REUTERS/Carlos Garcia Rawlins
- 北京で開催される冬季オリンピックのすべての参加者は、到着前に専用アプリ「MY2022」をダウンロードする必要がある。
- このアプリは、中国に批判的な言葉やウイグル弾圧を指摘する言葉など使用禁止にできることが、シチズンラボの調べで判明した。
- また、個人情報の扱い方に重大なセキュリティ上の欠陥があると報告されている。
北京オリンピックの参加者がダウンロード必須の公式アプリには、2000以上の単語やフレーズを検閲する機能があることが、デジタル・フォレンジック分析で判明した。
中国当局はこのアプリ「MY2022(冬奥通)」を配布し、参加者の健康状態の把握、チャットルームの提供、競技に関する情報提供を行うという。すべての選手と来場者は、このアプリをダウンロードする必要がある。
しかし、トロント大学のシチズンラボ(CitizenLab)が2022年1月18日に発表した分析によると、このアプリにはセキュリティ上の欠陥があり、また「illlegalwords.txt」という名前の機能が含まれているという。
この禁止語句のリストには、「中国で政治的にデリケート」だと考えられている2442のキーワードが含まれていた。なお、この機能は現在、アプリ上ではアクティブにはなっていないという。
中国語の禁止語句の例としては、「China evil(中国は悪)」や「Chinese are all dogs(中国人はみんな犬)」などが挙げられている。ウイグル語の「forced patrols(強制警ら)」と「forced demolition(強制破壊)」も含まれており、中国が2016年から再教育キャンプでイスラム教徒が大半を占めるコミュニティのメンバー100万人以上を拘束しているとされる新疆ウイグル自治区におけるモスクの取り壊しを対象にしているようだ。ウイグル語の「the Holy Quran(聖なるコーラン)」という言葉もそのリストに入っている。
中国のアプリやソーシャルメディアサイトには、1989年の天安門事件への言及をインターネットから削除したり、COVID-19の内部告発者を黙らせるなど、コンテンツの検閲の長い歴史がある。
ライブストリーミングアプリの「YY」とメッセージングプラットフォームの「WeChat」は、すでに多くのウイグル語を検閲していると、シチズンラボの報告書は指摘している。
報告書は、「MY2022」のユーザーは「政治的にデリケート」だと判断したコメントを報告することもできるとも述べている。
「この報告機能は、中国のアプリとしては目新しいものでも、珍しいものでもない。ただし、透明性のないコンテンツ削除や悪意のある通報につながる可能性はある」
オーストラリアのサイバーセキュリティ企業、Internet 2.0は1月18日、大会に参加する選手たちに対して、使い捨てのスマートフォンを持参するようにアドバイスした。
「彼らが母国で使用しているデバイスのSIM情報を保護するためだ」
また、シチズンラボの報告書には、このアプリのユーザーの個人情報の扱い方について、いくつかのセキュリティ上の欠陥があることが強調されている。
カナダのオタワにある中国大使館は1月19日、シチズンラボの報告書は正確ではないと述べた。
中国国営の環球時報(Global Times)によると、大使館の広報担当者は「サイバーセキュリティについて心配する必要はない」と述べたという。
「中国はこれまでもあらゆる種類のサイバー攻撃とサイバーストーカー行為に反対してきたし、今後も取り締まるつもりだ」
国際オリンピック委員会(IOC)は、専門家が「重大な脆弱性はない」と評価したと述べ、アプリを擁護していると、ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle) が報じている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)