世界有数の債券ファンド運営会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は、2022年に投資家がどう資金を配分すべきかアドバイスを提供している。
Mark Boster/Los Angeles Times via Getty Images; Samantha Lee/Insider
2022年、金融市場における最大のテーマは「不確実性」になるとみられる。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)は国債など資産購入を終了するが、それに対し投資家はどう反応するのか?
- インフレは結局いつ落ち着くのか?
- FRBは何回利上げを行うのか?
- 昨今の記録的な個人消費は減速に向かうのか、それとも好調を維持してインフレを支えるのか?
- オミクロン株は新型コロナ感染拡大の最後の波になるのか?
- サプライチェーン問題は解消されるのか?
まずインフレについて言えば、エコノミストたちはここ数カ月、インフレの勢いを見誤ってきた。
世界で最も高い分析力と影響力を持つFRBでさえ、物価上昇を正確に予測できず、結果としてよりタカ派的な(引き締めを急ぐ)金融政策に移行した。
インフレ状況(物価の動き)を把握するための指標として数多くの国で使われている消費者物価指数(CPI)は過去12カ月間で7%上昇、約40年ぶりとなる高い水準を記録している。
運用残高2.2兆ドル(約250兆円)を誇る世界有数の債券ファンド運営会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)によれば、金融・財政環境の引き締め(=正常化)によって不確実性はさらに増し、ダウンサイド、アップサイド両方のリスクを高めることになるという。
同社のポートフォリオ・マネージャー、エリン・ブラウンとジェラルディン・サンドストロムは2021年12月に公表した展望で、次のように指摘している。
「金融・財政面での刺激策が後退し、当局が民間部門に成長を委ねようとしているなかで、政策を誤るリスクが高まっていると当社ではみています。これにより、『テーマの肥大化(ポジティブな結果とネガティブな結果のかい離の拡大)』が発生する可能性があります」
2人のポートフォリオ・マネージャーはこう続ける。
「レフト・テール(ネガティブな結果をもたらすリスク)では、インフレが常態化し、中央銀行は予定より早く政策政策を引き締めざるを得なくなる結果、高水準の債務を抱える国の成長が阻害される可能性があります。
一方、ライト・テール(ポジティブな結果をもたらすリスク)では、高い貯蓄率が消費を下支えすることに加え、物理的なインフラ整備の推進が投資や生産性の向上につながり、経済成長の好循環が生まれる可能性があります」
「ライト・テール」シナリオをたどる場合のアップサイドリスクは、力強い経済成長を受けてインフレ亢進が続くことだ。
両方のシナリオに対応する最善のアプローチとして、PIMCOは2022年に投資家がどう資金を配分すべきかアドバイスを提供している。
最良の投資アイデア
大きなくくりとして、PIMCOは「デジタル化」「サステナビリティ(持続可能性)」を成長トレンドとして評価する。具体的には、グリーンエネルギーやモビリティのサプライヤー、半導体メーカーやファクトリーオートメーション機器メーカーなど。
前出のブラウンとサンドストロムは「これらのセクターが当社のポートフォリオ構築においても重要な役割を果たすと期待しています」と強調する。
「ヴァンエック半導体ETF」「iシェアーズ グローバル・クリーンエネルギーETF」「SPDR S&P Kensho Smart Mobility ETF」は、上記セクターに分散されたエクスポージャー(=投資家の保有資産が特定のリスクにさらされる割合)を取ることができる。
地域の視点では、PIMCOは米国株(特に景気循環成長セクターの株式)と日本株をオーバーウェイト(=配分比率を基準より高くすること)にしている。
一方、欧州株については、エネルギー価格高騰のような不確実性やオミクロン株感染拡大の懸念などを理由に、短期的に「大きな下方リスクが存在」と弱気な見方をしている。
ただし、米金融大手JPモルガンのグローバル調査部門責任者ジョイス・チャンや、米資産運用会社クロスマーク・グローバル・インベストメンツのボブ・ドール最高投資責任者(CIO)のように、米国株よりグローバル株に積極的なスタンスのエコノミストもいる。
さらに、PIMCOのブラウンとサンドストロムは、アジアのエマージング(新興)市場、特に地域や世界の経済成長の基盤となるハードウェア技術および機器に特化した企業をオーバーウェイトにしている。
「iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット・アジアETF」は、新興アジア地域の大型・中型株市場に分散投資する設計となっている。
インフレをどう攻略するか
PIMCOはインフレが高止まりする可能性があると予測し、そのヘッジ手法にも言及している。
向こう1年間は物価上昇のペースが鈍化すると予想しつつも、高い確信度をもって予測するのが難しいと認め、引き続きインフレに備えることを推奨する。
「ブレーク・イーブン・インフレ率は大幅に上昇していますが、今後数カ月間にライト・テール(ポジティブな結果をもたらすリスク)が実現する可能性があることを踏まえると、適切なインフレ・リスクプレミアムを十分に織り込んでいるとは言えないと考えています」
そのため、同社は「強力な価格決定力があり、価格上昇を通じてインフレの恩恵を享受できるとみられる世界的な海運会社など」の銘柄を購入することをひとつの方法としている。
もう一つの方法は、「米国財務省物価連動債(TIPS)」を購入することという。
「ソニックシェアーズ・グローバル・シッピングETF」「シュワブ米国TIPS ETF」は、上記の海運会社などに分散したエクスポージャーを提供している。
(翻訳・編集:川村力)