WED代表の山内奏人さん(20)。
撮影:西山里緒
レシート買い取りアプリ「ONE」を運営するWEDは1月27日、ゲーム企業のアカツキからシリーズCラウンドの資金調達を発表した。調達額は非公表だが、関係者によると数億円規模だという。
ONEは、2022年1月にダウンロード数300万を突破。なぜこのタイミングでの資金調達なのか?WED代表の山内奏人さんに聞いた。
コロナ禍は「お金がより大事に」
レシート買い取りアプリ「ONE」。ユーザー層は30代以下が約8割だという。
画像:ONE公式サイト
2018年に当時高校生だったCEOの山内奏人さんがリリースしたONEは、直近の半年でダウンロード数が100万増え、累計レシート買い取り枚数は2億枚を突破した。
山内さんといえば、15歳にしてプリペイドカードにビットコインをチャージできるサービスを開発して「天才高校生」と騒がれた。以降も次々とサービスやプロダクトを投入しては市場の反応を試す“連続起業家”のイメージがある。
コロナ禍前後においても、自らが課した目標を達成すると「ボーナス」がもらえる「Advent(アドベント)」を始めとして、一風変わったサービスを多くリリースしてきた。実は、これらのサービスは現在、すでに事業を停止したり追加開発をしていない状態だという(寄付アプリ「dim.(ディム)」のみ運営中)。
コロナ禍の2年のサービス状況と今回の資金調達について質問すると、山内さんはこう話す。
「この1〜2年の反省も込めて、自分の“手札”を理解する能力が上がってきた感じがしています。やっぱり自分の領域で戦うしかないな、と」
ONEでの資金調達に至った背景については
「この1年はお金がより大事な期間だったので、将来のための開発ではなく、収益事業の方に一気にリソースを割いた。中でも一番伸びたのがONEで、ここで一気にアクセルを踏むべきだと判断した」
と語る。
レシート買い取りだけでなく、ECサイトの「キャッシュバック」も始めている。
撮影:西山里緒
山内さんは、ONEを「もうレシート買い取り(という打ち出し)ではいけない“サービスの年齢”になってきた」とした上で、次の構想をこう話す。
「価値をアップデートしないといけない。(次のキーワードは)キャッシュバック……買い物をしたらお金がもらえるサービスというのはひとつ、あるんじゃないですかね」
そもそもレシート買い取り自体が大きく捉えると「キャッシュバック」だが、このキーワードに確信を持ち始めたのは、ちょうど1年前にリリースしたサービスがきっかけだ。
提携する買い物サイトで商品を購入するだけで、最大で15%が現金で還元されるショッピングサイト「C」だ。「C」は現在、ONEのアプリ内の一機能として、統合を進めているという。
「ONEでやっていることをデジタルでもやりたいなと思ったのが『C』の背景にあります。購入データに価値がつくのだったら(ECで)どこ経由で購買したかにも価値がついたら面白いなと」
100%購入される広告は作れるか
レシートを使えば、オンラインとオフラインを横断して、ユーザーの消費行動を追跡できるという。
画像:WEDより
ONEのプレスリリースによると、既に先行するプレーヤーがPOSデータや決済などのそれぞれのチャネルでデータ取得を進めているが、ベンダーを跨いだデータ利用の難しさや、マーケティングで取得できるデータの粒度の問題などから、情報の網羅性に課題があるとする。
レシート情報を使って記録することで、これらを横断的に網羅できる、というのがONEの強みだ。
「基本的に世の中の(レコメンド型の)広告って、ユーザーの興味に対して出しているけれど、僕らはユーザーの消費に対して、広告を出すことができる」
そもそも多くの消費財(水など)は、私たちは取り立てて調べることもせずに日常的に購入している。見たり調べたりすることと「実際に購入する」ことには大きな違いがある。
オフラインとオンラインを横断した、詳細なユーザーの「購買データ」こそが、グーグルやアマゾン、そしてソフトバンクなど大手QR決済事業者も把握しきれていない、未知のデータ領域なのではないか?
山内さんはそう考えている。
「例えばコンバージョンレート(広告から購入した確率)が100%だったら、それはもう広告ではなくて情報なんですよ。グーグルがやろうとしているのはそういうことで、僕らみたいな企業にも同じことが言える」
こうした考えは、資金調達リリースに書かれた「現在主流の購買データの多くは、不確実なデータのもと消費関連マーケティングの技術革新が行われて」いるという一文にも表れている。
この1年の目標としては、山内さんは、ダウンロード数60%増の「500万ダウンロード」への到達を掲げている。
(文・写真、西山里緒)