仮想通貨に冬が来るのではないかという懸念が高まっている。
FTiare/Getty Images
- FRBが市場と経済への支援を削減する中、暗号資産に「氷河期」が到来するかもしれない。
- 仮想通貨の価格は低迷しており、1月下旬にビットコインは半年ぶりの安値に転落した。
- FRBが金利を引き上げ、規制の強化や技術に関する疑念が消えないため、その見通しは暗いかもしれない。
暗号資産(仮想通貨)界隈は日増しに寒くなっている。ビットコイン(BTC)は2021年11月のピークから劇的に下落し、2022年1月下旬には3万8000ドルを下回る6カ月ぶりの低水準まで落ち込み、取引量も低迷している。
一部の投資家は、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の突然の金融引き締めで、「暗号の冬(crypto winter)」(価格が低下して1年以上回復しない)に突入することを懸念している。
しかし、事態はそれよりも悪くなる可能性がある。実際には仮想通貨は価格が何年も低迷し、多くの投資家が興味を失う「氷河期」に向かっているかもしれないと、インベスコ(Invesco)のアセットアロケーション・リサーチのグローバル責任者、ポール・ジャクソン(Paul Jackson)はInsiderに語っている。
FRBの政策だけではない。多くの潜在的投資家は、仮想通貨の技術の堅牢性や、その発展を阻害しかねない規制について、疑念を抱き始めているのだ。
FRBは暗号資産をフリーズさせる可能性がある
2021年初め、「債券王」ジェフ・ガンドラック(Jeff Gundlach)は、ビットコインはコロナウイルス危機の際にFRBとアメリカ政府の資金の「激流」によって押し上げられた「刺激資産」だと述べた。
しかし、それから1年も経たないうちに、FRBは高騰するインフレに対処するため、資金の蛇口を閉めようとしている。2022年には4回の利上げが行われると市場関係者は予想している。
その結果、債券の利回りが急上昇し、収益性の低いハイテク株や仮想通貨が打撃を受けている。ノーリスクの債券のリターンが高まれば、この2つの投機的資産の魅力は大きく低下するだろう。
しかし、インベスコのジャクソンによれば、債券の利回りはまだ上昇することが予想され、さらなる痛みが待っているかもしれないとのことだ。
「中央銀行と政府は、これらの市場を活性化させる役割を果たしてきたが、その政策が反転すれば、市場を落ち込ませる役割を果たすだろう」とジャクソンは言う。
ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)の創設者、マイク・ノボグラッツ(Mike Novogratz)のような暗号資産を推す人でさえ、今後の仮想通貨は下落圧力がかかる可能性が高いと述べている。
「氷河期になる可能性もあると思う」とジャクソンは言う。
「もし、FRBによって作られたこれらの条件が取り除かれれば…見通しは変わるだろう」
規制と技術に関する長年の疑問
もちろん、多くの暗号通貨支持者はそれには同意しない。投資会社Panteraのダン・モアヘッド(Dan Morehead)CEOは、暗号ネットワークの用途が膨らんでいるため、このセクターは堅調に推移するはずだと述べている。
彼は特に、暗号技術を活用して仲介者を介さずに金融活動ができる分散型金融(DeFi)の伸びを指摘した。
しかし、多くの投資家は納得しておらず、特に心配なのが行政当局による規制だ。暗号資産の中心地でもあるロシアの中央銀行は、マイニングと取引の全面禁止を提案し、仮想通貨の売りに拍車をかけた。欧州の規制当局も規則を強化しようとしている可能性があり、スペインとイギリスは暗号資産関連の広告に規制をかけている。
UBSの外国為替戦略責任者であるジェームズ・マルコム(James Malcolm)はInsiderに対し、規制の強化と並んで、暗号技術に関する問題が暗号の世界を再び冬に引きずり込む要因の1つになる可能性があると考えている、と語った。
マルコムは、メッセージングアプリ「Signal」の創業者のブログ記事を引用し、ブロックチェーン技術は不便であり、分散化の実現にはほど遠いと結論付けている。一方、イーサリアム・ネットワークのユーザーは混雑と高い取り引き手数料に憤慨しており、これを解決するのは非常に困難であることが判明している。
「テクノロジー業界の多くの人が、暗号技術が有効かどうかを疑っているようだ。もし、本物の次世代の技術だということが明らかであるなら、なぜ多くの巨大テック企業が参入しないのだろうか。なぜグーグル(Google)はそこに大規模な投資をしないのだろうか」
[原文:Forget a bitcoin winter — a crypto 'ice age' might be coming as the Fed ends the easy-money era]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)