幹部と打ち合わせをする北朝鮮の金正恩総書記。
KCNA/via REUTERS
- 北朝鮮の金正恩総書記が階段を下りるのに苦労している様子が、最新のプロパガンダ映像の中で確認された。
- 金総書記は以前から歩行に問題があるとされていて、体重が減ったのではないかとの推測も飛び交っている。
- 専門家が金総書記の健康状態に注目するのは、政権の安定を示す重要なサインの1つだからだ。
2021年の功績を称えるための最新のプロパガンダ映像の中で、北朝鮮の金正恩総書記が階段を下りるのに苦労している様子が確認された。また、この映像が公開されたのをきっかけに、金総書記の体重が大幅に減ったのではないかとの推測も流れている。
110分に及ぶこの記録映像の中で、随行した他の党関係者が問題なく歩く中、金総書記は建設現場の仮設の階段を下りるのに苦労しているように見えると、ロイターなどが報じた。デイリー・テレグラフはそのシーンをYouTubeに投稿している。
30代半ばの金総書記が歩行に問題がありそうな様子を見せるのは、これが初めてではない。2014年の夏には国営テレビで足を引きずる様子が見られたし、その後しばらく姿を見せない時期があって、同じ年の秋には杖をついて歩く様子が見られたことから、健康状態が悪いのではないかとの推測が飛び交った。
北朝鮮の動静を見守る専門家の中には、たばこを吸い、かなりの量の酒を飲み、豊かな食生活を楽しんでいるとされる金総書記が痛風を患っているのではないかと指摘する声もあったが、正確なところは分からない。
2月1日に公開されたこのプロパガンダ映像は、新型コロナウイルスのパンデミックや経済制裁などによる苦境の中での北朝鮮の功績を称賛しつつ、金総書記が馬に乗ったり、さまざまな施設を訪れる様子も伝えている。
ただ、映像は珍しく金総書記の身体的な変化にも触れ、この国のことを心配しているせいだと伝えていると、NK Newsは報じた。
映像のナレーションは、金総書記が「雪、雨、風をものともせず、この国の運命を引き受け、国民を自らの子どものように引き受けることで父親的な面を見せた」とした上で、「(金総書記の)身体はすっかり弱ってしまった。そして、国民の夢を実現するために大いに苦しみ、心配することで母親的な面を見せた」と続けた。
2020年の秋には韓国の国家情報院が、身長約5.7フィート(約174センチメートル)の金総書記の体重は約300ポンド(約136キログラム)と、10年ほど前に北朝鮮で権力の座についてからおよそ100ポンド(約45キロ)増えたと推定した。
ところが2021年7月 —— 北朝鮮の専門家らが金総書記が少し瘦せたように見えると気付いた約1カ月後 —— には国家情報院が、金総書記の体重が22~44ポンド(約10~20キロ)減ったとし、体重の減少傾向が続いていると報告した。その変化は写真を見るとはっきり分かる。
2019年の金総書記と2021年の金総書記。
Korean Central News Agency/Korea News Service via AP / Insider
北朝鮮の国営メディアも、金総書記の体重減少に言及したことがある。
「尊敬する総書記がひどく痩せているのを見ると、心がとても痛みます」とある平壌市民は朝鮮中央テレビに語ったと、ロイターは2021年6月に報じている。
「皆、涙が込み上げてくると言っています」
金総書記の"変化"を世界中の専門家が注意深く見守っているのは、それが金総書記の健康状態を表している可能性があるからだ。北朝鮮の後継者は不明で、金総書記の健康状態が政権の安定を左右する。
[原文:Kim Jong Un can be seen struggling to walk down stairs in a new North Korean propaganda film]
(翻訳、編集:山口佳美)