仮想通貨は再び冬の時代を招く可能性のあるいくつもの課題があるとUBSのアナリストは述べている。
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- UBSのアナリストは「仮想通貨の冬」がやってくることを示唆する要素が増えていると警告している。
- 通貨とインフレのヘッジとしてビットコインが採用されるケースは減少しており、その技術にはいくつかの欠陥があるという。
- ビットコインは、アメリカ連邦準備制度理事会の金利引き上げに対する投資家の動きを受けて急落している。
投資銀行のUBSのアナリストは、暗号資産(仮想通貨)から輝きを奪う暗雲が漂う中、仮想通貨市場が再び価格暴落の「冬」を迎え、何年も回復しない可能性があると警告している。
2022年のアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)による利上げは、多くの投資家にとってビットコインなどの仮想通貨の魅力が損なわれることになるだろうと、ジェームズ・マルコム(James Malcolm)が率いるUBSのアナリストは2022年1月14日の顧客向けのメモで述べている。金利の上昇が、ビットコインが代替通貨や富の貯蔵手段として優れているという主張に水を差すことになると彼らは言う。
さらに、その他の要因として、この技術には多くの欠点があること、規制によって業界の発展が阻害される可能性があることが挙げられている。
FRBが2022年に3回以上の利上げを行うとの見方が強まり、ビットコインの価格は低迷している。時価総額でトップの暗号通貨は4万ドル台で、2021年11月につけた6万9000ドル近くの過去最高値をはるかに下回っている。
UBSのアナリストは、事態がさらに悪化して資産価値が下落し、その後、長期間復活しない「暗号の冬(crypto winter)」が到来すると見ている。
前回の「暗号の冬」は2017年末から2018年初めにかけて発生し、ビットコインは約2万ドルから1年以上かけて4000ドル以下にまで暴落し、多くの投資家が仮想通貨への関心を失う原因になった。
中央銀行がインフレに対処するために動いているとすれば、投資家が価格上昇に対するヘッジとしてビットコインを保有すべきだという議論にダメージを与えることになる、とマルコムらは述べている。中央銀行の施策が2020年と2021年に仮想通貨を上昇させた重要な要因だったのでなおさらだ。
2021年、アメリカの金利を低く抑えたFRBは、高騰するインフレに対処するため、2022年は少なくとも3回の利上げを実施する可能性があると見られている。
また、アナリストによると、暗号投資家の間では、ビットコインは非常に不安定であり、供給量が限られているために柔軟性に欠けるので「法定通貨よりもよいもの」ではないという認識も芽生えているという。
価格の急落を招きかねないもう一つの理由は、暗号技術の欠点だ。
例えば、ブロックチェーン技術は、ネットワークのメンバー全員が取り引きを監視し、検証する必要がある分散型の設計のため、スケールアップが困難であるとUBSのアナリストは述べている。
当局による規制が3つ目の理由だという。彼らは、暗号ネットワークにおける投機の横行は「必然的に、消費者を守り、金融の安定性を保護するための監視の強化を招く」と述べている。
「高騰するステーブルコインや(分散型金融の)プロジェクトは、今後数カ月で規制当局による大きな後退に直面することがほぼ確実だ」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)