1月26日、米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長のオンライン記者会見が流れるニューヨーク証券取引所(NYSE)内の様子。米金融大手モルガン・スタンレーによれば、株式市場にはさらなる下落の気配が……。
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年始早々の株式市場急落でやけどした投資家なら誰もがいまごろ「悪夢はこれで終わりなのか」と考えているだろう。そして、その問いに対する米金融大手モルガン・スタンレーの答えは「いや、まだ終わりではない」だ。
1月28日金曜日の力強い値動きは、2020年6月以来(1年半ぶり)の大幅上昇というおまけ付きで、投資家たちを大いに歓喜させた。
しかし、モルガン・スタンレー米国株チーフストラテジスト兼最高投資責任者(CIO)のマイケル・ウィルソンによれば、株式市場は安定期に入ったとは言えず、さらなる下落の気配を見せているという。
ウィルソンは顧客向けレポートでこう指摘している。
「(直近は)上昇基調と言え、当社は売りの姿勢を維持しており、いま見られるボラティリティ(=価格変動率)と日中のスイングは典型的な弱気相場の動きと見ています。フェアバリュー(=適正価格)はS&P500種指数で言えば4000に近いところ。その見方に特段変化はありません」
この4000という数字は、1月3日のS&P500種指数の終値(4796.56)を約10%も下回った1月28日の終値(4431.85)に比べて、さらに10%近く低い水準だ。
最近の売りの広がりは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げおよび景気刺激策(量的緩和)の2022年3月終了決定が景気を失速させる可能性を懸念する投資家の動きがけん引している。
ただ、これから株価下落をもたらすのは別の要因ではないかとウィルソンは考えている。
「今回の引き締めサイクル(のネガティブな影響)でリターンはさらに低下すると当社は予測しています。オミクロン株感染拡大の影響だけでなく、マクロ経済と企業収益の成長鈍化が進行するなかで、FRBの金融引き締めが本格化していくことになるからです」
製造業景気指数や各種の在庫統計、工業株価、そしてシクリカル銘柄(景気敏感株)の業績下方修正など、あらゆる指標が経済成長の鈍化を示唆しているとウィルソンは指摘する。
投資家たちは利上げへの備えは万全でも、成長の低迷に備えているようにはどうしても見えないという。
「当社はこの成長鈍化の要因を、2021年の過剰消費から来る需要の揺り戻しと、2022年上半期を通じて続く(特に労働市場の)コスト圧力と分析しています。市場はそうした挙動をまだ織り込んでおらず、S&P種株価指数を4000まで引き下げるドライバーになるでしょう」
FRBは何よりインフレ抑制を考えていて、成長鈍化には目もくれていない。したがって、タカ派(=金融引き締めを急ぐこと)の姿勢を崩さず、3月を皮切りに数度の利上げに動くとみられる。利上げはそれだけで経済に、つまり企業の収益や株価にブレーキをかけることになる。
そうした展開は、エネルギー企業のような景気との連動性が高い企業にとって厳しい状況を生み出す。
株価下落時に推奨される具体的な投資戦略
そこでウィルソンは、生活必需品、(電気・ガス・水道など)公益事業、通信など、景気動向に業績を左右されにくい「ディフェンシブ」セクターへの投資を推奨する。
「ディフェンシブ銘柄は年明け早々に株価下落が始まってからこの週末(1月28日)まで大きな下落を経験することなく、セキュラー・グロース(長期的成長)、シクリカル、バリュー(割安)の各銘柄を上回るパフォーマンスを維持しています」
ウィルソンが推奨するもうひとつの投資戦略は、株価下落によって値下がりしたグロース(成長)株に気をとられることなく、利上げから最も恩恵を受けるであろう金融銘柄を購入する手法だ。融資金利も上がるので、金融機関の収益は向上する。
「グロース株(とりわけセキュラー・グロース株やデュレーションの長い株)は金利上昇から受けるネガティブな影響が大きい」とウィルソンは指摘する。
こうした投資戦略を採用したい場合、「フィディリティMSCI公益事業株ETF」「iシェアーズ 米国金融ETF」など上記セクターに広く分散投資する上場投資信託(ETF)の購入が選択肢となる。
また、低ボラティリティ銘柄に分散投資する「インベスコ・ディフェンシブ株式ETF」のようなディフェンシブ志向の商品もいいかもしれない。
その他の選択肢としては、株式市場から(相対的に安定収益を期待できる)債券ファンドに投資先をシフトさせるのもひとつの手だし、S&P500種指数の日次パフォーマンスの逆に連動する「プロシェアーズ・ショートS&P500」のようなETFで株式市場の逆張りに投資する方法もある。
(翻訳・編集:川村力)