バーガーキングはマックプラントが発売されて以来、イギリスでの植物由来の商品の宣伝を強化したように見える。
Grace Dean/Insider
- ファストフードチェーンは、需要の高まりと市場の活況に伴い、より多くのビーガン向けのメニューを製造している。
- スターバックス、KFC、バーガーキング、マクドナルドなどは商品アイテムを倍増させている。
- しかし、アメリカやイギリスではビーガンはほんのひと握りで、このトレンドを牽引しているのはフレキシタリアン(準菜食主義者)だ。
イギリスでは2022年に入って、スターバックス(Starbucks)が植物性ミルクの追加料金を撤廃し、KFCとマクドナルド(McDonald's)がビーガンバーガーの全国展開を始め、バーガーキング(Burger King)がビーガンチキンナゲットを発表するなど、ビーガン・ファストフード・ファンのに多くの選択肢がもたらされた。
ビーガニュアリー(Veganuary:ビーガンとJanuaryを合わせた言葉。1月から1カ月間、もしくはそれ以降も継続してビーガンをトライするキャンペーン)の始まりにタイミングを合わせたのかもしれないが、ファストフードの大手チェーンは、ようやくビーガンの商品に真剣に取り組むようになった。今後10年以内に全世界で1600億ドル(約18兆3000億円)以上の市場規模になると見込まれるこの分野で、各社はその一角を占めるべく競争を繰り広げている。
アメリカでもファストフードチェーンは、イギリスよりもやや遅いペースだが、より多くのビーガンメニューを展開している。チポトレ(Chipotle)は植物由来のチョリソーを全米で発売し、KFC、バーガーキング、カールスジュニア(Carl's Jr.)、マクドナルドなどのチェーンは、インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)やビヨンドミート(Beyond Meat)といった有名な代替肉ブランドとの提携を急いでいる。
これらの製品は、ファストフード大手にとって、潜在的な大きな価値を提供してくれるものだ。ブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)は、プラントベースの食品市場は、2020年に294億ドル(約3兆3600億円)、2030年には1620億ドル(約18兆5000億円)に成長し、世界のたんぱく質の市場の7.7%を占めるようになると報告している。
ビーガンがまだ人口のごく一部に過ぎないという事実は問題ではない。というのも、このトレンドを生み出しているのは、ビーガンの人だけではないからだ。
そのビーガンでないフレキシタリアン(準菜食主義者)が肉、魚、乳製品の摂取を控えた食生活を好むようになり、プラントベース・ブームに拍車をかけている。
ビーガン製品を発表したファストフードチェーンは大きな成功を収めている。KFCによると、同社がビーガンバーガーをイギリスで発売したところ、新商品発売時の平均の6倍の売れ行きを記録したという。マックプラント(McPlant)のイギリスでの初期の販売データに対して「非常に心強い」とマクドナルドは述べ、一方でプラントベースの代替品の開発や販売を手掛けるイート・ジャスト(Eat Just)は、ピーツ・コーヒー(Peet's Coffee)でエブリシング・プラントベース・サンドイッチ(Everything Plant-Based Sandwich)が、ホットメニューの売り上げのトップとなり、当初の予想の3倍売れていると発表した。
「当社のプラントベースの製品は、イギリス、ドイツ、オランダで重要な販売促進要因であることが証明されており、新製品の発売とともに成長を続けている」と、バーガーキング、ティムホートンズ(Tim Hortons)、ポパイズ(Popeyes)などを傘下に持つレストラン・ブランズ・インターナショナル(Restaurant Brands International)のCEO、ホセ・シル( José Cil )は、前回の決算会見で述べている。
技術革新によって続々と新しいプラントベース製品が登場していることや、ビーガンやフレキシタリアンの増加によって、プラントベース肉市場は拡大している。
また、ファストフードチェーンの低価格のビーガンメニューは、通常なら肉のメニューを注文するような人を誘惑するのにも役立っている。マクドナルドUKでは、マックプラントとクォーターパウンダーチーズ(Quarter Pounder with Cheese)が同じ料金で提供されているし、サブウェイ(Subway)では、ローストチキンのサンドイッチと、プラントベースのチキンのサンドイッチは同じ価格だ。
現在、イギリスでは、ほとんどのファストフードチェーンが少なくとも1品はビーガン商品を提供している。そして一部のチェーンではビーガンの消費者が目にしたことのないもの、つまり新しい選択肢を提供することで道を切り開いている。
例えば、サブウェイの場合、現在4種類のビーガン・サンドイッチがあり、さらに、ビーガニュアリー用の限定発売の2種類のサンドイッチも発売した。というのも、ベーシックなメニューを抑えているからこそ、よりクリエイティブなメニューを提供できているのだ。サブウェイの新商品のひとつは、プラントベース肉を使ったチキンティッカ(chicken tikka)サンドイッチだ。そして、スターバックスもプラントベースのツナサンドイッチをイギリスで発売した。
サブウェイUKはプラントベース肉のチキンティッカを発売した。
Grace Dean/Insider
これらの商品はビーガンがこれまで食べされられてきたいい加減なサラダや中途半端な豆のバーガーとはまったく違う。
これらの要素が、ビーガンブームのループを作っている。植物性食品への需要が高まれば高まるほど、レストランにとって収益性は高くなる。その結果、レストランはより多くのビーガン向けメニューを低価格で提供し、より多くの人々がその商品を試してみようと思うようになるのだ。
今後も飲食店のメニューにはプラントペースの商品がどんどん登場してくることだろう。そしてその商品がより安く、よりおいしくなることに期待してほしい。
[原文:Fast-food chains are finally taking vegan food seriously]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)