提供:MHD モエ ヘネシー ディアジオ
1772年にフランスで創業されたシャンパーニュ・メゾン、「ヴーヴ・クリコ」。同メゾンを現在のような唯一無二のブランドに成長させた女性起業家が、「ラ・グランダム=偉大なる女性」の愛称で知られるマダム・クリコだ。
創業200周年となる1972年以来、同社はマダム・クリコのように大胆な精神、独自の創造力、そして起業家精神と多様性をもつ世界の女性リーダーを讃える「ヴーヴ・クリコ ビジネスウーマン アワード=現ヴーヴ・クリコ ボールド ウーマン アワード」を創設。これまで世界27カ国、350名以上の女性リーダーの活躍に光をあててきた。
2021年11月29日に行われたアワード授賞式では、最終選考まで残った6名から「ボールド ウーマン アワード」、「ボールド フューチャー アワード」そして「ボールド チャンピオン アワード」の受賞者が選出された。
事業の社会的なインパクトやエシカルさをより重視
オンラインで、受賞者によるスピーチが行われた。左から順に、アスクル 代表取締役社長 CEO 吉岡晃さん、ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事 小林りんさん、READYFOR 代表取締役CEO 米良はるかさん。
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2021年より名称が「ヴーヴ・クリコ ビジネスウーマン アワード」から「ボールド ウーマン アワード」に刷新された本アワード。選定の際は「ボールド(大胆な)」が表すとおり、事業を通して社会や次世代にインスピレーションと勇気を与える大胆さ、そして革新性がより重視されている。
ノミネートされたのは「ZERO WASTE DESIGN」をビジョンに掲げ、埼玉県で産業廃棄物の再資源化・環境教育活動に取り組む石坂産業代表取締役石坂典子さん、社会に変革を起こす次世代のチェンジメーカーの育成に取り組む、ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事 小林りんさん、MASHING UPのアドバイザリーボードメンバーでもある、クリエイティブ・カンパニー、ロフトワーク共同創業者取締役会長林千晶さんだ。
そして、今日のマーケットギャップを最大限に利用し、テクノロジーやスタートアップなど、ビジネスに革新的な提案やアプローチをもたらす新時代のリーダーを対象とした「ボールド フューチャー アワード」には、日本初国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を運営する米良はるかさん、宇宙ベンチャーのインフォステラ共同創業者代表取締役CEO倉原直美さん、漁業の六次産業化を目指すGHIBLI代表取締役坪内知佳さんが最終選考まで残った。
そして、ボールド ウーマン アワードを小林さんが、ボールド フューチャー アワードを米良さんがそれぞれ受賞。さらに本年より新設された、先進的な取り組みによって女性の活躍をサポートする男性リーダーへ贈る「ボールド チャンピオン アワード」は、アスクル代表取締役社長CEO 吉岡晃さんに贈られた。
コロナ禍で多くの女性起業家たちの自信が高まった
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アワード授賞式の冒頭では、ヴーヴ・クリコ チーフ・マーケティング&コミュニケーション・オフィサーのキャロル ビルデさんが、女性起業家精神の国際的指標である「ヴーヴ・クリコ インターナショナル バロメーター」から読み取れる、女性起業家の動向を話した。
「今、日本を含むさまざまな国の女性の間で、起業家になりたいという思いが高まっています。 特に新型コロナによる逆風は、女性起業家のビジネスに対する意識を良い方向に変化させました。自分に自信を持てるようになったことで自立心が高まり、慎重かつ大胆にビジネスにおける決断ができる女性が増えています」(キャロル ビルデさん)
また起業家志望者のグループでも、女性のほうが、コロナ禍以前と比べて起業に対する意欲が高いというポジティブなデータも共有された。危機的な状況でも商機を見つけられるのは、女性の強みだ。
女性起業家のロールモデルが求められる理由
さらに同バロメーターでは、90%以上の女性が事業をするなかで模範となるロールモデルの存在が重要であり、88%が女性起業家に刺激を受けると回答したという。しかし実際に成功した女性起業家の名前を具体的に挙げた割合は、男性起業家の名前を挙げた割合と比較して大幅に低く、その結果は世界の平均よりも低い。いかに女性企業家のロールモデルが必要かを物語るデータだ。
会場で行われたトークセッション「ボールド カンバセーション」では、ジェンダーに起因するアンコンシャスバイアスについても言及された。石坂さんは「廃棄物処理業界は、男性の比率が高いため、初対面では自分が代表だと認識されないことも多い。しかし自問自答しながら慰めて、奮い立たせて、挑戦を繰り返していきた」と振り返った。また、女性の割合が低い理系分野で起業したGHIBLIの倉原さんも「商談で技術的な話をする時に、男性と自分とでは、話す時の聞き手の印象が違うと感じることがあった」と、これまでに感じたバイアスについて語った。
2000年にロフトワークを創業し、20年以上起業家として歩んできた林さんは、自身もこれまでジェンダーギャップを感じた経験があると前置きした上で、こう語る。
「起業する際に障壁があることについては、ジェンダー関係ない。女性だから直面するデメリットがあることも事実だが、それ以外のポジティブな側面に目を向けていきたい」(林さん)
弱いリーダーシップが強いチームを作る
「10年前と10年後の自分にメッセージを届けるとしたら?」という問いに小林さんは、10年前の自分には「一人でがんばらなくていい」、10年後の自分には「常に異なる世代・立場の人との交流を絶やさず、変化の中で見失いかけているもの、見えていないものを見る努力を」と声をかけると答えてくれた。
撮影:MASHING UP
それでは今、企業のトップにはどのようなリーダーシップが求められているのだろう。小林さん率いるユナイテッド・ワールド・カレッジISAKが掲げる理念は、「自ら問いを立てる力」「多様性を生かす力」「困難に挑む力」の3つを身につけること。この理念は生徒たちのみでなく、共に働くチームにおいても浸透しているのだという。
「私は、自分が苦手とする分野をきちんと開示するようにしています。そうすることで、それぞれの得意と不得意をカバーできるチームなり、みんなが当事者意識を持つことで、一人でやるよりも100倍良いアイデアが集まる。人を率いるための強いリーダーシップではなくて、人に支えてもらえる弱いリーダーシップが、私のスタイルです」(小林さん)
また今後、多様性に富んだ社会を作るために、教育面からどのようなアプローチが必要なのだろうか?
「教育現場にはびこるアンコンシャスバイアスは大きな問題。未だに『女の子だから文系に……』という指導をする教員や親は多い。そこの意識を改めることで、女の子が本来したいことに挑戦する環境が作られるし、結果として、STEM分野など理系に進む女子学生の割合も増えるはず。
また日本人は、特に『Fear of Failure(失敗を恐れる)』の感覚を強く持っており、これは教育によるところも大きい。これからの教育は、減点主義で評価するのでなく、チャレンジやユニークな発想を評価し、新しいことに挑戦することをセレブレートすることが大切」(小林さん)
大胆な、そして革新的なビジョンとインスピレーションで未来を照らすリーダーたちが作る次の社会が楽しみだ。そして、本アワードをきっかけに新たなチャレンジャーたちが登場することを願う。
MASHING UPより転載(2022年1月6日公開)
(文・MASHING UP編集部)
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