アジア系アメリカ人に対する差別に抗議する人々(2021年3月27日、カリフォルニア州サンフランシスコ)。
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- アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコでは、アジア・太平洋諸島系アメリカ人に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)が2021年に567%増加したという。
- 市当局が1月25日、警察の仮データをもとに対策の強化を約束した。
- アジア・太平洋諸島系アメリカ人に対する憎悪犯罪はアメリカ各地で増加していて、新型コロナウイルスのパンデミックも影響している。
サンフランシスコ市当局は1月25日、アジア・太平洋諸島系アメリカ人に対する憎悪犯罪が2021年、前の年に比べて567%増加したことを示す警察の仮データを明らかにし、対策の強化を約束した。
この仮データ —— カリフォルニア州司法局が州全体の統計を承認するまでは「仮」と見なされる —— は2021年に60人が憎悪犯罪の被害を受けたことを示している。
2020年は9人、2019年は8人だった。
25日の記者会見でサンフランシスコ市警察のビル・スコット(Bill Scott)本部長は、1人の男が2021年の憎悪犯罪の半数に関与しているようだと話した。当局は男の身元を明かさなかったが、男は8月に逮捕されたという。
警察は8月、アジア系アメリカ人が経営する店を襲撃したとして、36歳の男を逮捕している。
ただ、この男が31件の憎悪犯罪に関与していたとしても、2021年のデータはアジア・太平洋諸島系アメリカ人に対する憎悪犯罪 —— ターゲットを絞った強盗や暴行を含む —— が200%増加したことを示していると、サンフランシスコ・スタンダードは報じている。
「これはかなりの数字だ。憂慮すべき、警戒すべき状況だ」とスコット本部長は記者会見で語ったという。
サンフランシスコのロンドン・ブリード(London Breed)市長も、こうした暴力(特に高齢者を狙ったもの)に対して怒りを示している。サンフランシスコのチャイナタウンで暮らす高齢者を狙った憎悪犯罪の増加を受け、市当局はここ1年、高齢者に付き添いを提供するプログラムの導入や近隣のパトロール強化といった対策を講じてきた。
ブリード市長は、憎悪犯罪の通報はためらう人が多く、実際にはもっと多くの事件が起きている可能性が高いことから、まだまだ対策を強化する必要があると話している。
スコット本部長は、2月1日の旧正月に向けて、警察は存在感を高めていくと話した。
「サンフランシスコは外からやって来てアジア系コミュニティーを恐怖に陥れやすい場所だと考えている人間がいるとしたら、それはひどい思い違いで、責任を問われることになる」とスコット本部長は語ったとワシントン・ポストは報じた。
アジア・太平洋諸島系アメリカ人に対する憎悪犯罪はアメリカ各地で急増している。専門家は、新型コロナウイルスのパンデミックをめぐる人種差別的な言動も影響を与えたと指摘している。トランプ前大統領がウイルスを差別的なあだ名で呼んだり、パンデミックを中国のせいにしたことも影響した。
「Stop AAPI Hate」というアジア・太平洋諸島をバックグラウンドに持つ人々に対するヘイト、暴力、ハラスメント、差別、敬遠、いじめに対応・追跡する通報センターには、2020年3月から2021年9月までに1万件以上の通報が寄せられている。
[原文:Hate crimes against Asians and Pacific Islanders in San Francisco spiked more than 500% in 2021]
(翻訳、編集:山口佳美)