ESG投資、成長の陰で業界関係者5人が本音「企業の報告は話半分に聞いておいたほうがいい」

今、かつてない額の資金が環境や社会に配慮した企業を追いかけるようにして投じられている。しかし、こうしたサステナブル投資ブームをめぐっては課題も目につくようになってきた。

機関投資家や小規模投資家が社会的責任を果たしている企業を支援できるという考え方、つまり、そのような企業の収益を下支えすることで気候変動から地球を守れるという考え方は、ウォール街とシリコンバレーに恩恵をもたらしてきた。

投資家は喜んで支援したいと思える企業を探しており、ESG(環境、社会、ガバナンス)を強く意識していることがパブリックイメージを向上させることを、経営者らは認識している。

こうした認識が業界の繁栄につながった。資産運用会社が「サステナブルな会社」のファンドをいくつも立ち上げ、企業がサステナブル投資を監視する新たな役割を創造し、サステナビリティに関心を持つスタートアップが多額の資金調達を果たしている。RBCキャピタルマーケッツ(RBC Capital Markets)によると、2021年1月から11月にかけて、サステナブル株式ファンドの資産価値は45%上昇し、過去最高の1.3兆ドル(約150兆円)まで達したという。

サステナブル投資は業界では歓迎ムードだが、欠点がないわけではない。

サステナブルな企業と謳われる投資商品で利益を得ようと、大規模投資家が莫大な額の資金を投じることで、新たな形のカルチャークラッシュ(文化衝突)につながっている。業界内部の関係者たちが、サステナブル投資にそもそも効果があるのか、立法機関や規制当局が企業に対してどのような基準を適用するべきかをめぐって批評家たちと戦っているのだ。

取引額推移

Source: RBC US Equity Strategy; Morningstar; Bloomberg.

一方で専門家たちは、何らかの決定がなされればアメリカでこのような金融商品への投資にさらに拍車がかかるかもしれない、と動向に注目している。

米労働省は2022年早々にも、2021年秋に発表された規則について明確な説明を行うとみられている。これは、雇用主が提供する退職金制度にESGファンドを組み込みやすくするものだ。証券取引委員会(SEC)は企業が気候関連の情報開示を行う際の方法についても、2022年に新たなルールを設けることを検討している。

急速に成長しながらもいまだ進化し続ける業界の実態について、Insiderは、サステナブル投資とESGを担当する5人の専門家に話を聞いた。

彼らの多くは、いいことをしているという要素のある仕事で役割を果たせる点に魅力を感じているという。その専門知識に対する需要は、今まで以上に高まっている。しかし現実には、サステナビリティに関する本質的な問題を日々目の当たりにしていると彼らは言う。

「グリーンウォッシュ」とは、環境保護計画やサステナブル投資の利点や特徴について、上辺だけのPRを行ったり大げさな約束をすることを指すが、こうした事例が大きな問題となっている。

また、ESGに関する決まった用語がないことも問題のひとつであり、業界はそれにも対処しようと取り組んでいる。ある人は、ESG専門人材の獲得競争が激化していることを指摘し、また別のある人は、伝統的な金融の世界ではESGが必ずしも真剣に受け止められていないことに対する不満を漏らした。

本稿には、忌憚なく発言してもらうため匿名を条件に取材に応じた専門家のコメントも含まれる。内容は一部抜粋・編集されている。

「話半分に聞いておいたほうがいい」

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