ヴァンゲローさんが投稿した給食の写真。学校は保護者や生徒と協力して、より食欲をそそるメニュー作りに取り組んでいるという。
Courtesy of Chris Vangellow
- クリス・ヴァンゲローさんの4人の子どもたちは、味気ない給食とその少ない量に不満を持っていた。
- ヴァンゲローさんが給食の写真を投稿したところ、それが評判になった。
- 今、彼と彼の息子はこの状況を変えるために活動している。管理栄養士は、親は給食に対して声を上げるべきだと話している。
クリス・ヴァンゲロー(Chris Vangellow)さんの4人の子どもは、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で自宅でリモート学習をしていたが、対面学習に戻ったときに給食に異変があることに気付いた。現在、2021-22年度の連邦政府の方針で、給食が無料になってはいるが、ヴァンゲローさんの子どもたちは、「量が少なくなっていて、内容も食欲をそそらないようなものになってきている」と父に報告した。
ヴァンゲローさんはそれを聞いて、13歳、14歳、15歳、16歳の子どもたちに、特にスポーツをする日には学校の給食を補うために家から軽食を持って行くように勧めた。しかしヴァンゲローさんは子どもたちが言ったことが頭から離れなかった。
「実際はどれほどひどいものなのかと考えるようになった」と彼はInsiderに語った。
2022年1月12日、ヴァンゲローさんに息子から給食の写真が送られてきた。それには貧弱なチキンナゲット4個と、白米、乾燥したようなニンジンが写っていた。ヴァンゲローさんは黙っていることができず、その写真をフェイスブック(Facebook)に投稿し、瞬く間にその写真は拡散された。
「これは決して私の子どもだけが学校からまともに食事を与えられていないということではない。すべての子どもたちに関することなのだ」とヴァンゲローさんは話す。
彼の住むニューヨークには低所得世帯の子どもが多く、栄養の大部分を学校給食に頼る傾向がある。だが現在給食で提供されているものは、スポーツの練習や課外活動はおろか、学校生活を送るのにも十分ではないとヴァンゲローさんは話す。
理想的な給食とは
ホート・アンド・ヘルシー・リビング(Haute and Healthy Living)のオーナーで管理栄養士のエリシア・カートリッジ(Elysia Cartlidge)さんは、栄養バランスのよい食事は、子どもたちの健康や学校での活動に不可欠だと話す。
「子どもは成長、発達期なので、体や脳のために、十分なエネルギーと栄養素が必要だ」
栄養的に見ればヴァンゲローさんがフェイスブックに投稿したランチには、タンパク質、穀物、野菜、乳製品が含まれているため、要件を満たしている。しかし、それは別の話だ。
「子どもはもちろん、大人でもあの給食を食べたいとは思わないだろう」とカートリッジさんは言う。
生涯続く健康的な食事パターンを確立するために、子どもたちは食欲をそそるような健康的な食べ物を必要としている。理想的なのは、少なくとも3つの食品群を使った、生き生きとした、おいしくてカラフルな給食だとカートリッジさんは話す。学校給食の栄養価は過去10年間で改善されたという調査結果が示されていたが、アメリカ農務省(USDA)によって最近、学校はナトリウムが多く、栄養価の低い給食を提供してもよいと変更されたという。
より良い学校給食のための解決策
ヴァンゲローさんが写真を投稿した後、彼の息子の通う学区の当局は「写真に写っているよりも果物か野菜を1品多く、ナゲットをもう1つ追加してもよい」との回答を出した。
学区側は、保護者や生徒が学校給食に満足しておらず、ヴァンゲローさんのメッセージが共感を呼んでいることも認めている。同学区は学校給食をより魅力的でおいしいものにするために、保護者や生徒などからなる委員会を組織することを決めた。ヴァンゲローさんと彼の息子もこの委員会に参加する予定だ。
また、ヴァンゲローさんの子どもたちは、すでに給食に変化が見られることに気づいているという。
「うちの子どもたちも、私の友人の子どもたちも、ここ数日で給食がよくなったと言っている」とヴァンゲローさんは話す。
「そう考えると、何かが間違っていたのだと思う。そのことが注目され、それを正すことができた」
栄養士のカートリッジさんは、親は子どもと情報を交換し、学校給食で何が提供されているかを親自身も学ぶことを勧めている。もし地域の学校給食システムをよりよいものにしたいと思うならば、彼女は、シェフ・アン財団(Chef Ann Foundation)のリソースを活用して地域の組織を作り、よりよい学校給食が提供されるように提唱することを勧めている。
ヴァンゲローさんは、今回の経験から、声を上げることで物事を実際に変えることができることを知ったという。
「ひとりの人間のたったひとつの投稿が、物事を大きく動かす可能性がある」と彼は話した。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)