インスタグラム(Instagram)で「いいね」数を増やすには、単純な公式に従えばいい——。
ロチェスター工科大学ソンダース・カレッジ・オブ・ビジネス(Saunders College of Business at Rochester Institute of Technology)でマーケティング論を教えるヘッシュ・オーバーゴア(Gijs Overgoor)助教授は、その答えを探すのに5年の歳月を費やした。
例えば、次の2枚の写真を見てほしい。インスタグラムで「いいね」を多く稼げるのはどちらだと思うだろうか。
提供:Gijs Overgoor
Diff Miller Style and Design
答えは後ほど明らかにするとして、オーバーゴア助教授はインスタグラムの画像に対する評価を予測するアルゴリズムを開発するため、15万件以上のインスタグラムの投稿を分析した。
『インターナショナル・ジャーナル・オブ・リサーチ・イン・マーケティング(International Journal of Research in Marketing)』2021年12月号に発表された最終的な研究成果(共著)によると、色や明度などの要素が極端ではないビジュアルが最も高い評価を受けるという。
オーバーゴア助教授はInsiderの取材に、細かすぎたり色が多すぎたりすると負担がかかるが、あっさりしすぎても面白くない写真になってしまうと語る。
しかし被写体の数や配置については逆で、シンプルにするなら思い切りシンプルに、大胆にするなら思い切り大胆で凝ったデザインにしたほうがいいと言う。
この研究は、ガートナーデジタルIQインデックス (Gartner Digital IQ Index)にランキングしている世界の業績上位600以上の小売ブランドが投稿したインスタグラムの画像を検証するという方法で行われた。
この研究では複雑性に着目して写真を分析している。オーバーゴア助教授も認めるように「複雑性」とは抽象的な概念だ。しかし根本的には、細かさや多様性という観点から画像がどう見えるかである。
複雑性には、(1)「特徴の複雑性」(feature complexity)と、(2)「デザインの複雑性」(design complexity)の2種類がある。
オーバーゴア助教授によると、「特徴の複雑性」は画像に含まれる画素がどれだけ多様かで表現でき、1枚の写真に含まれる色、明度、ディテールの密度といった要素がある。例えば、カラフルで鮮やかな画像は「特徴の複雑性」が高いと言える。
一方、「デザインの複雑性」は、被写体や被写体の配置に関する概念であり、理解するのに深いプロセスが必要なものを言う。例えば、数少ない被写体が左右対称に配置されている写真よりも、多数の被写体がランダムに配置されている写真のほうが「デザインの複雑性」が高いと言える。
研究通りにすれば「いいね」が最大19%増やせる
要するに、複雑なのだ。
ほとんどの場合、写真の「特徴の複雑性」は中程度にするとよい。
オーバーゴア助教授は人の脳とコンピューターに例えて言う。「画像が複雑すぎて処理するのに多くのエネルギーが必要なのはダメですが、あまり単純すぎるのもよくないんです。刺激が十分でないと引き込まれないですからね」
オーバーゴア助教授は、「デザインの複雑性」が際立つとなぜいいのかも説明してくれた。「人に注目してもらうためには、何の画像なのかはっきりしている場合、被写体一つで説得力のあるストーリーを語るのがいいのですが、そうでなければ数多くの被写体をランダムに配置したクリエイティブデザインを用いるのが効果的です」
この研究によると、こうしたガイドラインに従えば「いいね」数を最大19%増やせるという。
ただし必ず増やせる保証があるわけではない、ともオーバーゴア助教授は警告する。「いいね」の数は「特徴の複雑性」や「デザインの複雑性」だけで決まるわけではないからだ。「状況にもよりますし、個人の好みにもよりますからね」
投稿の効果はユーザーの使用するデバイスによっても変化する。「大きい画面を見ながらスクロールする場合は複雑性が少し高めでも大丈夫です。丸一日しっかり仕事したあと、地下鉄で帰宅する途中で見る場合は、複雑性に対する耐性が若干下がります」
オーバーゴア助教授が研究を開始したのは、ストーリーズや動画といった機能がインスタグラムに追加される前だったそうだ。「当時は写真しか載せられなかったので、今よりはるかに単純でした」
「いいね」を稼げる写真、稼げない写真
本稿の冒頭で紹介したこのアボカドの写真は、色数、明度、細かさが適切であり、「特徴の複雑性」が最適だ。
Gijs Overgoor
以下は「デザインの複雑性」が理想的な2枚である。1枚目は構図がシンプルなもの、2枚目はもう少し複雑なものだ。
Gijs Overgoor
Gijs Overgoor
最後に「特徴の複雑性」も「デザインの複雑性」も最適ではない例だ。
この写真は、「デザインの複雑性」を低く抑えてストーリーを際立たせることも、高い「デザインの複雑性」でクリエイティブを生かすこともできていない。明度も明るすぎて「特徴の複雑性」が高すぎる。
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