ミレニアル・Z世代の約7割が利用するモバイル決済。「メイン・ウォレット」をめぐる競争の行方

  • この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「2021年版:アメリカにおけるモバイル決済利用の今後(US Mobile Payments Forecast 2021)」のプレビュー版。

新型コロナウイルスのパンデミック下で、モバイル決済は現金やカードよりも感染リスクが少ない決済方法として、その価値が広く認められるようになった。インサイダー・インテリジェンスの推計では、2020年にアメリカにおける1日当たりのスマホの平均利用時間は182分に急増(パンデミック前は154分)。これには決済での利用も含まれている。

そのことを受けて、主なモバイル決済事業者は新規ユーザー獲得に向けた取り組みを強化しており、「メイン・ウォレット」の地位をめぐる競争が激化している。既にパンデミック前から、モバイル決済の普及率や利用者数は順調に伸びており、事業者はシェア拡大に向けてしのぎを削っていた。

2020年になると、競争はさらに激しくなった。急成長を遂げた決済事業者は、多くの新機能を追加。モバイル決済に関わる全てのニーズに応えようと、近接型決済、P2P(ピアツーピア:端末同士で直接データファイルなどを共有する技術)送金、モバイルコマースなど各種サービス提供事業者との差を縮めようとしている。

「顧客体験の向上」「新たな顧客層の開拓」「ロイヤリティの向上」を目指し、決済事業者はますますサービスを充実させている。そのためこの分野は引き続き成長していくと考えられる。

※この記事は、2021年12月10日公開の記事を一部編集して再掲載しています

近接型モバイル決済、利用者数の推移

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アメリカにおける近接型モバイル決済の「利用者数」の推移と予測。赤は人口に占める利用者の割合。

Business Insider Intelligence

近接型モバイル決済の利用者数は2020年に急激に伸びた。だが今後市場が成熟し、幅広い世代に普及するに従い成長のスピードは鈍化し、2025年には4.0%程度の増加率に落ち着くだろう。

近接型モバイル決済に対するパンデミックの影響

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アメリカにおける近接型モバイル決済の「決済額」の推移と予測。赤は増加率。

Business Insider Intelligence

決済企業トータル・システム・サービス(Total System Services)が2020年に発表したレポートによると、パンデミック前の時点で、まだ近接型モバイル決済を利用したことがないアメリカの成人の5分の1が、利用に興味を示していた。「支払いの際の接触を避けたい」というニーズが、この技術の普及を促した主な要因だと考えられている。

全米小売業協会(NRF)のために調査会社のフォレスター(Forrester)が行った調査では、調査対象者の約19%が2020年5月に「初めて店頭での支払いにモバイル決済を使った」と回答。パンデミックが長引く間も、新規利用者は増えていったとされる。エコシステムは成熟しつつあるが、消費者が「タップやスキャン」で決済できることの便利さを知り、それに対する抵抗感が薄れるにつれ、引き続き成長していくことが予想される。先進的な非接触型決済エコシステムが存在するイギリスでのように、「交通機関」などさらに便利なユースケースの増加が今後の普及拡大につながるだろう。

プレイヤーの増加で利用者の幅も広がる

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アメリカにおける近接型モバイル決済「利用者一人当たりの決済額」の推移と予測。赤は増加率。

Business Insider Intelligence

非接触型決済を積極的に推進する企業が増えるなか、新たなプレイヤーもこの分野に参入してきている。特に注目されているのが、2020年5月にQRコードによる支払いを可能にしたPayPalだ。これにより、約3億500万人にのぼるPayPalユーザーの間でこの決済方法の普及が進むかもしれない。同社も他のプレイヤーと同様、大手小売業者と提携することで、ユーザーを獲得しようとしている。

非接触型決済の分野では、新旧両方のプレイヤーが利用者を増やすためのインセンティブを設けている。例えばPayPalは、新規利用者がドラッグストアチェーンのCVSで20ドルの買い物をすると、10ドルのキャッシュバックを受けられるようにしている。このようなインセンティブや、ロイヤリティ向上につながる機能の追加は、今までこの決済方法を使ったことがなかった人を引き込み、ユーザー層を拡大するための優れた戦略だ。

若年層が成長を牽引

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世代別に見た、アメリカにおける近接型モバイル決済の「利用者数」の推移と予測。

Business Insider Intelligence

現時点では、近接型モバイル決済利用者の大半を占めるのがミレニアル世代とZ世代だ。2021年にはこれらの世代の合計が利用者の68.9%を占め、2025年には71.4%に達する見込みだ。当然ながら、既にデジタル技術に慣れ親しんでいる層が、モバイル決済を好む傾向にある。

特にZ世代は、その購買力の向上に伴って市場の成長を牽引する。だが、近接型モバイル決済が若年層に浸透するにつれてこの傾向は徐々に弱まっていくだろう。また、ベビーブーマー世代の間でも、デジタル技術全般の利用が拡大するに従ってモバイル決済の利用が広がる。若い家族に勧められるなどして使い始める人も増えるだろう。

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[原文:What's pushing growth in proximity mobile payment usage?

(翻訳・野澤朋代)

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