アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス。
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- ジェフ・ベゾスが2020年に開校した「ベゾス・アカデミー」は、十分な保育を受けていない子どものための無料のプリスクール(幼稚園入園前の教育機関)だ。
- その後、同アカデミーは全米で14カ所に展開することを発表し、今のところ5校が運営されている。
- 「ベゾス・アカデミー」はベゾスが全額出資しており、ベゾス自身の早期教育からヒントを得ているようだ。
ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)のプリスクール(3歳から5歳の幼稚園入園前の子どもを対象とした教育機関)が、静かにアメリカで拡大している。
ベゾス・アカデミー(Bezos Academy)として知られるこの授業料無料のプリスクールは、2020年10月にワシントン州デモインで初めて開校した。そして次は、2022年1月26日に発表されたテキサス州ヒューストンとの契約締結を含め、アメリカのさまざまな場所に広がりつつある。
ここではベゾスが幼児教育に目を向けている理由と、これまでに分かっている同校のプログラムを紹介しよう。
ベゾス・アカデミーの目的は、恵まれない子どもたちに無料で教育を提供すること
ベゾス・アカデミーは、3歳から5歳までの未就園児を対象とした「モンテッソーリ教育」の流れを汲むプリスクールだ。同校は全日制で年間を通じて行われるという。
ベゾス・アカデミーに通う資格を得るためには、子どもの家庭の年間世帯収入が、連邦貧困水準(Federal Poverty Level)の400%までであることが条件だという。同校の受給資格規定によると、例えば、4人家族で世帯年収が10万6000ドル(約1215万円)の家庭の子どもは通うことができる。また、各教室の定員の半数は、連邦貧困水準の250%までの世帯の子どものために確保されているという。
ベゾス・アカデミーはすでに3つの州で展開している
現在、ベゾス・アカデミーは14カ所にある。フロリダ州オーランドに1つ、テキサス州ダラス近郊に3つ、ワシントン州に9つだ。2021年10月に4カ所で5校の運営を開始したのは、すべてワシントン州だ。
ベゾス・アカデミーは2022年1月26日、テキサス州ヒューストンのデンバー・ハーバーに最新の拠点を設けると発表した。2つのクラスがあるスクールは2022年秋に開校し、「多くの家庭にとって画期的なものになるだろう」とヒューストン市長のシルベスター・ターナー(Sylvester Turner)は声明で述べた。
「十分なサービスを受けられていない地域に焦点を当てることで、すべての子どもたちが、有意義で成功した未来へ向かうための教育の機会を公平に得られるようにする」とターナー市長は述べている。
スクールはすべてベゾスの資金で運営されている
2018年にベゾスはホームレスを経験した家族の支援に焦点を当てた「デイ1・ファミリー・ファンド(Day 1 Families Fund)」と、低所得者層向けのプリスクールのネットワーク構築を目指す「デイ1・アカデミー・ファンド(Day 1 Academies Fund)」という2つの慈善活動へ20億ドル(約2300億円)を投じることを発表している。
「これらのプリスクールを直接運営する組織を作る。子どもが学び、創造し、成長する機会を与える場を運営できることに興奮している」とベゾスは当時ツイッター(Twitter)に投稿している。
「我々はアマゾン(Amazon)を動かしてきたのと同じ原理を使う。その中で最も重要なのは、純粋で強烈な顧客に対する執着心だ。子どもが顧客になるのだ」
ベゾス・アカデミーのプリスクールは、ベゾスの基金が直接運営し、以前アマゾンのエコー(Echo)&アレクサ(Alexa)部門でバイス・プレジデントを務めていたマイク・ジョージ(Mike George)が社長を務めている。
ベゾス・アカデミーのカリキュラムは、ベゾス自身の体験から着想を得ている
ベゾス・アカデミーは、モンテッソーリ教育を踏襲したカリキュラムを組み、共同作業、発見、自主的な学習に重点を置いているという。教師はモンテッソーリ教育の訓練を受けており、教室には子どもの感覚を刺激するためのモンテッソーリ教材が用意されている。
ベゾス自身もモンテッソーリ教育のプリスクールに通っていた。「モンテッソーリ教育を受けていた頃は、先生が次の作業に移るために彼を文字通り椅子から持ち上げなければならないほど、息子は活動に夢中になっていた」と彼の母親はかつてウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)に語っている。
モンテッソーリ教育を受けたIT企業のトップはベゾスだけではない。グーグル(Google)の共同設立者セルゲイ・ブリン(Sergey Brin)とラリー・ペイジ(Larry Page)もモンテッソーリ教育のプリスクールに通っていた。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)