3つの専門性を持っているか。日本企業の「ジョブ型」激増で始まる新しいキャリアのつくり方【音声付・入山章栄】

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

日立製作所が今年7月にも全社員を対象に、事前に職務の内容を明確化し、それに沿う人材を起用する「ジョブ型雇用」に移行することになりました。日本企業でジョブ型雇用が広がると、私たちの働き方にはどのような影響が出るのでしょうか。入山先生は「キャリアの重ね方やMBAや教育まで変わってくる」と解説します。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:12分11秒)※クリックすると音声が流れます


こんにちは、入山章栄です。今週も気になるニュースについて、一緒に考えていきましょう。


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BIJ編集部・小倉

入山先生、1月上旬に、日立製作所が全社員をジョブ型雇用にするという発表がありました。これまでもジョブ型雇用についてはさんざん騒がれてきましたが、いよいよ始まるわけですね。

日本企業にジョブ型が普及するとなると、これから私たちはどのようにキャリアを重ねていったらいいでしょうか?


日立製作所は川村隆さんが社長だったころから、じわじわと改革を進めていましたが、ついにジョブ型雇用に手をつけましたね。ここがいちばん大変なところだと思います。

ご存知のようにジョブ型雇用というのは、「あなたはこの仕事をしてください」と仕事の内容をはっきり規定する雇用形態をいいます。仕事に合わせて人を採用する方式ですね。だからその仕事が必要なくなったら、解雇されることもある。

一方、これまで多くの日本企業はメンバーシップ型雇用でした。いったんメンバーとして採用したら、定年まで終身雇用を約束する代わり、仕事内容は曖昧で決まっていない。だから会社に異動を命じられれば、財務の次に営業、営業の次は人事、人事の次は企画、という人生もありうるわけです。

それに対してジョブ型雇用は、求められる仕事のスキルや範囲が「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」に明記されている。

だからその職種の専門家としていろんな会社を渡り歩いてもいいし、一社にずっといてもいい。

とにかくその分野の専門家になると決めたら、自分のジョブ・ディスクリプションを充実させてキャリアを築いていくことを目指す。欧米、特にアメリカは完全にそういう働き方です。

ジョブ型とメンバーシップ型のどちらがいいかは、簡単に言えることではありませんが、僕はこれから日本でもジョブ型がかなり増えると思います。なぜならジョブ型にしないとやっていけないから。

その理由はいくつもありますが、大まかにいうと次の2つです。

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