暗号資産(仮想通貨)の世界は流行り廃りが激しいとは言え、わずか1年間でこれほど変化するとは……。
Shutterstock.com
誰もが知っての通り、暗号資産(仮想通貨)の世界は流行り廃りが激しい。
とは言え、つい1年前に一世を風靡(ふうび)する人気を誇った銘柄があっという間に勢いを失う変化の速さには、さすがに驚きを禁じえない人が多い。
(個人投資家向け)リテール投資プラットフォーム「イートロ(eToro)」提供のデータから、同社が世界中に抱える顧客の間で「転げ落ちるように」人気を失った銘柄、あるいはその逆に人気ランキングを一気に駆けのぼった銘柄が明らかになった。
時価総額(=市場価格×発行数量)は暗号資産銘柄それぞれの人気を示すおおよその目安にはなるものの、さまざまなファクターが絡み合ったきわめて大雑把な指標で、しかも個人投資家、機関投資家あるいはベンチャーキャピタル(VC)の購入者区分がない。
その点、イートロは世界中に2300万人のユーザーを抱えており、そのオープンポジション(建玉)の推移をみれば、暗号資産市場におけるリテール投資の動向変化について、より詳細で的確なインサイトを得られる。
Insiderは今回、イートロが保有する2020年末時点と2021年末時点の建玉ランキングトップ20のデータを特別に提供してもらった。
イートロ(eToro)提供、2021年の暗号資産オープンポジション(建玉)ランキング。
eToro/Insider
まず目につくのは、2021年末にかけて価格低迷の続いたビットコイン(BTC)だが、実は人気が高まっていたこと。
過去に実績のある暗号資産の多くが人気を失っていく一方で、世界初の暗号資産ビットコインはその輝きを保ち、オープンポジション(建玉)は前年比223%上昇、首位を堅持している。
ビットコインがリターン面で他の多くのコインに見劣りし、もはやアルトコインのような爆発的な利益を期待できなくなっていることを考えると、驚くべき結果と言うほかない。
2021年、ビットコインのリターンは60%上昇とそこそこの伸びにとどまったが、ソラナ(SOL)は4000%超、ミームトークンのドージコイン(DOGE)は1400%超という大幅な上昇を記録している。
また、時価総額2位のイーサリアム(ETH)が、オープンポジションではエイダコイン(カルダノ、ADA)に抜かれて3位に転落していることにも注目したい。
ビットコインとイーサリアムを除けば、旧世代の暗号資産の凋落は激しい。リップル(XRP)、ステラルーメン(XLM)、ライトコイン(LTC)などは、イートロを利用する個人投資家ユーザーの支持を失いかけている。
また、ダッシュ(DASH)、イオス(EOS)、テゾス(XTZ)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ネオ(NEO)も、2021年の1年間で際立った人気の落ち込みを見せた。
一方、電気自動車(EV)世界最大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のツイートで大きな話題を呼んだドージコイン(DOGE)とその派生銘柄であるシバイヌ(SHIB)がそれぞれ4位と7位にランクインする躍進を見せた。
メタバースコインのディセントラランド(MANA)は、フェイスブックがメタ(Meta)に社名変更した2021年後半にメタバースへの関心が急激に高まり、その追い風を受けて圏外から13位にランクインした。
ブロッックチェーンのソラナ(SOL)、ブロックチェーンとオフチェーン(オラクル)をつなぐチェーンリンク(LINK)は、いずれもそれぞれのプラットフォームのネイティブトークンながら、オープンポジションのトップ20ランク入りを果たした。
イートロの暗号資産市場アナリスト、サイモン・ピーターズはこう説明する。
「2021年は暗号資産にとって記念すべき年でした。ビットコインとイーサリアムは史上最高値を何度も更新しています。中米エルサルバドルはビットコインを法定通貨として採用しました。
ビットコインの先物価格に連動した上場投資信託(ETF)も登場、機関投資家による投資先としての受け入れも進み、ビットコインはいまや投資の世界にしっかり根を下ろした形です」
(翻訳・編集:川村力)