Associated Press
- アナリストによると、ロシアとウクライナの間の緊張が続けば、エネルギーと金属の価格はさらに上昇するという。
- ロシアは何週間もの間、ウクライナの国境近くに数千人の軍隊を集結させている。
- ロシアは、石油とパラジウムなどの金属の主要な生産国だ。
ロシアとウクライナの対立が激化し、アメリカとその欧州の同盟国も巻き込んでおり、石油と金属の価格は上昇幅をさらに拡大する見通しだ。
ロシアがウクライナに侵攻するのではないかという懸念は数週間前から高まっており、最近の株式市場の乱高下の一因となっている。ロシアはウクライナの国境に数千の軍隊と大砲を集結させ、緊張はさらに高まる兆しを見せている。そして、アメリカ国防総省はヨーロッパに展開するために8500人の兵士に警戒態勢を取らせ、ロシアがウクライナ位に侵攻すれば悲惨な結果を招くと警告している。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者、マーク・ヘーフェル(Mark Haefele)は、アメリカ株が顕著に上昇した1月24日の夜遅くに発表したメモで、「ロシアとウクライナの現在の緊張状態の不確実性」は今も株式の下落圧力要因になっていると述べた。
同氏は、2014年のロシアのクリミア侵攻が世界市場に及ぼした影響は限定的だったと指摘する。しかし、主要なコモディティ(商品)は地域紛争から大きな影響を受けることが多い。
石油と天然ガス
ロシアは世界有数の石油生産国だ。ブレント原油とウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の価格は、戦争への懸念が高まる中、2014年10月以来の高値をつけている。
ヘーフェルは、「市場の需給バランスがすでにタイトになっている時に、石油と天然ガスの供給に混乱が生じると、短期的に価格が大幅に上昇し、世界の経済活動に支障をきたす可能性がある」と述べた。
JPモルガンのエコノミストは先週、ロシアとウクライナの緊張関係が供給危機につながれば、ブレント原油の価格は第1四半期中に1バレル150ドルまで高騰する可能性があると指摘した。
ロシアは天然ガスの主要供給国でもある。欧米諸国は、ロシアがウクライナに侵攻すれば制裁を加えると脅している。そして現在建設中の、ロシアからバルト海経由でヨーロッパに天然ガスを供給する新しいパイプライン、ノルドストリーム2の事業停止も考えられ、ヨーロッパへの天然ガスの供給減を誘発する可能性があると、ジェネラリ・インベストメンツのマクロ&マーケットリサーチ責任者のトーマス・ヘンペル(Thomas Hempell)は1月25日のメモで述べている。
金属
一方、白金族元素、特にパラジウムは地政学的緊張から利益を得るだろうと、HSBCは述べた。
「ロシアは世界最大のパラジウム輸出国で、世界第2位のプラチナ輸出国でもあり、貿易中断の可能性が低くても、強気な相場になる」とHSBCの貴金属チーフアナリスト、ジェームズ・スティール(James Steel)は先週のメモで述べている。
パラジウムの価格は2022年に入って25日までの間に約15%上昇し、プラチナも7%近く上昇した。
また、緊張状態が続いていることは、安全資産としての金の需要を支えており、銀も最近高値を更新していると、彼は付け加えた。
穀物
ロイターが引用した国際穀物協会のデータによると、ロシアは世界最大の小麦輸出国であり、ウクライナは小麦輸出で4位、トウモロコシ輸出で3位になると予測されている。
両国はカザフスタン、ルーマニアとともに黒海の港から穀物を出荷しており、アメリカがロシアと対峙する際に大きな火種となる可能性がある。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)