noifulの公式サイトより。パナソニックは2つの賃貸向けサブスクサービスを発表した。
撮影:Business Insider Japan
パナソニックが賃貸住宅のオーナーや管理会社を対象にした新サービスを開始する。家電をパッケージにして貸し出す月額制サブスク「noiful ROOM」と、家電が使いやすい導線に物件をリノベーションし、入居者の募集などマネジメントまで行う「noiful LIFE」だ。
背景には、住み替えによる家電の廃棄やリサクル率などの社会問題がある。パナソニックが目指す「サーキュラーエコノミー」とは。
入居者像に合わせた家電をパッケージにしてサブスク
「noiful ROOM」の美容家電パッケージの例。
提供:パナソニック
パナソニックくらし事業本部・くらしアプライアンス社は1月19日、同サービスについての記者会見を行った。パナソニックが家電のサブスクを行うのは意外にも初めてだという。
「noiful ROOM」では賃貸物件のオーナーや管理会社と相談して、立地や間取り、家賃や入居者像に合わせてパナソニックが家電のパッケージをプランニングして提供。オーナーは家電つき賃貸物件として販売し、入居者が管理会社に支払う家賃の一部がパナソニックの収益になる仕組みだ。
「noiful ROOM」のビジネスモデル。
出典:パナソニック
パッケージは月額およそ5000円から2万円まで。
- 先進的なライフスタイルを好む人向けのIoT家電パッケージ
- 料理好きな人向けの最先端の調理家電が揃ったパッケージ
- 美容にこだわりたい人向けの美容家電パッケージ
など、さまざまなパターンがある。
修理や交換ゼロ円。8年後に20万戸の契約目指す
提供:パナソニック
「noiful ROOM」の家電はもちろん全てパナソニックの製品だ。
家電の配送・設置、入居者からの問い合わせや修理・交換、退去後の家電クリーニングは、全て無償で対応するため、
「入居者様は『家電の使い方が分からない』『修理・交換などの突然の出費』という不安から解放されます」
とパナソニックの担当者は言う。
「noiful ROOM」「noiful LIFE」共に首都圏からサービスを開始し、将来的には日本全国での展開を目指す。
2024年には1万2000戸、2030年には20万戸の契約を目標にしており、「50億円の利益目標をできるだけ早期に達成したい」(同担当者)と意気込む。
パナソニックはキッチン家電と厳選食材を月額3980円(税込、送料込)で提供する「foodable」を2021年から開始しているが、
「foodableは立ち上がりでも予想の3倍以上の契約があった。サブスク市場が大きくなっている手応えがあり、noifulについても少し野心的な目標だが可能だと思っている」
と語る。
家電の環境負荷に対して「サブスクだからできること」
提供:パナソニック
今回のサブスクサービス立ち上げの背景には、家電が抱える環境問題があった。同社によると、年間に廃棄される家電は1830万台、リサイクル回収率は61%だ。
「SDGsの重要性が叫ばれる中で、家電の廃棄が社会問題になっています。その要因の1つが、住み替えの際にまだまだ使える家電も捨てられていることです。
売り切りではメーカーは廃棄まで関わることはできません。でもサブスクという形なら、お客様と繋がり続けることができる。契約期間が終わった後も責任を持って回収し、リサイクルします。
そうして家電全体のサーキュラーエコノミーにつなげていくことが、これからの製造業の大きなミッションだと考えています」(パナソニック担当者)
客と繋がり続け、循環型社会を目指すパナソニックの家電サブスク。環境問題への関心も高まる中、市場にどう受け入れられるか。
(文・竹下郁子)