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ネット上には高額な報酬をうたう広告も… 卵子提供の経験者は「手っ取り早くお金を稼げる行為ではない」と警鐘

妊婦

超音波検査を受ける女性。ドナーから卵子と精子の提供を受けて妊娠した。

Carolyn Van Houten/The Washington

  • ソーシャルメディアでは、卵子ドナーの広告が最大27万5000ドル(約3100万円)の"人生を変える報酬"につながるとうたっている。
  • ただ、関係団体や卵子提供の経験者はいずれも、そのプロセスを"簡単にお金が稼げる方法"と錯覚させるべきではないと話している。
  • ホルモンの自己注射から厳しい検査まで、卵子提供がどのように進められるのか見て行こう。

卵子提供ビジネスの複雑さはその名前に表れている。"お金"と"利他"の絶妙なバランスの上に成り立つ卵子提供ビジネスでは、報酬がドナーのモチベーションになり過ぎてはいけない。

だが、実際は多くのケースが"報酬のため"だ。"提供"ではなく"仕事"だ。

身体的な意味でも精神的な意味でも、卵子提供は「手っ取り早くお金を稼げる行為ではない」と、卵子を4回提供したことがあるジーナ・マリー・マドウさんはInsiderに語った。

「お金のためにあらゆる努力をするのです」

アメリカのこの10億ドル産業における"お金"の役割は、2016年の集団訴訟 —— 1回あたり1万ドル(約110万円)の報酬の上限を撤廃するよう卵子ドナーたちがアメリカ生殖医学会(ASRM)を訴えた —— で決定付けられた。

その結果、ドナーは今日では1回あたり1万ドルを大きく超えて稼ぐことができる。グーグルをちょっと検索したり、ソーシャルメディアをスクロールすれば分かるように、卵子ドナーの広告は数十万ドルの報酬をうたっている。Insiderが取材した2人のドナーを含め、多くの女性たちがそのお金で学生ローンを返済したり、大学院に進学することを選んでいる。

「卵子ドナーとして最大4万8000ドルを受け取りつつ、家族の夢を叶える手伝いができます」とFairfax Egg bankのインスタグラムの広告はうたっている。

広告

卵子ドナーの広告はユーザーの注意を引くために大きな金額をうたっているが、必ずしも全てを語っているわけではない。

Facebook Ad Library

広告にはピンクのセーターとパールのヘアクリップを身に着けた若い金髪女性が登場する。笑顔で電話に出ると、すぐにオレンジ色の薬瓶が届き、女性がそれを楽しそうに振って車のキーを握りしめると… じゃじゃーん! 小切手が届く。

こうした広告は虚偽ではないかもしれないが、全体像を見せてはいないし、誤解を招きかねないと、卵子提供・代理出産を仲介するConceiveAbilitiesの法律サービス部門の責任者でもあるマドウさんは指摘する。広告がうたう報酬はしばしば、1回ではなく、複数回の提供を前提としている。

卵子提供や代理出産の倫理基準の策定に取り組んでいる非営利団体Society for Ethics for Egg Donation and Surrogacy(SEEDS)は、金銭的な合意が「広告を支配したり、広告のその他の要素に必要以上の注目を集めるための表現形式」であるべきではないと話している。

ただ、マドウさんによると、「(広告は)自分たちのウェブサイトに女性を引き付けるための正しい方法を探す、デリケートなバランス」の上に成り立っているという。

「ドナー側がきちんとした質問をするかどうか、仲介業者が女性に対して誠実に説明し、どのようなことに関わろうとしているのか理解させられるかどうかにかかっています」

1回または複数回あたり10万ドルの報酬を約束する広告は、一般的に極秘のクライアントもしくは特殊な条件に合致するドナーを探している個人への提供を呼びかけるものだ。

「こうした広告は、最も条件に見合ったドナーを引き付けることを目的にはしていないとわたしは思います」とCircle Surrogacyの卵子提供担当の責任者レイチェル・キャンベル(Rachel Campbell)氏はInsiderに語った。

「お金に関心があるドナーを引き付けるためのものでしょう」

自分がどのような契約を結ぼうとしているのか、きちんと理解することは最終的にはドナー自身の責任だ。Donor Conciergeの創業者ゲイル・セクストン・アンダーソン(Gail Sexton Anderson)氏によると、仲介業者側としては性格検査や心理鑑定の結果が、そのドナーが精神的に卵子提供の準備ができているかどうかを判断する助けになっているという。

ただ、卵子提供が与える長期的な健康への影響についてはまだよく分かっていないと、アンダーソン氏は付け加えた。この分野の研究はあまり進んでいないという。

卵子を提供した後、乳がんや不妊、結腸がんになったと報告している女性たちもいる。アメリカでは科学者たちが長年、卵子提供者の登録義務の導入やリスクをよりよく理解するための長期的なデータ収集を訴えているものの、実現には至っていない。

卵子ドナーになるために必要なこと

プロセスを開始するにあたってまず最初に必要なことは、ドナーの申請が承認され、事前審査を通過することだ。これには遺伝子検査、生殖能力検査、医学的なスクリーニング、血液検査、超音波検査、メンタルヘルスの評価が必要になる。

承認されたら、ドナーはこれから親になろうとする人とマッチするのを待つ。ドナーの特性に対してどのくらい「需要があるか」次第で、このプロセスは数日で済むこともあれば、数カ月かかることもある。仲介業者を通じて卵子提供を受けようとするクライアントは、学位、髪や目の色、身長、宗教といったさまざまな条件でドナーを絞り込むことができる。

大半のクライアントは「できるだけ自分に似ている人を探しています」とアンダーソン氏は説明した。

「そうすることで、未来の親は多少なりとも安心したり、自分たちにはどうにもできないことの主導権を握っていると感じられるのでしょう」

マッチングのプロセスは、匿名から半匿名、実名までさまざまだ。卵子提供を1度経験したエレノア・ホフタリング(Eleanor Houghtaling)さんは匿名での提供を選択したとInsiderに語ったが、マドウさんは自分が手助けしている家族について知ることが卵子提供の魅力だと話している。

ドナーとクライアントがマッチしたら、サイクルが始まる。卵子提供のサイクルは一般的に、2~3週間に及ぶ毎日のホルモンの自己注射の後、約1カ月のスクリーニングおよびモニタリングの予約が続く。

ドナーからの採卵が医学的にも法的にも承認されたら、手術日が決まる。Parents.comによると、当日、ドナーは軽い全身麻酔下に置かれ、専用の針を膣壁に刺して卵巣から平均15~20個の卵子を採取する。

「プロセスの中で一番大変なのは、肉体的な負担です」とマドウさんはInsiderに語った。

「ホルモンの自己注射や全身麻酔下での手術は、楽しくはありません」

マドウさんは続けた。

「プロセスを終えるまでは2~3カ月ですが、生涯影響を持ち続けるコミットメントです」

[原文:Some egg donor agencies advertise $275,000 paychecks on social media but the rigorous process is a far cry from making a 'quick buck'

(翻訳、編集:山口佳美)

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