Steve Jennings/Getty Images for Activision
- マイクロソフトが発表した690億ドルのアクティビジョン・ブリザードの買収は「賢い取り引き」だと、ウェドブッシュ証券のアナリストは評価している。
- 「この買収は、マイクロソフトの広範なゲームへの取り組みとメタバースへの進出を加速させるだろう」
- これが実行されれば、2016年にデル・テクノロジーズが行った670億ドルのEMC買収を上回る、過去最大のテック系買収案件になる。
マイクロソフト(Microsoft)による690億ドル(約8兆円)規模のアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)買収は、ソフトウェア大手のメタバース進出を助ける「賢い取り引き」だと、ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス(Dan Ives)が2022年1月18日のメモで述べている。
この合併が実現すると、2016年にデル・テクノロジース(Dell Technoligies)がEMCを670億ドルで買収したのを上回る、ハイテク業界史上最大の取り引きになることから、18日にアクティビジョンの株価は38%も急騰した。
当局に承認されれば、マイクロソフトはコール オブ デューティ(Call of Duty)、ウォークラフト(Warcraft)、キャンディークラッシュ(Candy Crush)など、人気の高いビデオゲームシリーズの所有権を得ることになる。
これは、マイクロソフトの収益構造をビジネスソフトウェア販売から多様化させる「積極的なコンシューマー分野の買収」だとアイブスは述べ、サティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOがこれまで、慎重なコンシューマー戦略を行ってきたことを指摘している。
しかし、職場でのハラスメント訴訟や企業文化への懸念により、アクティビジョンの株価が40%下落したことは、マイクロソフトにとって「コンシューマー戦略を推進する」ための「チャンス」になったとこのメモには書かれている。
マイクロソフトによるゲーム会社の買収は今回が初めてではなく、2021年にはゼニマックス(Zenimax)を75億ドルで、2014年にはマインクラフト(Minecraft)を25億ドルで買収している。
「アクティビジョンの買収は、マイクロソフトのより広範なゲーム分野への取り組み、そして最終的にはメタバースで最初にマネタイズが期待できるゲームよって同社のメタバースへの移行をジャンプスタートさせるのに役立つだろう」とアイブスは説明している。
また、当局による規制の観点から見ると、マイクロソフトはすでに2000年に反トラスト規制当局と一度対立していることから、アップル(Apple)やアルファベット(Alphabet)がアクティビジョンを買収しようとした場合よりも買収が成立する可能性が高いという。
「反トラストの観点からは、マイクロソフトは他のハイテク企業ほど監視の目を向けられておらず、ナデラCEOは、他の企業が規制の目にさらされ、このような資産を狙うことができない中で、(コンシューマー分野に)大きな賭けをするチャンスを得たのだ」とアイブズは述べている。
もしこの買収が規制当局によって承認されなければ、マイクロソフトはアクティビジョンに30億ドルという高額な違約金を支払うことになる。
「最終的には規制当局に承認されるだろうが、この規模のハイテク業界の買収案件では、アメリカとヨーロッパの両方に、いくつかのスピードバンプ(車を減速させる構造物)が存在するものだ」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)