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コオロギの工場生産だけはしない。1万人の農家と目指す「世界で最もエコな食糧インフラ」【エコロギーCEO・葦苅晟矢5】

葦苅晟矢・エコロギーCEO

撮影:伊藤圭

2019年、コオロギの飼育に適した温暖な気候を求めてカンボジアに腰を据えたエコロギーCEOの葦苅晟矢(28)は、緑豊かな山村でコオロギ農家と出会い、彼らが持つポテンシャルの大きさを見出していく。

ローテクでも、一軒あたりすでに1万匹を量産できていた。ただし、生産農家によって生産量にはばらつきがあった。それを「確実に1軒あたり10万匹、つまり50キロまで持っていける」と葦苅は直感した。

「同じ対面積で20キロ取る農家もあれば、このおっちゃんは10キロしか取れないんだなとか。そこをちゃんと底上げしてあげて、彼らと一緒に標準化していこうと。僕らの役目がそこにあるんじゃないかと見えてきたわけです」(葦苅)

生物学の知見で収量アップ狙う

コオロギの飼育

エコロギーではコオロギを飼育できるキット(写真における箱のような物体)を契約農家に与え、収穫を買い取る。

提供・エコロギー

カンボジアの農業は、2期作または3期作の米作りが主流だ。収入があるのは年に2〜3回。それに対して、コオロギの場合は卵から育てて45日で育つ。年に8〜10回は収穫できる上、エコロギーがカンボジアの卸売バイヤーが買い取る価格の相場より少し高めの価格で現金で買い取るのだ。

作業効率の良いコオロギ生産は、カンボジアの低所得農家にとって副業として始めやすく、貧困問題にも貢献できると考えた。さらに早稲田大学を筆頭にアカデミー界のネットワークを持つ葦苅らが、生物学の知見を使ってコオロギによいエサや適切な飼い方を見出し生産性を高めれば、収量はさらに上がると見込んでいる。

葦苅はまず、数軒のコオロギ農家とつながった。そこから徐々に委託先を広げ、現在は50軒ほどのネットワークを構築している。カンボジアでこの規模で組織的にコオロギ農家をまとめているのは、エコロギーが初めてだという。

2019年から2年近くの月日を費やし、2020年には年間1トンのコオロギを生産できるまでになった。さらに、安心安全な食の観点から生産農家への技術指導を徹底し、日本の加工技術を導入。2021年には日本製の厳格な食品衛生基準をクリアしたコオロギ食も生産できるまでになった。

葦苅には自負がある。

「収量としては今のところ世界でトップクラス。アメリカの企業がコオロギ生産の“ミニ工場”の建設を計画しているという情報がありますが、僕らは“工場”に負けないくらいの収量をすでに生産できている。今後、1万人のコオロギ農家を束ねれば、僕らはロボットを導入しなくても競合に勝てると考えています」

「スターコオロギ農家」も誕生

スターコオロギ農家

エコロギーが「スターコオロギ農家」と呼ぶシノン一家は、一度に200キロのコオロギを生産する。

提供・エコロギー

今では「スターコオロギ農家」も生まれている。エコロギーの委託農家で最も収量を上げているのが、シノン(38)だ。彼は以前、出稼ぎに出ていたが、上手くいかずに戻って農業に専念。子どもたちを養わなければならず、家計のやりくりに苦慮したシノンの妻が働く手段を求め、コオロギ生産に目をつけた。

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