・プロトコール:ポリゴン(MATIC)
- インフラストラクチャー構築プラットフォーム:ヘリウム(HNT)、ジャイアント・プロトコール(GIC)
- メタバース向けトークン:レンダー(RNDR)
- ゲーム向けプラットフォーム全般
アレックス・スベイナビック(ナンセン 共同創業者兼CEO)
仮想通貨アルトコインのライトコイン(Litecoin)、リップル(Ripple)、イーサリアム
Jack Taylor/Getty Image
イーサリアムは2021年に価値が急上昇し、ネイティブトークンのイーサ(ETH)は730ドル(約8万3200円)から11月の最高値で4860ドル(55万4000円)へと約560%も価格が高騰した。
急騰の背景には、NFT(非代替性トークン)の台頭がある。しかし、イーサリアムにも問題がなかった訳ではない。
ブロックチェーン分析プラットフォーム、ナンセン(Nansen)のアレックス・スベイナビック(Alex Svanevik)共同創業者兼CEOは、「2021年、イーサリアムにとって重大な問題の一つは、エネルギー費用の高騰でした。当然、他のブロックチェーンにも波及しています」と述べる。
それでも、「アルトコインは多くの支持を得ており、現時点で数百万人のユーザーが存在するものもあります。今後もこの分野は強化されていくでしょう」と言う。
スベイナビックは、2022年においてイーサリアムのライバルとなり得るブロックチェーン、いわば「イーサリアム・キラー」を6つ、Insiderに共有している。
レイヤー2・ブロックチェーンのうち、スベイナビックがイーサリアムにとって脅威となり得ると見ているのは、アバランチ(Avalanche)だ。
アバランチのネイティブトークン、アバックス(Avax)は、2021年11月、開発会社のアバ・ラボズ(Ava Labs)が4大会計事務所のひとつデロイトとの提携を発表したことにより、価格が急騰した。
アバ・ラボズのジョン・ウー社長は、Insiderの取材に対し次のように述べる。
「イーサリアムは、世界最大のコンピューターになろうとしています。スタートダッシュはよかったのですが、その技術はそこまで優れてはいないのです。アップグレードに成功しなければ、フェイスブック(Facebook)にはなれないまま、マイスペース(MySpace)やフレンドスター(Friendster)のような存在に終わるでしょう」
スベイナビックは、イーサリアムの王座に対抗する新たなブロックチェーン・プラットフォームとしてバイナンス・スマート・チェーン(Binance Smart Chain:BSC)を挙げた。さらに、やはりレイヤー2・ブロックチェーンのファントム(fantom)とポリゴン(polygon)にも注目しているという。
「複数のブロックチェーンの台頭は、2022年の大きなテーマかもしれません。アバランチのトークン価格の急騰は、ファントムやポリゴンの台頭と重なり、BSCとも相関があると言えるでしょう」とスベイナビックは述べる。
レイヤー1・ブロックチェーンの中では、ソラナ(SOL)とテラ(Terra)が主導権を争うとスベイナビックは予測し、次のように説明する。
「この2つのブロックチェーンは、エネルギーコストが安く、処理能力が高く、ブロック時間(訳注:ブロックチェーン上での1ブロック処理に想定される時間)が短いのです。こうした要素は、私たちが成長を確認してきた主な要素の一部です」
ブライアン・モーソフ(イーサー・キャピタルCEO)
Rafapress/Shutterstock
イーサー・キャピタルのブライアン・モーソフCEOは、2022年も仮想通貨は上昇すると予測している。中でも、ソラナ(SOL)に高い関心を払っている。
「ソラナには要注目です。非常に多くの投資家がソラナに関心を寄せています。ソラナが使うラスト(Rust)という言語は、イーサリアム用言語のソリディティ(Solidity)に慣れていない人にとっては、より柔軟性があり、開発者サポートも充実しているという議論もあります。その意味で私から見ると、ソラナは、イーサリアムの競合通貨の筆頭に位置しています」とモーソフは言う。
(翻訳・住本時久、編集・野田翔)